真竹のタケノコは冷凍保存しても美味しく食べる事が出来ます
タケノコは美味しい上に、低カロリーでヘルシーな食材ではあるけれど、長期保存に困る、と言う人はいないだろうか。
一般的に出回っている、早春から盛春の季節食材としてのタケノコは、孟宗竹のタケノコである。
この時期には、地域ニュースで早春のタケノコ掘りや、グルメ番組・旅番組などでタケノコ料理がよく取り上げられる。
しかし孟宗竹のタケノコは、冷凍が利かない。冷凍・解凍して食べられない事はないが、スッカスカに成ってしまうのである。
コンニャクを冷解凍すると凍みコンニャクに、豆腐を冷解凍すると高野豆腐にジョブチェンジしてしまうが、丁度そんな感じである。
凍みコンニャクや高野豆腐はジョブチェンジしても、新たな特技「煮汁吸収」を獲得してオカズ戦力として計算出来るが、凍みタケノコはちょっと困った存在である。戦士Lv80が、遊び人Lv1しかも「特技無し」に劣化してしまう感じである。
(全くの余談になるが、豆腐でも厚揚げは冷解凍してみても厚揚げのままであった。この項を書くに当たり実験してみた結果である。ウソではない。)
孟宗竹のタケノコは、塩漬けにすれば美味しく長期保存が出来るのだけれど、木造の物置などのいわゆる「冷暗所」が無いと、冷蔵庫中のスペースを、そこそこ占有してしまう。
短期間であれば屋内に置いておいて問題無いのだが、盛夏の時期には発酵を起こしてしてしまいそうで、スリリングである。
また、塩蔵タケノコは使用前に、充分な塩出し・塩抜き工程が必要となる。これに手抜きをすると、タケノコの塩辛を食べるような事態に陥ってしまうのである。
中国産の水煮は安価で一年中出回っているけれど、食の安全上イマイチ不安があるし、手を出したくないという人は、孟宗竹ではなく真竹のタケノコで冷凍長期保存にチャレンジしてみられては如何だろうか。
まあ別にタケノコ食べなくっても全然平気だよ、という人には縁のない話なのではあるが。
真竹はカタカナで表記すると「マダケ」である。
私(筆者)は今の今までずっと「マタケ」と発音していた。だが「またけ」と打ち込んで漢字変換しようとしても、出来ない。
嫌な予感に襲われた私は、試しに「まだけ」と打ち込んで漢字変換してみたら、一発で目的の字面を表記する事が可能であった。
だから、この駄文をお読みになった紳士淑女諸氏の中に、「マタケ」と発音しておられる方が、仮にいらしゃるすれば、私の恥を他山の石として、真竹は「マダケ」と認識して欲しい。
マヌケな話である。
真竹がどんな竹かというと、竹細工に使うありふれた竹である。その辺にある竹藪の竹だ。
真竹のタケノコの収穫時期は5月後半から6月。紫陽花や花菖蒲がニュースになる季節である。
真竹のタケノコも、孟宗竹のタケノコに負けず劣らず美味しいのに、ニュースで取り上げられる事は無い。
竹取物語が成立した年代には、日本において孟宗竹は一般的に普及していなかったから、かぐや姫ゲットは真竹由来のレア・イベントである。
ちなみに、竹をタケノコとしてではなく、竹材として収穫するのに良い時期は、真竹で9月、孟宗竹で11月とされている。
それ以外の時期に収穫すると、傷んだり虫が付いたりしやすいのだそうだ。
「竹や~、竿竹ぇ~。」と売りに来る、物干し用の竿竹も真竹の加工品である。
しかし、今は竿竹はスチール製やアルミ合金製も多いので注意して欲しい。金属っぽかったら、たぶん真竹ではない。どうしても材質を確認したければ、皮膜を剥がして乾電池と豆電球で電気を通すかどうかを実験してみれば良い。
もう本当に念のために記しておくと、電気を通す方が金属製である。真竹は炭化させれば電気を通すが、乾燥させただけでは通電しない。
エジソンが電球のフィラメントに採用したのは、石清水八幡宮の境内に生えていた真竹だが、炭化させることによって通電性を獲得させている。
真竹のタケノコをゲットするのは、孟宗竹のそれよりも遥かに容易である。
地表から50cm以上伸びたヤツを、折り取るか鎌で刈るかすれば良いからである。
地表の僅かな膨らみを、熟練のドワーフよろしく掘り下げる必要は無い。
だから、孟宗竹のタケノコの収穫は「タケノコ掘り」なのに対し、真竹の場合は「タケノコ採り」と称される。ここ、テストに出ます。
収穫したタケノコの処理も、同じく孟宗竹より簡単である。
タケノコの皮を剥いだら、二つ以上に縦割りにして、水から鍋で煮る。
縦割り分割する理由は、竹の節から節の間の中空部分にも湯が行き渡るようにするためと、密閉空間を加熱する事による破裂防止であるから、中空部分が残らないように横スライスをするのであれば、それでも構わない。
唯一注意を必要とするのは、内部にカグヤ系妖精や月世界人が居ない事を、予め確認しておく事である。それによりスプラッタな結果になる事態を回避できる。
煮る際には、鍋に塩一つまみと鷹の爪1~2本を入れる。
塩を入れるのは水の沸点上昇を促すためであり、味付け・アク抜きなどに関係している訳ではないから、量は適当で良い。
またここで言う「鷹の爪」は、粉砕前の乾燥トウガラシの事であるから、闇ルートから猛禽類を仕入れる必要はない。
孟宗竹の場合とは異なり、米ぬかや生米は添加しなくてよい。真竹はアクが孟宗竹より少ないからである。
米ぬか無しではタケノコを湯がいた気にならない! という方は、添加しても別に問題ないのだが、その場合には無農薬米の米ぬか使用を推奨する。
煮沸時間は真竹の場合、沸騰後20分程度で良い。
孟宗竹の約半分の時間である。拘束時間も燃料使用量も二酸化炭素発生量もエコである。
国連は、タケノコ消費を孟宗竹から真竹に順次移行させるべきである。牛のゲップ禁止令などより、遥かに容易ではあるまいか。
国連の気候変動に関する小委員会で演説する機会を得る前に、真竹が「マタケ」ではなく「マダケ」であることに気付いて、本当に良かった。
湯がき終わった真竹のタケノコは、孟宗竹のタケノコと同じレシピで調理出来る。
煮物・汁物・炒め物、何でもこなす万能選手である。
この万能選手を冷凍保存するのは、実に簡単である。
短冊形に細長く切断し、軽く風を通すか日光に当てて水気を切り、密封パックに詰め込んで、冷凍室に放り込むだけである。
短冊形に切断するのは、冷凍庫内の占有スペースを最小化するのが目的だから、充分な空き容量があるのなら、大きいままラップに包んで入れてしまっても良い。
解凍後に使う料理のイメージが、すでに固まっているのであれば、それに即した大きさに処理しておくと後々手間が省けて便利である。
解凍後は、孟宗竹の水煮タケノコと同様に使用出来る。
ここで応用編を一つ。
真竹のタケノコは、処理した後に冷解凍しても品質が変わらないので、予め調理済の状態で冷凍する事も可能である。
即ち、煮物を作って冷凍してしまう事が出来るのである。
例えば、「タケノコと鶏手羽先の煮物」を作ったら、密封パックに詰めて冷凍ストックしてしまう。
食べる時には、皿にあけレンジで解凍するだけで良い。
この方法は、同時に使用するタケノコ以外の調理済素材が、冷凍に向くかどうかという要素を孕んでいるから、全ての料理に適用できる技とは言えないが、「鶏手羽先の煮物」や「タケノコカレー」は合格点であった。
反対に「かつを出汁のタケノコ煮」や「豚バラ肉との炊き合わせ」は不味い訳ではないが、微妙なラインであった。
具体的に言うと、かつを出汁との組み合わせは、冷解凍することにより鰹節の燻製臭が強調されて、煮干し出汁文化圏のユーザーには評価が分かれるであろう事、豚肉との組み合わせでは、確かにタケノコは美味しいままなのだが、豚肉からは味が抜けてしまい全体としての評価点が下がるという事が挙げられる。(バラ肉は脂分が有るのでマシだが、赤身肉を使用すると、悲しいくらいパスパスに成ってしまうのである。)
最後に真竹タケノコの自力採取以外の入手法について述べると、スーパーで販売しているのは見かけないが、産地直売型の野菜や魚介類販売所では取り扱っている店舗がある。
本日6月4日には、福岡県と佐賀県の県境に近い販売所で取り扱われているのを確認出来た。
全国の真竹ファンの諸君、真竹のタケノコを我が手に収め、思う存分冷凍ストックを作成する好機である。
今こそ、立ち上がり「パックス・マダケーナ」を打ち立て、打倒 孟宗竹を実現しようではないか!
全国の真竹ファン! 団結せよ!!