表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
32/53

内緒

ゆずほと友梨香が初対面。

※後半、キスシーン有り。

 天使(あまつか)(わたる)は、友人の新巻(あらまき)(たく)に頭を下げられていた。


「頼むっ! 友梨香(ゆりか)さんに力を貸してやってくれ」

「ちょ、やめろよ。周りに人居るんだから──」


 大学の食堂で、渉と巧はお昼をとっていた。

 すると巧が、そろそろバレンタインだなと話してきて、渉は何かあるのかと訊いたら、巧は急に頭を下げて言ったのだった。


「何かさ、兄貴に手作りであげたいらしいんだけど、去年失敗して『来年期待しとく』って兄貴に言われたらしくて……」

「それで?」

「で、友梨香さんから電話来て『天使くんって、料理上手いのよね? ちょっと手伝ってもらえないか聞いてくれる?』って言われて……」

「で、まだ俺返事してないのに『大丈夫ですよ』とか言ったわけだ?」


 と渉は若干口元をひくつかせて言う。

 渉が三田(みつだ)頼之(よりゆき)の所に行き、家事を手伝うようになったのも巧の勝手な返事からだった。

 巧は両手を合わせて、この通り、と渉を拝む。


「……まあ、友梨香さんとは面識あるし。いいよ」

「ほんとか! ありがとうテンシ!」

「おう。で、場所とか日程は?」

「いや、それは二人で決めてくれ。連絡先教えるから──」


 と巧はスマホを取り出して、渉に送る。


「じゃ、よろしくな!」

「はいはい──」


 渉もスマホを出し、友梨香のアドレスと番号を登録した。


         *


 頼之の所に行くと、なんと友梨香がいた。


「あ、天使くん──」


 と友梨香がテーブルのイスに座ったまま、ふわりと手を振る。

 渉は驚きながら訊いた。


「どうしたんですか? 新巻さんと喧嘩でもしたんですか?」

「違う違う。ちょっと天使くんに用があってね──でも天使くんの家知らなかったから、ここかなぁと思って」


 と友梨香は笑う。

 渉はなるほど、と頷いて室内を見渡して訊いた。


「あの、三田さんは?」

「なんかね、忘れ物したとか何とかで、会社に戻ったみたい」

「そうなんですか──」


 と渉はリュックを下ろしながら、友梨香と向き合うように座った。


「あ、巧から聞きましたよ。バレンタインのこと」

「聞いてくれた? よかったぁ。天使くん料理上手いって聞いたから、ちょっと力を貸してもらおうかと思って」


 と友梨香は微笑む。

 渉は和むなぁと思いながら、言った。


「いいですよ。出来るだけ力を貸します」

「ありがとう──」


 と友梨香がほんわかと笑った時、インターホンが鳴った。

 渉はちょっと見てきますね、と席を立ってインターホンを確認する。

 そこには、仲原(なかはら)ゆずほが立っていた。

 渉は玄関に向かい、急いでドアを開ける。


「あ、天使くん久しぶり〜。中入るね──」


 とゆずほは部屋にずかずかと入っていく。

 渉はちょっと──とゆずほの後を追った。


「あら? あ、三田の彼女さん?」

「あ、違います。新巻の妻です──」


 と友梨香が答える。

 ゆずほは、ええっ?!と驚いて友梨香を見た。


「新巻の奥さん?! はじめまして、仲原ゆずほです」

「へえ、仲原さんですか。(しん)から聞いてます。お世話になっております──」


 と友梨香は立ち上がって頭を下げる。

 ゆずほも頭を下げて、二人は笑い合った。

 女性同士だからなのか、その後なんで頼之の家に居るのかというゆずほの問いに、友梨香はほんわかと受け答えをしていた。

 その間、渉は飲み物を三つ用意して、テーブルに運ぶ。


「……で、友梨香さんが天使くんに」

「そうなんです──ゆずほさんは作るんですか?」

 

 もう二人は下の名前で呼び合う仲になっていて、渉は少し驚いた。

 とりあえず、話さないと進まないので、渉も会話に加わる。


「あの、お話中悪いんですけど、何作るか決まってるんですか?」


 すると友梨香は、そう、それなんだけどね──と手を叩いて言った。


「今回は初心に戻って、クッキーにしようと思うの。普通のとココア」

「クッキーですか。それなら俺も大丈夫です」

「じゃあクッキーに決まり。でも……」


 と友梨香が表情を曇らせる。

 

「慎に練習してるのバレたら嫌なのよねぇ……」

「それはそうよ! わかった。じゃあ、私のウチ使わせてあげる!」


 とゆずほが胸を叩く。

 すると友梨香は目をうるうるさせて、手を組んでゆずほを見た。


「ありがとうございます! ゆずほさん……!」

「いいのいいの──もちろんシークレットよね?」

「はい! お願いします!」


 渉は二人を見て、やっぱり女子だなぁと思う。

 すると、二人が渉に顔を向けて言った。


「もちろん、天使くんも三田くんには内緒ね?」

「それで、私のウチに来て、友梨香さんのお手伝いするのよ!」

「わ、わかりました──」


 渉は若干ゆずほの気迫に()されながらも頷いた。

 それから、渉はゆずほとアドレスと番号を交換した。


「じゃ、よろしくね」

「はい」

「じゃ、私も行こ──そうそう、三田に連絡ね。篤実(あつみ)さんから。『近い内に話をしよう』って言ってたって」

「わかりました──」


 玄関で二人を見送り、渉は部屋に戻った。

 それから紙にゆずほに言われたことをメモする。


「よし……これで大丈夫──てか、篤実さんって誰だろ。上司かな? 仲原さん呼び捨てにしてなかったし」


 と渉は考える。

 少しして、ま、いっか──と渉はコップを片し始めた。


         *


「ただいま」

「お帰りなさい──仲原さんから、伝言預かりました」


 と渉はスーツを脱いだ頼之にメモを渡す。

 頼之は目を通してから、少しムッとした表情になった。


「どうかしました……?」

「いや、ちょっと苦手な上司でな」

「そうなんですか……」

「あぁ──それより、いつ仲原と会ったんだ?」


 頼之に訊かれ、渉はドキリとする。

 内緒だと言われた以上、ここで失敗する訳にはいかない。


「こ、コンビニに行ったら、ちょうど会いまして……」

「そうなのか。コンビニに行く暇があるなら、今日のノルマをやれってことだ──」


 頼之は、はぁ、と息を吐くと、ネクタイを外した。


「はは──お疲れですか?」

 

 と渉が訊くと、頼之は、あぁ、と言って渉を引き寄せる。それからそっと抱きしめた。


「疲れた……」

「お、お風呂沸かしましょうか……?」


 抱きしめられて、渉はドキドキしながら訊く。

 頼之は、んー、と曖昧な声を出して言った。


「いや……あとちょっとこうしてれば、疲れはとれる」

「そ、うですか……」


 渉は恥ずかしく思いながらも、頼之の背中に手を回し、そっと抱きしめる。


「と、取れました?」

「あぁ……。でも、離れたくなくなったな──」


 と頼之は苦笑いして渉を見ると、スッと顔に手を添えて唇を重ねた。


「……お、お風呂、沸かします!」


 唇が離れてから、渉は早口で言ってお風呂場に向かっていった。

 頼之は、少し顔を赤くして離れていった渉を見て、ふっと微笑むのだった──





友梨香「頑張りますよ!」

ゆずほ「頑張ってください!」

渉(さすが女子……)

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ