表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
16/53

何にしよう

遅くなりました(_ _)

プレゼント。

 大学の講義室で、天使(あまつか)(わたる)は友人の新巻(あらまき)(たく)に訊こうとした。


「あのさ」

「お前、クリスマス彼女と過ごすとか許さねえからな──クリスマスは彼女いない奴らと飲み明かすからな」

「は……? 無理無理──」


 と渉は断ろうとする。

 なぜなら渉は、毎日、三田(みつだ)頼之(よりゆき)の所に家事をしにいくことになっているからだ。

 でも巧は、関係ないというように言う。


「ははは。彼女には謝っておくんだな!」

「いや、三田さんのとこ」

「はあ? 大丈夫だろ、一日くらい。お願いしとけよ」

「ええ……」


 渉は苦い顔になり、巧に言う。


「クリスマスじゃなくて、せめてイブに……」

「ならん! なるものかっ! 何のためにクリスマス集まると思ってんだよ」

「知らねえよ」

「クリぼっちを避けるために決まってんだろ!」


 と巧が両手をわきわきと動かして続ける。


「カップルたちがキャッキャウフフしてるのを、俺たちは涙しながらやけ酒じゃあ!」

「やけ酒って……」

「お前はいいよな、彼女いるんだもんな! まあ、ラブラブさせねえけど!」


 渉はそれを聞いて、これ以上何を言ってもだめだと思い、渋々頷いた。


「……わかったよ、クリスマス付き合うよ」

「よっしゃあ! よろしくな!」


 巧はガッツポーズをしたあと、渉の肩をポンと叩いた。

 これじゃあ、プレゼント何にしたらいいか訊けないよなぁ……と渉は苦笑いするのだった──


         *


「この前はごめんね〜、助かったわ──」


 と仲原(なかはら)ゆずほは、頼之が淹れたコーヒーを飲みながら言った。

 ゆずほは、頼之に自分の仕事をしてもらったお礼と、治ったという報告をしに来ていた。


「おかげさまで体調治ったし──あ、そうそう、三田風邪引いたんだって? 大丈夫だった?」

「まあ、大丈夫だ。渉が看病しに来てくれたからな」


 と頼之もコーヒーを飲んで答える。


「……渉? あ、前に来てすぐ帰っちゃった子?」

「……そうだな。天使渉」

「え? なに? どういう関係? 弟とか?」


 とゆずほは身を乗り出して訊く。

 頼之は少し引きながら言った。


「……家事をしに来てもらってるんだよ──」

「あ、そうなんだ。だからあの時部屋が綺麗か聞かれたんだ」


 なるほどなるほど、とゆずほは席に座り直す。

 頼之は、ふぅ、と息を吐いた。


「で、その天使くんって、彼女とかいるの?」


 頼之はちらっとゆずほを見てから、カップに視線を戻した。


「……さぁ、どうだろうな」

「なんで。そういう話は聞かないの?」

「プライベートを詮索されたら嫌だろ」

「ええ? そんなの女子にとったら日常会話じゃない」


 とゆずほはカップを手の中でころころさせる。


「女子じゃない。男子だ」

「つまんないの──あ、そういえばそろそろクリスマスよね。三田は何か予定とかあるの?」


 とゆずほは目をキラキラさせて頼之を見る。


「ない」


 頼之のその一言に、ゆずほはあからさまにつまらなそうな顔になる。


「なんだ〜、『彼女とデートがある』とかあるのかと思ったのに──彼女はいるでしょ?」

「……まぁ」


 “彼女”ではないが……と頼之は渉を思い出す。


「じゃあじゃあ、プレゼント渡すの?」

「何かしらは渡したいんだが、何がいいと思う?」


 と頼之は少し目を逸らしながら、ゆずほを見た。

 ゆずほは、そうねぇ……と口元に手をあてがってから、思いついたように言った。


「婚約指輪は?! ステキじゃない?」

「…………」


 確かに渡してみたいが……。それを渉にどう思われるかが問題だ……と頼之は思う。


「……他は?」

「他ぁ? 花束とか?」

「……他には」

「うーん……ワイン! バック、アクセサリー」

「それお前が欲しいのだろ──」


 バレた? と頭を掻いて、ゆずほは笑った。


「……てか、仲原は相手居るのか?」

「それが、いないんだよねぇ……。やっぱり、仕事一筋だったし……って言わせないでよ! いいの。私は友だちとクリスマス過ごすから──」


 とゆずほは、ふてくされたようにカップを口に運んだ。


「……あ、聞いてよ。前に新巻(あらまき)が、私たちに仕事頼んできた時あったじゃない?」

「ん? あぁ──」


 と頼之は思い出す。

 前に、新巻(あらまき)(しん)が仕事を頼んできた時があった。

 そのお礼に、頼之はカステラを貰ったのだ。


「それで、お礼何貰った?」

「カステラ貰った」


 テンシと食べたしな、と頼之は思い出す。

 すると、ゆずほはテーブルを軽く叩いて言い始めた。


「カステラ?! いいわね! カステラ! 私なんて、靴下よ? なに、靴下って! 『最近夜冷えるから、履いて寝ろよ』だって……! 真っ黒の! せめて柄入りがよかった! 食べ物がよかったのにぃ〜っ」


 とゆずほはテーブルに伏せる。

 頼之はそんなゆずほを見ながら、慰めの言葉を口にする。


「まあまあ、お土産貰えただけでもいいと思えば……」

「カステラのくせに──」

「…………」


 ぐすんとテーブルに伏せたままのゆずほに、子どもか……! とツッコみたくなったが、そこでツッコんでも悪化するだけだと頼之は思ったので、愚痴に付き合ってやるか──と、コーヒーを追加しに席を立つのだった……


         *


 頼之の所に行くと、ゆずほが目を輝かせて渉を見た。


「天使くんは、彼女いるの?!」

「え──」


 リュックを背負ったまま、渉は固まる。

 それから頼之に視線をやってから、口を開いた。


「こ、恋人なら……」

「なんだ、居るんじゃない! 三田聞いた?」

「あぁ──」


 と頼之は渉を見やってから、カップを口に運んだ。


「で、で、天使くんの彼女ってどんな人なの?!」


 渉はリュックを下ろして、マフラーを外しているところだった。


「ど、どんな……?」


 と渉は頼之をちらっと見て、ゆずほに視線を戻す。


「そうそう! 三田も聞きたいでしょ?」


 頼之は、いつもと変わらない口調で言った。


「そうだな──」

「ほらね、聞かせて聞かせて」


 とゆずほはキラキラした目で渉を見つめる。

 渉は細々と言い始める。


「えっと……、優しくて、温かい人です……細かい事やる時、眼鏡かけたりして……はい……」

「へえ! いいねいいね〜」


 とゆずほは顔を両手で挟んでうっとりする。

 渉は恥ずかしくて、頼之の方を見れない。


「あ。じゃあ、今度は三田に訊くわ! 彼女どんな人?」


 ゆずほの言葉に反応して、渉は頼之を窺う。

 頼之はふっと笑うと言った。


「家事が出来て、気遣いも出来て、俺の大切な人──」

「キャー、愛されてる〜! ごちそうさま!」


 とゆずほは手を合わせて言った。

 渉は恥ずかしくて、顔をぱたぱたと手で扇いでいる。


「……あれ? じゃあ、天使くんいらなくない?」


 彼女家事出来るなら、天使くんに来てもらうことないよね? とゆずほは頼之を見る。


「……共働きで、お互い余裕がないんだよ」


 と頼之は答える。

 ゆずほは、そっか。と納得して笑った。


「仲原さんは……?」


 とふいに渉が言った。

 ゆずほは渉を見て手を振る。


「あはは、いないのよ。仕事が恋人、みたいな?」

「そうなんですか、キレイなのに」

「も〜、そんなこと言っても何も出ないわよ?」


 とゆずほは、満更でもないというように笑った。


「……じゃ、そろそろお邪魔するわ。ステキな話、ありがとね──」


 とゆずほは席を立つと、頼之と渉に手を振って出ていった。


「……じゃ、さっそくカップ片しますね──」

「テンシ、俺に彼女はいないからな」


 頼之が、カップを持ってキッチンに入った渉に言った。


「はい……?」

「渉だけだ。付き合ってるのは」

「……。あぁ、気遣ってくれたんですよね──俺だって、付き合ってるのは」


 サンタさんだけですよ、と言おうとしたが、頼之が微笑んで見ていたので渉は言うのをやめた。


「付き合ってるのは?」

「……今テーブルにいる人です……!」

「渉が付き合ってるのは?」

「っ…………サンタさん──」


 と渉はカップを洗いながら、頼之に聞こえるか聞こえないかの声で言った。

 恐る恐る頼之を見ると、頼之はソファーに移動していた。


「……なんだ」

「そうじゃないと困る」


 と頼之は渉を見て微笑んだ。


「聞こえてる?!」

「ばっちり」

「じゃあ、さっきリアクションしてくださいよ──!」


 と渉は顔が赤くなる。

 頼之は、ははは、と声を出して笑った。


 それから渉が、頼之にクリスマスのことを言うのを忘れたのに気づいたのは、家に帰ってからだった──





全員『明けましておめでとうございます。これからもよろしくお願いします』


次回、渉がクリスマスについて切り出すが──

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ