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はじめてのおつかい

 俺の不安もよそに、秋野麿あきのまろさん、はじめてのおつかい。

 え、これほんと大丈夫?大丈夫?




 「では、行ってまいる」


俺は不安で仕方ないんだけどジロウさんはにこやかに秋野麿さんをおつかいに送り出した。時雨さんがついているとはいえ、うーん不安だ。そもそも時雨さんだって大丈夫なのか。








* * *


 はい。ついてきました。キリです。こっそり後をつけてまいりました。だって不安じゃん。なんたってまろだよ。おつかいどころか買い物なんてしたことないだろ、絶対。

 ちょっと離れてひっそりついて来ている俺を時雨さんは当然気づいているみたいだけど黙ってくれている。ありがとう。いまいち時雨さんとのコミュニケーションが上手くいっていない気がする俺だけどよかった。意図するところはわかってくれたらしい。そう、俺は不安なのですよ!あとちょっとした好奇心。はじめてのおつかい、見守ってやろうではないか。うん。




 というわけで観察中。主従コンビ、いや、時雨さんの姿は見えないから見た感じ秋野麿さん一人だな。がてくてく街を歩いているわけだけど、すごい視線を浴びている……。道行く人みんな振り返ってるぜ。お手本みたいに見事な二度見。そりゃそうだよな。なんか見たことない変わった服装で、変な帽子みたいなの(つまり烏帽子)かぶってておまけに薄化粧。なんだなんだ、ってなるよなあ。異世界人の存在は知っているから変わった服装はまあ見慣れているかもだけど、やっぱり顔、気になるよなあ。白塗りというほどではないにしろ。日本人である俺からしたら「うわあ、まろだ」ってところだけど。知らない人はどう思うんだろ。ピエロみたいとか思ったりするんだろうか。うーん。二度見だな。



 ……って、ちょっと待てよ。しばらく後をつけていて気づいた。街の人たちが変な目で秋野麿さんを見ているのはどうも外見のことではないらしい。

 さっきから時雨さんとずっと喋っているからだ。もしかして。時雨さんの姿見えねえもんなあ。どう見ても秋野麿さん一人でぺちゃくちゃ喋ってるわこれ。うん。


 「なに、あの変な格好の人。一人でなんか喋ってるー」


 「よしなさい、じっと見ないの。近づいちゃダメよ!」


 うわー。小さい子に指さされてるよ。お母さんに近づくなとか言われてる…。あ、秋野麿さんその子に手振ってる。あ、慌ててお母さんに引っ張られてった。うわー。なんか、なんかうん……。








* * *


 そうこうしている間に秋野麿さん(と時雨さん)はとある商店にたどり着いていた。うん、確かにここに砂糖売ってるわ。よくわかったな。時雨さんかな?ちょいちょい街に出て散策しているみたいだし。





 「失礼する。砂糖とやらは何処じゃ。まろに売ってもらうでおじゃる」


 「え。あ、ああ砂糖かい?砂糖ならここにあるよ、どうぞ」


 「おお、そうかそうか。……して、どれが砂糖じゃ」


 「……これ全部砂糖だよ。種類によって値段が違うがねえ。さてどれにします?」


 俺もこっそり後に続いて店に入りました。店員さん一瞬目が点になっていた。俺は見逃さなかったぜ。だがさすが客商売、一瞬で笑顔に変わったよ。俺も見習わなければだな。

 ……じゃなくて、秋野麿さん大丈夫か、砂糖わかってる?そこにあるの全部砂糖だよ!



 「ほう……全部砂糖とな。あいわかった。ならば一番いいものをもらおうか」


 「一番いいもの?この一番高いやつでいいかい?」


 「うむ。それでよい」


 「え、本当に?そうかい!まいどあり!」


 おいおいおい秋野麿さん。それめっちゃ高い。めっちゃ高いから。1kg2000アルトとかアホみたいに高いよ。いいものかなんか知らんけど砂糖なんて1kgせいぜい200アルトとかそこらじゃねえの?え?他の砂糖見てごらんなさいよそんな高いのないでしょう!


 「いい買い物をしたよのう」


 「まって!秋野麿さん!」


 「ん?キリではないか。どうしたのじゃ、奇遇じゃの」


 くっそ思わず出てしまった。だって!さすがに高すぎるのだもの!



 「秋野麿さん、その砂糖は高すぎです。他のにしときましょう」


 「なんじゃ、そちはこれではいかんと申すのか?」


 不思議そうに首をかしげる秋野麿さん。うん。いかんです。


 「いや、さすがに高いです。他の砂糖の値段見てみてくださいよ、ほら」


 一番手前にあった砂糖、197アルトなりー。


 「そもそも秋野麿さん2000アルトも持っているんですか?」


 ジロウさんにお金渡されていたけど、砂糖買うくらいだから大した額じゃないはず。

 秋野麿さんは懐からジロウさんに渡された巾着を取り出して中を確認……


 「これはいくらじゃ?」


 500アルト硬貨を取り出して首をかしげた。


 ……俺らが悪かった。そうだよな、秋野麿さんお金のことわかるわけないよ。異世界から来たんだしな。アルトって通貨が現代日本とほぼ同じだから俺はすぐに馴染んだけど秋野麿さんは違う。日本人っぽいけどどう見てもその日本は現代日本じゃないし小判とかの時代だろうし、それ以前になんかすごい貴族っぽいから自分でお金払ったこと自体なかったりして。

 というわけで。店員さん、



 

 

 「すいません、この砂糖はやめてこっちにします」


 「なんだあ、これ買ってくれないのかい?はいよ、200アルトだ」


 「すいません、お騒がせしました。……帰りますよ、秋野麿さん」


 妥当な値段の砂糖を見繕ってさっさと購入。お店の方ご迷惑おかけしました。はやく帰ろう秋野麿さん。と時雨さん。


 






 かくして、秋野麿さんのはじめてのおつかいは幕を閉じたのであった……。


 

 秋野麿さんにはこの世界、この国のお金事情について勉強してもらおう。いや、時雨さんの方がいいかな。とりあえず、早く帰って無責任に秋野麿さんをおつかいに送り出したジロウさんに文句の一つでも言ってやる。めっちゃドキドキしたんだからな!





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