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黒影ヴェルト  作者: ポリエステル25%
2/7

具合はどうですか?

暗い。

どこまでも暗い。

どこまでも黒で

どこまでも見えない。


俺は今何をしているのだろうか。

背中に伝わる地面の感覚で自分は倒れていることがわかる。

その背中の感覚は冷たく、そして触れている面からだんだん広がっていく。

辺りを見回すが、光すら一筋も差し込んでこないようだ。

しかしこの空間に不思議と恐怖を感じない自分がいる。

いや、そんなことよりまず体を起こそう。


「ウェイクアップ!!」


妙に真面目テンションになってしまっている俺はヒーローもののアニメのように叫びながら起き上がった。

自分がいる場所がどうなっているのかわからないが辺り一帯に声が響く。


「おあっ!?」


その響きに驚きつつポケットから携帯を取り出した。


「ここは一体どうなってんだ?」


携帯のカメラ機能を起動させそのライトで辺りを照らしてみるがゴツゴツした岩肌ばかりが広がっている。

本物か?

そう思い岩壁を触ってみるが冷んやり冷たく硬く、岩の感触しかしない。プラスチックではないようだ。

軽くステップも踏んでみたが下はやはりコンクリートなどではなく地面となっている。


⚪︎


「ふぅ…。」


一通り調べてみてそう一息をつき岩壁の丁度いいくらいに出っ張った場所に腰を掛ける。現状を把握した俺は改めてまとめてみる。


ふむ、どうやら洞窟のような所にいるようだな。しかもこれだけ光が届いていないところをみるとかなり最深部のようだ。持っていた荷物はリュック以外は全て消えているしあるのはズボンのポケットに入れていた携帯と今日買った本だけだ。足場はあまりいいとは言えないし、携帯のバッテリーにも制限がある。ライトで照らすこともできなくなるだけでなく連絡手段をも絶たれるわけにはいかない。つまり、ライト機能をなるべく使わずこの洞窟を抜けなければならない。そして今まで一回も見てはいないが危険な動物や虫がいる可能性もあるのだ。

出るにはさぞ時間がかかることだろう。

さて…


「おーい!そろそろ目を覚まそうぜ俺ー!!」


今自分の部屋のベッドで寝ているだろう俺に呼びかける。


「もうそろそろ学校行かなきゃいけない時間じゃないのかー!」


まだ起きないか…。

確かに俺は早く起きるのは苦手だが。


「今起きれば遅刻しそうな食パンくわえた女子と曲がり角でごっつんこできるかもしれないぞー!」


…。

これで起きないだと…!?

そんなバカな。

もしかして昨日夜更かししたか?

アニメ一気見したとかか?確かに忙しくて見れなかった黒猫少女サチの録画が溜まってたけど。


そんなことよりこんな手の打ちようがない夢から覚めなければ!この夢がもしかして現実かもしれないという恐怖がじわじわ足の裏くらいまでだけど来ているじゃないか…。

ちょっとまて。落ち着くんだ。昨日あったことをまとめて見るんだ。きっと最後の記憶は就寝前になっているはずだ。思い出せ、俺!!



起床

登校

午前の授業(1〜4限休憩有)

昼食休憩

掃除

午後の授業(5〜6限休憩有)

帰宅

本を探しに本屋巡りへ

本屋から帰宅中謎の物体に遭遇 ←new‼︎


ちょっまて…!?

なんか変なの混ざってるんだけど!?

その後こんな洞窟の中にワープて。

これで現実ならクソゲーすぎるだろう。

ど、どうすれば目が覚めるんだ!

軽くパニックに陥ってる俺はよく漫画でありそうな方法を思いつく。


「あ、そうだ!自分を殴ればいいじゃないか!」


いや、だがまて。

やはり例え夢であっても自分で自分を殴るというのは抵抗がある。

だがしかし、夢から冷めなければこの悪夢の中で過ごさなくてはならない…!というかこのままじゃ完全遅刻だろ!

こうなれば岩壁に頭を打ち付けて起きるしか…。よし、それでいこう!

冷静な思考を失ったどう考えても自分を殴ったほうがマシなような案を見出した俺は、勢いよく立ち上がりスタートダッシュをきる。

足の筋肉に力を込め地面を蹴る。力が地面へと伝わりその反動で勢いをつけながら一直線に岩壁に向かって走っ…


「って普通に無理いいいいいー!!」


途中で急ブレーキをかける。何せ夢とはいえ俺は鳥もも肉なのだ…。しかし急に動きを変更したために体がついていかず、バランスを崩した。そして苔などで滑りやすくなっているだろうと思われる足場に足をつく。


「ちょっ…まっ…!!」


まるでツルッと言う擬音が聞こえたかのように俺は見事に滑り宙を舞い、岩壁に頭を向け突っ込んでいった。

ああ…もうこんなんばっか


ゴッ


一瞬痛みを感じたかと思うとまた一瞬で意識を失った…。

後から考えれば岩壁の冷たさを感じた時、夢ではないと気づけばよかったと思ったのは本当に遅かった。




「〜〜〜〜〜〜」

誰かの声がする。

そして意識がはっきりしてくる。

…また、目覚めのシーンからやり直しですか教会でお金払って復活ですか?

というか流石に二回も目覚めで始まると展開的にワンパターンすぎないか?

そんなふざけたことを思っているとようやく声が聴きとれるようになる。


「お〜い、大丈夫ですか?」


ゆっくり目を開ける。


「んー…?朝か…?」


一体誰だろう…?もしここが自分の部屋のベッドなら起こしてくる人間なんていないはずだが。

家族は俺より早く家を出るだろうし。

そう思いながら重いまぶたを少しずつ持ち上げていく。視界に段々いろんな情報が入ってきた。

そして視覚情報が完全に脳に伝わった時。

目の前には女の子の顔があった。

まず最初に訪れた感情は驚きだ。

それは目の前に知らない人間がいて驚いたこともあるが、その俺の顔を覗きこんでいるのだろうその顔がとても綺麗で整った顔立ちをしていたのだ。

その目は吸い込まれるような深い青、髪は銀色にキラキラ輝いていて肌は白く透き通り、月の光に照らされとても神秘的にみえた。

しばらく息を吸うのを忘れる程見惚れる。まだ俺は夢を見ているのか…?

すると少女は


「よかった。目が覚めたんですね。」


と笑顔で話しかけてきた。

その声でようやく我に返り、自分が陥った状況を確認するに至る。

俺は洞窟の夢から覚めたはずだ、だが俺が寝そべっている場所は草原。どうみても屋外だ。しかも夜?どうなってるんだ…?そして美少女が目の前にいるんですけどどうすればいいんですか!?

今の状況が全く飲み込めず混乱していた俺は思わず尋ねる。


「君は誰…?」


少女は目を丸くして少し考える素振りをみせると、ああーと言って答える。


「そうですよね。いきなり知らない人が目の前にいたら誰って思いますよね。」


とまた笑う。


「私の名前はアミス。貴方がこの黒影洞窟に倒れていたから外まで運んで来たんです。」


アミスと名乗る少女がそう口にした瞬間、思い出したかのように頭にじわじわと広がる痛みを感じた。思わず痛む部位を手で覆う。


「ぐっ…。」


これで受け入れるしかなくなったな…。

洞窟の中で打ったであろう場所と同じ部位に感じる痛みがこの状況が現実だということを俺にひしひしと伝える。

本当に一体どうなってるんだ…?

しかし、こんな可愛い娘が目の前にいるのだからそんなことどうでもよくなってきた感が否めない。こんな状況でも許してやらんこともない、むしろ全然許す。というかこっちのほうがいい。


「あっ、無理しないでください。一応手当てはしたんですが、傷薬などは持ってなくて…。」


その言葉を聞き、確認すると頭に傷を覆うように包帯のようなものが巻いてある。

その事実に驚愕した俺は思った…。

女神様がおる!!!!と

そして感動で涙がでる


「うぐっ…ひぐっ…倒れているところを運んでくれて手当てまでしてくれたのか…。本当にありがとう…。あなた様は女神の生まれ変わりかなにかなのですか。」


とちょっと…どころじゃなく気持ち悪くなったがお礼を言った。


「いえいえ。困った時は助け合いですよ。でもそんなに言われると嬉しいですね。」


と少し照れたように言う姿はますます可愛かった。

その後なにかに思い至ったような顔をすると質問をしてきた。


「そう言えば貴方の名前をまだ聞いていませんでした。なんと言うんですか?」


まだ名前を名乗っていなかったとはなんてこった。

ふっふっふ…。

この自己紹介が壊滅的につかみどころがなくて結局誰からも話しかけられないと定評のある俺が本気を出すときが来たようだな。よし、ここはフレンドリーにいくぜ!


「俺は陽月(ひづき) 影一(かげひと)。趣味は読書。呼び方は影一でもカゲでも陽月でもひーくんでもなんでもいいぜ!。よろしく!」


「ヒヅキ カゲヒト…。面白い名前ですね。ではカゲヒトさん。私のことアミスとしか呼びようがありませんから、そのままで呼んでください。」


そんなに面白い名前だろうか?まあ髪や目の色から外国人だと思うから名前の文化が違うんだろう。


「じゃあアミス。改めてありがとう。助かったよ。」


「いえ、本当に気にしないでください。それでは、このままここで過ごすのはあれですし、夜も深くなってきたのでとりあえず街に戻りましょう。」


「そうだな。」


と言っていってはみたもののここがどこかも分からないし。まあ、ここの近くの街にでて交番や警察署にいけば保護してもらうことができるだろう。

とりあえずあの洞窟で目覚める前に出会った影の話は誰にもしないほうがいい。特に助けてくれたアミスは巻き込みたくない。


「じゃあ、行きますか。」


アミスは木でできたリヤカーを引いている。人ひとり乗せるには十分な大きさがある。多分あれで俺を外まで運んだのだろう。


「アミス。それ俺が引くよ、力仕事は任せてくれ。」


せめて少しでも役に立てるようにしたい。


「そうですか?…ではお願いします。」


こちらの気持ちを察したのか素直に渡してくれる。

やっぱりいい子だなぁ。

そう思いながら街へと向かった。

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