やっぱり
渉、考える──。
ふっと笑う、頼之。
「俺は、サンタさんを……」
どう思っているのだろう──
家に帰ってきてから自分のベッドに横たわり、天使渉は考えていた。
家事をしに行っている、社会人の三田頼之について──。
突然告白されて、気にしなくていいと言われ……この前なんかは、頭を撫でられてから抱き寄せられた。
渉はその時、不思議と嫌じゃなかった。
逆に、ドキドキしていた。
「…………好き、なのか──?」
自分で言葉にして言ってみると、想像以上に恥ずかしかった。
渉は、好きだと言った頼之もそうだったのだろうか、とふと思う。
「……うわぁ、何か、ドキドキする」
目を閉じてから腕を乗せて、ふう……。と渉は一息吐く。
それから何かに気づいたのか、バッと起きあがり、考え出した。
「……巧だったら、ドキドキしないよな──」
友人の新巻巧のことを思いだし、渉はアゴに手を当てて考える。
頼之に額を触られた時はモヤモヤしたが、巧に額を触られた時には特に何も感じなかった。
また、頼之に抱き寄せられた時はドキドキしたが、巧に抱き寄せられても、渉はドキドキはしないだろう──。
「……やっぱり──」
サンタさんだから、ドキドキするのか……。と渉は唸る。
そして渉が一番モヤモヤしたのは、仲原ゆずほが頼之とやりとりをしていた時だった。
「仲原さんって、どんな人なんだろ……」
サンタさんとは、どんな関係なんだろうか……。
モヤモヤと、渉の胸に溜まっていく──。
「あ〜も〜っ……、何で気になるんだっ」
ばたりと、ベッドに倒れ込む。
そのまま目を閉じて、深呼吸する。
最近の出来事を思い出して、渉は気がついた。
よく、頼之のことを気に掛けていることに──。
講義を受けている時やお昼、頼之のマンションに向かっている時も……。いつも渉は、気づけば頼之のことを考えているのだった。
そう気づいたからか、渉は思わず言っていた。
「……そっ、か……俺、好きなんだ──」
そう言ってから、渉はドキドキした。
ずっと感じていたモヤモヤやドキドキは、恋愛感情によるものなのだと、渉はやっと納得した──
*
次の日、渉はいつもと変わらず家事をこなし、バイト代の入った封筒をもらった。
そして、いつもならそこで帰るのだが、渉は話を切り出すために頼之を見ていた──。
「……どうした? 帰らないのか?」
テーブルのイスに座っていた頼之は視線に気づき、持っていた新聞をテーブルに置いた。
「ちょっと、聞きたいことがありまして……」
「何だ?」
と頼之は渉に向き直って訊く。
渉は少しつっかえながら言った。
「あ、いや、べつに大したことじゃないって言うとあれなんですけど……。その〜……サンタさんは、本気で……俺のことが好きなんですか──?」
頼之の顔がいつもより引き締まった気がして、渉は手を振って言う。
「す、すいません──その……最近俺おかしくて、サンタさんに……あれ、抱き寄せられた? 時とか、ドキドキしたりして……。いや、同性だから、そのドキドキ? するはずないんですけど……あ、言いたいことはそうじゃなくて……」
渉は一旦深呼吸してから、口を開いた。
「……えっと、気づいたんです──。俺、サンタさんが──」
渉が全て言い終える前に、頼之は抱きしめていた。
お互いの鼓動が、しっかりと確認出来るくらい体が密着して、渉はどうしていいのかわからない。
「あの……、え──? サンタさん……?」
「いい。言わなくて……。それだけで、十分だ──」
頼之は渉を抱きしめたまま、そう言った。
それでも抱きしめられている側の渉は、この状態がこれ以上続いたら心臓がもたないと思い、気になっていたことを口にした。
「な、仲原さんとは、どんな関係なんですか?」
頼之はそっと離れて、簡単に答える。
「俺と新巻と同期──べつに恋愛での付き合いはない」
「そうなんですか……」
ほっとしたように、渉が息を吐く。
「……それだけか?」
「え? あ……、はい。それだけです、ね……──」
その後に言うことを渉は何も考えていなかったので、とりあえずいつもの言葉を言っていた。
「じゃ、じゃあ、また明日来ます……」
「ん。気をつけて帰れよ──」
はい……。と返事をして、渉はリュックを片手に外に出た。
外に出てから、渉は頼之の温もりを思い出してぽかぽかする。
それから渉は、自分がちゃんと頼之に気持ちを伝えていないことに気づき、言わなくていいと言われたが、やっぱり伝えないとな……と思うのだった──
*
「…………」
渉が出て行った部屋で、頼之は小さく息を吐いた。
それから、ふっと笑う。
「コーヒーでも飲むか……」
そう呟いて、頼之はキッチンに向かった──
お土産選び。
慎「何にすっかな」
奥さん「おいしそうなのがいいんじゃない?」
慎「そうだな──」
楽しい時を過ごした、新巻夫妻でした。