プロローグ3 栗原純は冒険者となる①
今から数刻前、ジュビディとコハラはスタンの中心とも呼べる広間に来ていた。
王都スタンは4つの大きな商店街が存在しており、その商店街一つ一つは一直線に進むことでこの広間に出るのだ。この広間から他の商店街は直結しており、そこから他の商店街へと移動するのが、スタンを徒歩で旅行する者の基本的な移動手段であろう。
徒歩以外の移動方法を視野に入れれば、この広間よりも便利な移動手段はあるが、この広間はただの移動手段で終わらないのだ。
とある旅行ガイドブックには、この広間は4つの商店街に繋がっているだけではなく、この広間には多くの出店を出しているので此処にいるだけで半日は時間を潰せるなどとも評価されてもいる為、多くの観光客は幾ら長くスタンに滞在しようと、幾ら短くスタンに滞在しようと、1日はこの広場で過ごしてしまう。
その為にこの広場は馬鹿な観光客をターゲットとしたスリや掻払いが多い。ある意味、スタンの治安の悪さを証明する名所?の一つとなっていた。
そして、ジュビディ達もその内の1人であった。勿論、犯行をする立場の。
「ジュビディ、本当にするの?ディリルさんもスリはしちゃダメだと言ってたよ?」
「大丈夫大丈夫!ディリルとはもう1ヵ月も会ってないんだし、たぶん忘れてるし、気がつかないって!」
「でも、ディリルさんは妙な所で勘が鋭いから。それにバルチャさんなら確実に気がつく」
バルチャのことを言われると、流石のジュビディも小さく唸り声をあげ、身を縮める。つい半年前、スリをしたとばれてバルチャに殴られた時、尋常ではないほど痛かった為、今日までスリは控えてきた。
だが、今のスタンにバルチャはいない。財布を取ったとしても中身を取って、財布を質屋に売り飛ばすか、捨てれば流石のバルチャだって気がつかないだろう。
「……うん、たぶん大丈夫。俺の勘がそう告げている」
「アンタの勘、当たったことないんだけど……」
そう素直に言われると、流石のジュビディも辛かった。
「だ、大丈夫だって!俺を信じろ!」
「……どうせ、止めても無駄だし、アンタの勘、信じてあげる。但し、失敗したら本気で殴る」
コハラは声を低くし、ドスを利かせると、ジュビディを睨みつけた。いつも、コハラに怒られ慣れているジュビディも殴られると聞いたら、流石に身を縮まらせてしまう。
オーガは非常に筋力に優れていることを知られている。更に瞬間的な判断力や瞬発力、更には直感にも優れ、この世界で最も栄えている六種族の中では最強の戦闘力を持つと言われている。
そんな化け物に本気で殴られたら、ミグーシでなくとも間違いなく死亡してしまうだろう。耐えられるとしたら、同じオーガか無駄に体が丈夫なドワーフくらいだ。
「わ、分かった!んじゃ、絶対に成功させてやる!よーし……!」
「期待しないで待っておこう」
まずは広場を見渡し、カモを探す。財布をスルのに一番楽なのは、この国は自分が住む国と同じように安全だと思っている馬鹿な観光客だ。
多くの国はスタンよりはマシな治安だが、それでも治安は悪いと言えるだろう。その為、観光客の殆どは高い警戒心を持つが……何処にでも、そういう警戒心の薄い馬鹿はいる。
例えば、あの広場の中心のベンチで寝ている見たこともないような衣服に身を包んだ観光客らしき男など、簡単に財布をスレるカモだ。
周りの足音にまぎれるよう、寝ている男が起きないよう、男に近づいても周りが気にしないように、気をつけながら一歩一歩、男へ向かって歩くたびにスリのプランを考える。
男はカバンやリュックなどを持っているようには見えず、恐らく財布は上着のポケットに入っているのだろう。何故かというと、分かりやすいくらい上着のポケットが膨らんでいるからだ。
――あぁ、よかった。俺以外のスリにこの男がスラれなくて。こいつは最高のカモだぜ
そして、ジュビディが男に近づき、男が仰向けになろうと寝返りをうった。これはジュビディにとって最高のチャンスであった。
寝返りをうった瞬間、男のポケットから財布をスッと抜き出し、自分のポケットに仕舞いこむ。この行為に男は気がつかず、周りにいた者も気にしなかった。
スリは成功したが、急いで逃げたら確実にばれる。その為、ゆっくりと周りの空気に溶け込むように、周りから視線を集めないようにしながら、コハラの元へと近づいた。
「お疲れ様。流石に手際だったよ」
「へっへっへ、だろ?俺はミグーシとエルフの半人種だけどよ、スリの巧さはミグーシ一だって思ってんだ」
「うん、確かにね。スリは犯罪だけど、普通にアンタは巧いと思うよ」
「ふふんっ」
いつもコハラにスリの自慢をすると、殴られたり怒られたりするのだが、今回はそのようなことはなかった。その為か、ジュビディは少し調子に乗り鼻を鳴らした。
特にコハラに褒められたことがよかった。ジュビディは個人的にコハラを好いている……まぁ、はっきり言えば惚れているので純粋にコハラに自慢でき、褒められるようなことを望んでいた為、非常に嬉しかった。尤も、その自慢できることが犯罪なのは頂けないが。
「……あ、そろそろバルチャさんが帰ってくる時刻だね。多分、バルチャさん達ならそろそろ南街についている頃だろうし……どうする?迎えに行く?それとも先に質屋に行く?」
「ん、そうなの?んじゃ、バルチャ達を迎えに行こうぜ。どうせスリしただなんてバレナイだろうし。にひひっ」
こうして、2人は広場から去って行った。
そして……寝ていた男、栗原純が財布をスられたことに気がつくのに後、30分。
◆ ◆ ◆
「だから、拾ったんだってば!スリしたんじゃないよ!コハラは俺がスリをしたと思ってるだけ!」
ディリルがジュビディの財布に気がついてから30分、南街の入り口にバルチャ達は未だにいた。理由は簡単、ジュビディが財布をスったか、スってないかの話し合い、元よりそれをどうしようかと話し合っていた。
「ウソがばれるのも時間の問題。なら、とっとと真実を話すべきだと私は思うんだけど」
「畜生、コハラ!お前裏切りやがって……」
「私は裏切っていない。ただ単に真実は話した方が罰をあまり受けなくて済むと思っただけだよ」
「それを世間一般じゃ裏切ったつーんだよ!」
一応、ジュビディも何とかこの財布のことを誤魔化そうとしたが、僅か5分後コハラの裏切りに会い、結果 ジュビディがスリをしたことをばれた。
そして今も尚、スリを誤魔化そうとしていたが、3人にはすでにバレバレなようで相手にもされていない。そもそも3人の会話は既にジュビディがスリをしたかどうかから、スった財布をどうするかに話が移っていた。
「さぁてと、ジュビディがスってきた財布だが……どうする?騎士団の奴らに渡すか?」
「僕的にはそれは嫌だなー。騎士団連中のことだから、財布を預けた所で中身を取られて、おしまいだろうし」
「なら、こういうのどうですか?私達の内、誰かが財布を持って財布の持ち主を探す。それで財布を拾ったものだと言い張って返すって。流石にジュビディがそのまま返すとばれる危険性があって駄目ですけど、私達なら顔見られてませんし、案外拾ったって言えば信じてくれるかもしれませんよ?」
「おぉ、それいいかもしれねぇな。んじゃ、提案したディリルが行けよ」
「ちょっ……!?なんで私が行かなくちゃいけないんですか!?寧ろ、提案したんだから行かなくていいでしょ!?」
「僕はディリルが言った方がいいと思うなー。そもそも自分が言ったことなんだし、責任くらいもちなよ」
「2対1で評決は決定したな。という訳で、ディリル。言ってこいよ」
結果、ディリルの提案はそのまま通ったが、何故かディリルが財布の持ち主を捜しに行くことになった。そもそも、ディリルがなんでこの提案を言ったのかというと、ディノ辺りに押しつけられると思った為である。だが、結果はこれである。
いつも自分の師匠とも言える冒険者、ピエクレロから「後先考えない癖を治せ」と言われていたが、あえてディリルは癖を直さなかった。何故かと言えば、後先考えない結果、いい方向に物事が進んだことも多々ある為、ディリルはこの癖が自分の美点でもあると思っていたからだ。
だが、今日ほどこの癖を恨んだことは無かった。まさかこんなことになるとは……と思いつつも、仕方が無いのでディリルはこれからどうするか考え始めた。
「まぁ、とりあえずコハラの話を聞く限り、広間にいるかもしれまんから捜しに行ってみますね。見つからなかったら直ぐに戻ってきますから、30分くらいはここで待っててくださいね。それ以上、時間が経ったら先にシュターニャに行ってていいですから」
「おう、んじゃ頑張れよ。不審者とかには気をつけるんだぞー」
広間に足を運びつつ、ディリルはこれからどうするのか考える。はっきり言えば、財布の持ち主を探すのは凄く面倒臭い。ならば財布の中身を取って、広間で時間を潰した方がいいんじゃなかろうかと考えるが、流石にそれはジュビディとコハラの姉としてやりたくない。
であれば、真面目に探すしかないだろう。
――まぁどうせ、見つからないだろうし、依頼の報酬を使って時間を潰そーっと
◆ ◆ ◆
「ありがとう!本当にありがと!いやー、まさか財布を落としていたとは……確か昨日はズボンに入れて寝たと思ったんだけど……まぁいいや!とりあえず何かお礼でもするよ」
まさかのビンゴであった。広場で何か聞き込みをしている不審人物である男に話を聞くと、財布をスラれたというのだ。それで財布が落ちていたという嘘を話すと、男はそれを本当のことだと信じ、ディリルにお礼をすると言い出したのだ。
「あ、あの……貴方は私が財布をスったとか思わないんですか?そもそも、貴方は財布をちゃんとポケットに入れてたって言ってたじゃないですか。なのに、急に財布を持って落ちてましたーっていう女を信用するんですか?」
ありったけの疑問を男にぶつける。はっきり言えば、この男がこんなに簡単に自分を信じるなど、それもお礼をするなどとディリルは思ってもみなかった為、ディリルははっきり言えば混乱していたのだろう。
故に、まるで自分が財布をスったと言わんばかりの質問を投げつけてしまった。それに気がついた時にはもう遅い。目の前の男には財布をスったのが自分だと思われてしまっただろう。
逃げる手段を頭の中で考えながら、直ぐに逃げられるように体勢を整えながら、男のリアクションを待つ。そして、それはディリルも予想外な方向に転がり始めた。
「ん?だって、そんなことをする利点なんてないだろ?そもそも財布を取る時点でそんなに利点は無いのに、取った後に返しに来るなんて利点どころか、意味不明だし」
「い、いや……例えばですよ?例えば、私が財布をスった後に貴方にお礼を貰えると知っていたから、財布をスったとかいう可能性は?」
「いや、流石にそんな可能性はあり得ないって。そもそも、確実にお礼が貰えるかどうかは分からないし。それこそ、未来を見えでもしなきゃ無理だって」
それもそうだが、何か腑に落ちない。そもそも、なんでこの男は自分のことをこんなにも信じているのか。なんでこんなにも人を信じられるのだろうか。自分がこの男なら、絶対に信じないのに。
だけど、そう信じてくれるなら、ディリルとしてもありがたかった。とっとと財布を渡して、バルチャ達と合流しよう。
そう思い、男に一礼しその場を去ろうとしたのだが――。
「ちょ、待った!まだお礼が済んでないよ!」
「えっ!?あ、あの……!?」
その場を去ろうとした自分の手を男は図々しくも握ってきたのだ。男の元々の気質なのか、それとも意図的なのか分からないが、急に異性に手を握られた為かディリルの頬は薄い赤色に染まった。
ディリルは冒険者であるが、それ以前にまだ年端もいかない少女である。急に異性に手を握られでもしたら、否応にも意識はしてしまうだろう。
おまけつき、この男は平均的以上に顔は良い。鼻は程々に高く、全体的に細いがある程度の筋肉はついている。そして何よりも、この男はスタンでは珍しい黒髪であった。それが何よりもディリルの乙女心を擽る。
「わ、分かりました!お礼してもらいますから、手を離してくださいっ!」
「あ、ごめんごめん。いや、俺って焦ると自分でも何しでかすか分からなくて……。この前もさ――」
男が何かを話しているが、ディリルの耳には届かない。男に手を握られたことと、楽しそうに何かを話す男の笑みを見ると、手を握られた時よりもディリルの顔は赤く染まる。
はっきり言えば、この男とは財布を届けただけ、それと手を握られただけの互いの名も知らぬ関係であるが、何故かこの男が異常に気になり始めた。
とにかく、まずは“コレ”を何とかしなければ目の前の男と会話することも間々ならいと判断し、とりあえずバルチャに連絡することにした。
懐にしまっておいた拳大の球体を強く握り、バルチャを強く呼び掛ける。
◆ ◆ ◆
南街の入り口にある果物屋からリコスの実を一つ買い、それを火特に齧る。口の中に強い酸味が駆け抜けたかと思うと、次の瞬間 それをうち消すほどの甘味が広がる。
――うん、やっぱりリコスの実は美味い
塀によっかかりながら、バルチャがそう思う。ディノはジュビディ達と少し遊びに行くと行ったまま戻らない。ディリルは財布を届けに行ったが、未だに戻らない。
一度はシュターニャに先へ行こうかと思ったが、1人で行ってディノ達が死んだと思われても面倒なので行くことはやめた。
どうやって暇を潰そうかと悩んでいると、果物屋でリコスの実が売っているのを見たので、それを買い こうして食べていた。だが、リコスの実はバルチャにとっては小さく、僅か5口で食べ終わってしまう。
さて、どうしようかと考えていると、頭の中にディリルの声が響く。
『あの、バルチャさん。聞こえますか?ディリルです、面倒なことになりました』
『ん?どうした?お前がスったんだろって言い掛かりをつけられたか?よし、待ってな。今すぐそっちに向かう。それまで何とか耐えてろよ』
南街から直進すれば南商店街に入り、そのままディリルが因縁つけられているだろう広場までつく。バルチャの足ならば全力で走れば5分もせずにつくだろうし、仮にディリルが攫われるようなことがあっても間に合うだろう。
南商店街へ体を向け、いつでも走れる姿勢を作るが、ディリルの言葉によってそれは止められる。
『い、いや!言い掛かりをつけられたとかじゃなくて……その、お礼をするって言われて凄く困ってるんです……』
『あぁ、そういうことか。なら、普通にお礼でも受け取っとけ。ただより安いものなんてねぇしな』
『で、でも……男の人と2人で……その、はしたなくないですか……?』
ディリルははっきり言えば、男と2人で酒を飲んだり、食事をするのを拒まないタイプの人間である。そのことはディリルと共に数年冒険者をやっているバルチャは知っている。
だが、ディリルがここまで拒む理由は2つほど、考えられる。1つは男が無理矢理、ディリルに言い寄る下心丸出しの馬鹿か。そういう馬鹿はディリルのパンチで一発で逃げ出す為、バルチャが心配する必要は一切ない。
そして、もう1つのパターンはディリルの“好み”にあった場合である。黒髪、高身長 (と言っても、ミグーシから見れば殆どの種族は高身長の為、これはあまり意味が無かったりする)、そして程良く筋肉がついているということ。これら全てが合わさった人物に食事等に誘われた時、ディリルはパニックに陥り、よくバルチャに連絡する為、一発で理解できた。
「あはははは!なぁんだ、ディリル。お前、一目惚れでもしたのか?」
思わず、声を上げて笑い、からかってしまった。本来、通信用の魔法道具を使用すれば声を出さずとも、相手に意思を伝えることは出来る。だが、そのことを忘れてしまうほど、バルチャの気分は高まっていた。
はたから見れば、何も見えない所に話しかける変人に見えるというのにだ。
『は、はぁ!?違いますし!私、そんな尻軽女じゃありませんしっ!』
「そんなに恥ずかしがるなよ!お前くらいの年の女が一目惚れすることなんてよくあるからさ!とりあえず、そのお礼は受けておけよ!じゃ、通信し切るな?」
『ちょ、バルチャさん!?話はまだ――』
何か言おうとしていたようだが、自身の持っていた通信石を握り潰して、強制的に話を途絶えさせる。本来なら通信を切ると、互いに認めれば通信は切れるが、逆に言えば、どちらかが同意しなければ通信は途絶えない。だが、その通信石さえ、壊してしまえば通信は強制的に途切れるのだ。
「いや、まさかあのディリルが!クフフフ、アッハッハッハ!こりゃまた、からかう為のネタが出来たかねぇ?」
バルチャが上機嫌に笑っていると、周囲に人影が集まってくる。街の住民が迷惑して集まったのかと思いきや、それはよく見なれた顔触れであった。
いつの間にか、遊びが終わったディノ達が帰ってきていたのだ。手にはリコスの実を飴で包み込んだものを持っており、特にジュビディは口の周りが飴でべとべとになっていた。
「バルチャ、どうしたの?凄く、上機嫌みたいだけど……。酒でも呑んだとか?」
「いや、実はさ……ついさっき、ディリルから連絡があってな。実はよぉ……」
間を空けて、3人の顔色を窺う。その顔には心配そうに「何かあったのであろうか」と思っているように見えていた。
バルチャにしては、逆にそれが可笑しくて、更に声を上げて笑ってしまう。
「もう!早く言えよ!」
「アハッハッハ!悪い悪い!実はさ、ディリルの奴……」
「これから、一目惚れした相手とデートするんだってさ!アッハッハ!!」
その言葉に3人が固まる。その言葉が少しして理解できたのか、3人の内1人は顔を真っ赤に染めており、1人は直ぐにどうでもよさそうにリコスの実の飴をなめ始めた。
そして、最後の1人であるディノは表情を暗くし、プルプルと体を震わせている。
「……それマジ?」
「マジマジ!アッハッハ!いやー、まさかディリルの奴に春が来るとは!この俺にも予想外だったわ!」
まさか、ディリルが惚れて、しかも惚れた相手とデートするなど、ディノにとっては考えられなかった。ディリルはいつも自分の傍にいて、これからもずっとそばにいるのだと思っていた。
だが、ディリルは急にディノが手の届かないような遠くへ行ってしまうような気がして……ディノは現代進行で自分の心の一部がスッと落ちるような感覚に苛まれた。
「とりあえずジュビディ、コハラ。もう悪さすんじゃねぇぞ。おら、行くぞー」
「……………」
体を震わせながら、バルチャに引きずられるディノを見ながらコハラとディノは思う。
もしも、ディリルがその一目惚れの相手と付き合うようなことになったら、告白の秘訣を聞こうと。そして、自分も思い人に告白しようと。自分の隣にいる大切な人の手を握り締め、そう決意した。
「ちょ、コハラ?どうしたの?そんなに手を強く握ったら、痛いって」
「あ、ごめん」
……まずはこの朴念仁をどうにかしなければ。お互いにお互いを気持ちに気がついてない2人はそんなことを思いつつ、コハラとジュビディは南街の人波へ消えていった。