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扉の向こうは

『白い森の使者』と同じ世界のおはなしです。今度は日本人。

 東京某所



 今日も今日とてドラマの撮影。

 今撮っているのは来月から始まる新ドラマ。いわゆるラブストーリーで、俺の役どころはヒロインの大学の先輩。中盤でヒロインの恋心が揺れ動く優しくてカッコイイ先輩ってところ。まあ、最終的には違う奴とくっつくんだけどさ。でも主役じゃなくてこういう役もたまにはいいかな。…別に主役やりたかったわけじゃない。僻んでない。このドラマの主役、暑苦しい役だし。

 

 まあそれは置いといて、申し遅れました俺の名前ははなぶさ希里きり

 役者やってます二十歳です。今は撮影の帰りで。今日はスムーズにいって早く終わったからこのままどっか行こうかな、と思案中。

 



 …のはずだったんだが。

 この状況はいったいどういうことだろう。

 とりあえずカフェかどっかでコーヒーでも飲みつつこれからの予定をゆっくり考えようと思い、行きつけのカフェ・バッキンガムのドアを何気なく開けたら。



 全然知らん店ですけど…!


 

 え、ちょ、どういうこと?意味がわからない。確かに俺は今行きつけのカフェの、バッキンガムのドアを開けた。もう一度ドアを閉めて店の名前を確認してみる。バッキンガムじゃん。もう一回開けてみる。中全然違う。

 俺の知っているバッキンガムは、一見落ち着いた静かでお洒落なカフェだけどよくよく見ると時計とか食器とかちょっと豪華なんだよ。なんかこうさりげなくバッキンガムって感じなんだよ!

 

 それがなんだこれは。そもそも全く内装違うし。めっちゃ木じゃん。超カントリー。……とりあえず入ってみようか、もしかしてもしかするとバッキンガムは閉店して新しい店に変わったのかもしれない。だとしたら残念だ。バッキンガム気に入ってたのに。

 とりあえずバッキンガム(仮)に入ってみた。ドアを閉めると妙に重厚な感じにガチャリと音が響いた。カランとドアの鈴が鳴る。




 「いらっしゃいませ(Welcome!)


 店員が来た。…英語?


 「お一人様ですか?こちらへどうぞ」


 赤毛の女性が英語で席に案内してくれる。渡されたメニュー表も全て英語で書いてある。どういうことだろう。


 「…ええと、これは一体?」


 日本語で尋ねてみると困った顔をされた。こっちが困ってるよ、もう。日本語わからないみたいだ。とりあえずメニューを見てみる。幸いなことに俺は英語が喋れる。中学二年生までロンドンに住んでいた。一応芸能界では帰国子女の知性派もとい演技派俳優で売っているわけで。

 英語で書かれたそれには、それなりに普通のカフェっぽいメニューが並んでいる。ただ、ちょいちょい聞いたことのない単語が混じっている。シュークロウの卵で作ったふわふわシュークリーム…シュークロウって何?鶏の種類?まあいいやこれにしよう。











* * *



 「…美味しい」


 出てきたシュークロウのふわふわシュークリームは大変美味しかった。今まで食べてきたシュークリームはなんだっていうくらい。本当掛け値なしに。紅茶もなかなか良い。どうしよう、バッキンガムより美味しいんじゃないかこの店…!


 というわけで美味しくいただきました。会計会計。







 「1100アルトになります」





 ……アルト?



 「お客様?いかがされました?」


 「…あの、ドルじゃなくて?円じゃなくて?アルト?」


 ちょっとアルトとか聞いたことないんだけどなんですかそれ。確かにメニューには数字だけで$とか¥表示してなかったけどさ。なんですかそれは。

 俺の言葉に店員がぱちぱちと瞬きをする。もちろん今の会話も全部英語。


 「もしや異世界の方ですか?」


 「は?」


 ちょっとこの人意味がわからない。


 「だったらお代は結構ですよ。また来てください。次回ご来店の折にはいただきますから」


 「…はあ」


 「ああ、気にしないでください。時々いらっしゃるんですよ、異世界の方が。皆さんだいたい言葉が通じなくて困っていらっしゃるからすぐにわかりますが、あなたは普通に話していたからわかりませんでした。あなたのように言葉の通じる方は普通に食事しに来るんですが会計の時に通貨が違って驚くんです」


 店員がうんうんと頷きながらなんか色々喋っているけど、正直意味がわからないです。異世界?言葉?英語のこと?

 

 

 「はい、ではありがとうございました。またのご来店をお待ちしております」


 笑顔でまたのご来店をお待ちされたんだけど、ちょっとどうしよう。

 とりあえずこの店からさっさと出たい。今俺頭混乱してるわ。あれかな、最近ちょっと働きすぎだったかな、疲れているのかもしれない。うんそうだきっとそうだ。


 とにかく店の外に出るためにドアを開けた。…あれ、こんな重かったっけ?。






 


 「…どこだここは」





 扉の向こうは知らない場所でした。




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