挿絵表示切替ボタン
▼配色







▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる
謙虚、堅実をモットーに生きております! 作者:ひよこのケーキ
しおりの位置情報を変更しました
エラーが発生しました

ブックマークしました。

設定

更新通知 0/400

設定を保存しました
エラーが発生しました

カテゴリ

ブックマークへ

以下のブックマークを解除します。
よろしければ[解除]を押してください。

ブックマークを解除しました。

39/299

39

 奈良でもやっぱりメインは神社仏閣巡り。
 正直言って、少し飽きてきちゃったな~なんて思っていたら、万葉集を諳んじる子がいた。
 まわりの子達は尊敬の眼差しだ。
 小学生が万葉集を口ずさむ。これが教養か!教養なのか!
 ぜひ見習わせていただきたい!

 私が覚えている万葉集の歌は、前世で覚えた額田王のあかねさす~、だ。
 友達と額田王ごっこと称して、よく手をブンブン振り合って遊んだ。「そんなに振ったら野守に見つかってしまいますよ~」
 いきなり私がここで、関係のない額田王の歌を言い出してもおかしいし、対抗意識を燃やしたと思われても困るので、教養披露は様子を見ることにする。
 似たような事を考える子は大勢いたようで、法隆寺ではあちこちから柿食えば~と聞こえてきた。教養どころか、むしろバカっぽかった。
 もちろん私はやっていない。

 ただ夢殿の前に行った時に、なんとなく「日出処の天子…」とつぶやいたら、それを聞いた添乗員さんが素晴らしいと褒めてくれ、周りの子達にも「さすがは麗華様」と言われてしまった。
 私は、少女マンガのタイトルを言っただけだったんだけどね…。
 だがあえて、誤解は正すまい。


 奈良公園では事件が起きた。
 鹿せんべいを持って優雅に公園を散策していたら、鹿の群れに囲まれたのだ。
 一緒にいた子達はサッと逃げたが、私だけ逃げ遅れた!

 でかい!鹿、でかい!
 怖い!角、怖い!
 痛い!背中どつかれた!ぎゃあ!鹿せんべい取られた!

「麗華様、逃げて!」
「きゃあ麗華様が鹿に!」
「麗華様、鹿せんべいを遠くに投げて!」

 鹿せんべいを遠くに投げようとしたら、ひらひら舞って足元に落ちた。
 ぎゃあ!
 鹿にゴスゴス蹴られ、ドカンドカン体当たりされ、鹿せんべいが私の手にもうないとわかると、やっと鹿は次のターゲットを求め、去って行った。

「麗華様、大丈夫ですか!」
「あぁっ!麗華様がこんな姿に!」
「……大丈夫よ、みなさん。ありがとう」

 あれはなんだ。ギャングか。鹿ギャングか。鹿マフィアか。
 狂暴すぎるだろう…。
 前世の修学旅行で来た時には、もっとほのぼのとした思い出だったはずなのに、なにがあった、鹿。

 周りの子達が、私の制服の袋叩きの名残の汚れを落としてくれ、なんとか身形を整えることが出来、やっと落ち着いた時、こちらを見て口元を歪めている鏑木と目が合った。

 あいつ、笑ってやがる…。
 悔しい!あいつの周りに鹿せんべいをばらまいてやりたい!

 でも今の私にはもっと切実な問題がある。
 みんなは気づいていない。
 私が鹿の糞を踏んでしまったことを。

「そろそろ戻りましょう。麗華様、本当に大変でしたね」
「ねぇ。鹿ってあんなに怖いのね。私があげた鹿は可愛かったのに」
「どこか痛いところとかないですか?もうっ!男子ってば誰も助けられないんだから!情けない!」

 みんなと仲良く歩きながら、私は絶対に気づかれないように摺り足でローファーの底の糞をこそげ落とした。
 この歩き方は、鹿に蹴られて足を負傷してしまったから、引き摺っているだけだと己に暗示をかけて。


 その後行った春日大社では、しっかりと神様に鹿の躾をお願いしてきた。
 可愛い鹿おみくじもあって、昨日までの私だったら飛びついただろうけど、先程受けた鹿襲撃の心の傷が癒されていないので、可愛い木彫りの鹿ですら剣呑な目で見てしまう。
 しかしみんなが可愛いとはしゃいで買っているので、私も一緒に買ってみる。
 引いたおみくじは吉。またビミョー…。


 鹿襲撃事件で唯一良かったことは、なんとなく周りの子達との距離が縮まった気がすること。
 徐々に取り巻きじゃなく、友達になれたらいいな。
 まずはさりげなく、友達アピールをしてみた。

「さっきは本当にありがとう。やっぱり持つべきものは友達ね」

 みんなは嬉しそうに笑った。
 もしかしたら、もうとっくに友達だったのかな?


 だが、鹿襲撃事件以来、鏑木とすれ違うたびに、ヤツの肩が震えている。
 きぃーーーっ!!
 これはもう、優理絵様へのチクり決定だ。
 今のうちにせいぜい笑っているがいい。
 東京に帰った時、泣くのは貴様だ。



 葵ちゃんと蕗丘さんにはお土産に、京都の老舗旅館が出している石鹸と、可愛い金平糖を買ってきた。
 安易に八つ橋やあぶら取り紙を選ばないところに、私のおしゃれセンスがきらりと光るね。
 蕗丘さんは秋澤君に、縁結びの神社でおそろいの恋愛成就のお守りをあらかじめ頼んで買ってきてもらったそうだ。
 秋澤君には、おそろいの恋愛成就のお守りをあげる相手がいるんだと、瑞鸞の女子生徒を牽制する意味もあったらしい。
 さすがです、蕗丘さん。
 お兄様には交通安全のお守りを買ってきたのに、車のミラーにぶら下げてくれなくて少し不満。
「さすがにそれはちょっと…」って、どうして?


 鏑木は優理絵様に迷惑をかけないように、もっと周りの子達に注意しろと怒られたらしい。
 ざまーみろ。うきゃきゃきゃきゃ。
 すると後日、優理絵様⇒愛羅様経由で1枚の写真が渡された。
 それは私が鹿の群れに襲われてボコボコにされている写真だった。
 愛羅様には「大変だったわね。これを見て優理絵も驚いていたわ」と同情されてしまった。

 うきぃーーーーーっ!!
 許すまじ!!

+注意+
特に記載なき場合、掲載されている小説はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている小説の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による小説の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この小説はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この小説はケータイ対応です。ケータイかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。
小説の読了時間は毎分500文字を読むと想定した場合の時間です。目安にして下さい。
↑ページトップへ