大丈夫
お久しぶりです、遅くなりました、
行博と頼之が話します。
※後半キスシーンあり
お昼。現在四人はファミリーレストランに来て、向かい合って座っている……。
三田頼之と天使渉が並んで座り、頼之の前に篤実行博が座り、その隣に仲原ゆずほが座る形になった。
「とりあえず、頼みましょう! 何にします?」
とゆずほが端に置いてあるメニューを取って、真ん中で広げる。
渉が一つメニューを近づけて、頼之に見せた。
「三田さんどれにします? 俺完熟トマトのドリアにしようかな」
「じゃあ俺もそれにしよう。特に食べたいものはない」
「じゃあ、私はカルボナーラ。篤実さんはどれにします?」
とゆずほが行博に訊く。
行博は「そうだなぁ」とメニューに目を通しながら悩む。
「篤実さんは、こういうファミレスとか来ないんですか?」
「ん? あぁ、あんまりね……。いつも家で食べてるから──」
と渉の質問に答えて、決めたよ、とゆずほを見る。
ゆずほは「了解です」と頷いて、呼び鈴を押した。
少しすると店員が笑顔でやってきて、ご注文をどうぞ、と注文を打ち込む機械を手にする。
「完熟トマトのドリアを二つ、カルボナーラを二つお願いします」
「はい、完熟トマトのドリアが二つ、カルボナーラが二つ、以上でよろしいでしょうか」
「はい、以上で──」
ゆずほが頷くと、店員は「かしこまりました」と笑顔で会釈をすると戻っていった。
「結局カルボナーラにしたんですね」
「あぁ、仲原さんと同じなら間違いはないだろうと思ってね」
と行博はゆずほに答えて笑う。
ゆずほも笑って、間違いないですよ、と親指を立てて見せた。
「そうだ。お水持って来ます、ちょっと待っててください」
とゆずほが思い出したように言って席を立つ。
「あ、俺も手伝います──」
渉も立ち上がって、ちょっと行ってきます、とゆずほと歩いていった。
「……行ったようだね」
行博は、二人が見えなくなってから口を開いた。
「彼は、いい子だよ──」
「……はい?」
行博に言われ、頼之は眉間に少しシワを寄せる。
「何か、渉に言ったんですか」
「あぁ──。天使くんがいると、三田くんがダメになる、というようなことを言ったんだ」
「な……っ!」
頼之は思わず目を見張った。肩に力が入って、体が強張った。
行博はそんな頼之を見て、少し笑って見せる。
「はは、大丈夫だよ。天使くんは、私が思っていたような人物じゃなかった──彼は、君を信頼している。そして、君のことをちゃんと恋人と認識していた。それも、彼は自分の意思でしっかりと言ったんだ。君に迷惑が掛かるなら別れるが、そうじゃないなら別れないと、私の目を真っ直ぐ見据えてね」
驚いたよ、あんなに真っ直ぐこられるとは思ってなかった、と行博は苦笑した。
「……そうですか──」
頼之はほっとして、小さく息を吐いた。それと同時に、体から力が抜ける。
「あぁ。私のお節介だった。悪かったね、嫌な思いをさせただろう? でも、君には──いや……君にも、私の友人のようにはなってほしくなかったんだ……」
前に頼之は、行博の友人の話を聞かされた。
その友人は同性愛者で、遊ばれて捨てられたのだと──。
「幸せになってくれ。私が言っていいのかわからないが、これからは見守っているよ」
申し訳なさそうに言った行博に、頼之は微笑んで口を開いた。
「大丈夫です。もうとっくに幸せなんで」
それを聞いて、行博は一瞬きょとんとしてから、いつもの笑顔になって「そうか」と頷いた。
*
二人が話していた時、渉とゆずほは水を取りに行きながら話していた。
「三田ってね、女性社員に人気なのよ。仕事出来るし、カッコいいらしいし」
「そうなんですか?」
「そうよ、バレンタインの時なんか、三田彼女居ること話してないから、一人の女性社員がそれを知らずに本命渡したらしいわ。まあ返されたらしいけど──」
それを聞いて、渉は驚いた。
確かにこの前チョコを貰ったと話していたが、本命があったとは言われていなかった。
「そうなんですか……」
「でも天使くんだって貰ったでしょ?」
「え? あ、はい、少しは……」
「またまた~、そんなこと言って~、もっといっぱい貰ったんじゃないの?」
人数分の水をコップに注ぎ、ゆずほは二つ渉に渡して「戻ろう」と促す。
渉は二つ受け取って、戻りながら答える。
「いやいや、三田さんより全然少ないですし……。仲原さんこそ、誰かにあげたんですか?」
「私? 私は、お世話になってる人だけ。好きな人いないし」
「そうなんですか」
「そうなんです──」
とゆずほはなぜか胸を張って言った。
それが可笑しくて、渉は小さく笑うのだった。
渉とゆずほがテーブルに戻ると、頼之と行博は会話をしていた。
渉は頼之の表情がここに来る前より穏やかになっているのを見て、安心した。
「お待たせしました、お水ですけど──」
とゆずほが先に戻り、後から渉もついていく。
「ありがとう、二人とも」
行博が笑ってゆずほから水を受け取り、頼之も渉から水を貰った。
少しすると料理が運ばれてきて、それからは四人で談笑しながらお昼を終えた。
*
そして四人は駐車場で別れ、ゆずほは行博の車で、渉は頼之の車でそれぞれ帰路に着いた──。
「今日はどうなるかと思ったが、杞憂だったようだ」
マンションに戻ってから、頼之はコートを片しながら言った。
渉は首を傾げて「何がですか?」と頼之に訊ねる。
「なんでもない、それより……テンシ」
「……はい、何ですか?」
コートをテーブルのイスに掛けた渉が呼ばれた方向に振り返ると、頼之が真後ろに立っていた。
「わ、サンタさん近──」
最後まで渉が言い終える前に、頼之は渉の唇を塞いだ。
触れるだけのキスをして、そっと離れて渉を見つめる。
渉はぽかんとした後、顔を赤くした。
「っな、何ですか急に!?」
「いや、したくなったから」
と頼之は微笑んで、渉を優しく抱き寄せる。
渉はドキドキしながらも、頼之の背中に手を回した。
すると頼之が「ふっ……」と小さく笑う。
「な、なんですか……」
「いや、最近背中に手回してくれるようになったなと思って──」
そう言われて、渉は思わず手を離して頼之を押し退けた。
「……渉?」
「あ、いや、その……」
恥ずかしくて押し退けてしまったが、頼之は困ったような顔をしているので、渉は何か話さなければ!と、ゆずほから聞いた話を口にする。
「そ、そういえばサンタさん、本命貰ったそうですね……!」
「……仲原か──」
頼之は「余計なことを……」と呟く。
「この前は貰ったって言ってなかったですよね、貰ってたらどうするっていう話で……」
「あぁ。実際貰ってないからな──。仲原も言ってなかったか? 断ってたって」
「言ってましたけど……」
と渉は口ごもる。
頼之はそんな渉を可愛く感じて、微笑んだ。
「……じゃあ、何て言って断ったか教えようか」
渉は「え?」と頼之を見て、言葉を待つ。
頼之は微笑んだまま、口を開いた。
「『気持ちは嬉しいが、今付き合ってる大切な人がいるから、それは受け取れない。すまない』」
渉はそれを聞いて、顔が熱くなる。
「そ、そうでしたか……」
「あぁ──妬いたか?」
クスリと笑って、頼之は渉を見つめる。
渉はわたわたと手を振って、否定した。
「妬いてませんよ、そんな」
「この前はするかもって言ってたのに?」
「ぅ……す、少しだけ……」
と渉は目をそらして呟く。
頼之はそれを聞いて嬉しくなった。
「そうか──」
チュッと額にキスをして、頼之は笑う。
渉は額を手で押さえて、赤い顔のまま頼之に言った。
「きょ、今日のサンタさんは、何か、何かおかしい!」
「そうか?」
普通だろ、と頼之は笑って、渉の頭を撫でる。
頼之は「嬉しかったんだよ」と呟いて、今度は頬に口付けるのだった──
渉「さ、三回も……っ!(赤面)」




