挿絵表示切替ボタン
▼配色







▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる
謙虚、堅実をモットーに生きております! 作者:ひよこのケーキ
しおりの位置情報を変更しました
エラーが発生しました

ブックマークしました。

設定

更新通知 0/400

設定を保存しました
エラーが発生しました

カテゴリ

ブックマークへ

以下のブックマークを解除します。
よろしければ[解除]を押してください。

ブックマークを解除しました。

202/299

202

 空メールには、10通を超えた時点で返信をした。なんだろう、何も書いていないのに空白から怒りをひしひしと感じた。画面いっぱいに“怒”という幻が見えた。怖い。“移動中で気づきませんでした”と言い訳をしてしまう、小心者の私。
 後日鏑木から文句を言われたら、恋には忍耐力が大事なのだ。これは私からの試練なのである。とでも言ってみよう。何事も自分が最優先されると思ったら大間違いだ、鏑木め!
 しかし、常に連絡が取れる状態になってしまったのは痛い。あんまり頻繁に連絡がくるようなら、水没させてしまおうか。車に轢かせてしまおうか…。




 私の、蔓花さんが自分達の悪事の濡れ衣を私に被せて犯人にしようとしたという情報操作は、思いのほか上手くいった。
 私と同じグループの子達が、先陣を切ってこれみよがしに私を庇う噂をばら撒けば信憑性がないけど、私とは普段グループの違う手芸部の子達や、美波留ちゃんや野々瀬さん達のようなクラス委員をやるような真面目な子達が、「麗華様が犯人扱いされて可哀想…」「麗華様が誰かに嫌がらせをしているのなんて見たことないわ」「偶然その場にいただけであんなに非難されるなんて酷い…」「どうして麗華様が疑われないといけないの?」と同情票を集めてくれた。
 そのあとで芹香ちゃん達が「麗華様は罠にはめられたのよ」「誰に?」「この前麗華様に女王の座を取って代わると宣戦布告してきた人達にでしょ」「ええっ、あの人達そんなこと言ったの?!」「被害者の高道さんは、犯人は麗華様ではないと断言したけど、誰かさん達の仕業ではないとは言わなかったわねぇ。それがすべてじゃない?」と噂の上塗りをして回った。
 いやぁ、日頃の行いって大事だねぇ蔓花さん。おかげ様でほとんどの人達があれは蔓花さん達が私を陥れるために謀った出来事で、私は無実だと信じてくれたよ。
 そして私のグループも団結力がなんだか強まった気がする。仮想敵を作ると集団は纏まるって本当だね。
 結局誰が犯人だったかはわかっていないけど、あの日のロッカー事件以来、若葉ちゃんへのそういった嫌がらせは止んでいるようなので、ひとまず安心。このまま平穏に3年に進級できればいいなぁ。



 ふんふんふんと、機嫌よくサロンでお茶を飲んでいたら、円城がやってきた。

「吉祥院さん、明日のホワイトデーなんだけど、雪野がお返しのお菓子を渡したいらしいんだ。少しでいいから時間を作ってやってもらえないかな」
「まぁ、雪野君が?!嬉しいですわ!」

 もうすぐ春休みだから、その前に私もプティの子達の顔を見たいと思っていたのだ。

「でも初等科はもう短縮授業ですわよね?雪野君と時間が合うかしら」
「それなら大丈夫。最近あいつはプティのサロンに吉祥院さんが誕生日に持ってきてくれたゲームを持ち込んで、みんなで遊んでいるらしいから」
「あら」

 お茶を飲み、お菓子を摘まみながら優雅に談笑するプティピヴォワーヌのサロンが、児童館のようになっちゃった?

「たぶん雪野は吉祥院さんにも一緒に遊んで欲しいと言うと思うけど、吉祥院さんにも予定があるだろうから、適当に断っていいからね」
「予定?」

 私の予定はいつも通りだけど。あぁ、ホワイトデーだから忙しいでしょうという気遣いですか?なんの予定もありませんが。

「そういう円城様は、ホワイトデーはデートでしょうか?」

 と軽口を利いてみたら、「ま、そんなとこ」という返事が返ってきて、ちょっとびっくり。そしてなにやら敗北感。
 へー、ホワイトデーにデートですか。…けっ!楽しそうでよろしゅうございますわねー。デートの予定なんて全くない私は、プティにトランプやかるたを持ち込んで遊びまくったる!





「麗華お姉さん、いらっしゃい!」

 プティは私の癒しの楽園。そして迎えてくれるのは雪野君をはじめとする可愛い子供達の笑顔。あぁ、ほっこり。

「麗華お姉さん、これどうぞ」
「まぁ、ありがとう、雪野君」

 雪野君に渡されたホワイトデーのお菓子は、瓶に入った可愛いラスク。おいしいよねぇ、ラスク。私も大好き!サクサク口当たりが軽くて何枚でも食べられちゃう。
 せっかくなので開封して1枚いただく。うん、おいしい!

「甘くてとってもおいしいですわ。素敵なお菓子をありがとう」

 雪野君は隣でふふっとはにかんだ。天使!
 でもラスクは口当たりは軽いのにカロリーは高い。食べ過ぎに気を付けないとね。
 それから私は、雪野君や麻央ちゃん達と春休みの予定などを話した。今年の春休みは、私は春期講習や耀美さんのお料理教室の予定などが入っている。


 耀美さんには何回かお料理を教えてもらった。基本中の基本である野菜の切り方やだしの取り方などを、バカにせず優しく教えてくれるから、私も素直になにもわからないと言いやすくて、耀美さんにお願いして良かったなぁと思ってる。
 とにかく今はレシピ通りにお料理を作る練習をして、基本をマスターしたら徐々に自分の味を追求していこうかな。“恋に効く、Reikaのキューピットレシピ”としてネットに投稿すれば人気が出るかも。まずは肉じゃがで男性の胃袋を掴む、と…。

「いいなぁ。麗華お姉様、私も行っちゃダメですか?」

 私が春休みに耀美さんにお料理を習うと話したら、麻央ちゃんにおねだりをされてしまった。確か麻央ちゃんは前に話した時も、興味がありそうだったもんね。

「そうね。耀美さんに了承を得てからですけど、私の家で習う時には1度遊びにいらっしゃる?」

 麻央ちゃんが嬉しそうに歓声をあげた。
 可愛い麻央ちゃんのお願いを、私が断れるものですか!私の拙い包丁使いを見られるのは厳しいけど、野菜の皮むきはピーラー使えばいいし、最近は地道な練習の成果か、耀美さんにもよく褒められる。「千切りが上手になりましたね、麗華さん」「麗華さんは熱心だから教え甲斐があります」「盛り付けのセンスがとっても素敵」と、毎回褒められると、益々調子に乗って頑張りたくなっちゃう私の性格に、耀美さんは相性ぴったりな先生だと思う。

「ねぇ、麗華お姉さん。ゲームして遊ぼ?」

 雪野君が私の腕を軽く引っ張って誘った。おお、そうでした!
 見ればサロン内のあちこちで子供達が、ジェンガやボードゲームやトランプで遊んでいた。なんだか本当に高級な児童館状態じゃない?
 最初は和やかに坊主めくりや神経衰弱などをして遊んでいたけれど、トランプのスピードのルールを教えた頃から、私の前世のスピードの女王の血が蘇り、子供相手に本気の勝負をしてしまった。大人げないと本当に反省したけれど、全戦全勝だった。高学年の男の子達は悔しそうだった。精進なさい。





 春休みまでの残り少ない日数を、トラブルなく過ごしたいという私の願いはあっけなく崩れ去った。
 私の情報操作で完全に分が悪くなった蔓花さん達が、食堂で私達にケンカを売ってきたのだ。

「麗華様って本当に怖いわよねぇ。自分のやったことを平気な顔で私達のせいにするんだから」
「なにを言っているのよ。麗華様を陥れようとしたのはそっちでしょう?!」

 芹香ちゃん達が応戦した。ええ~っ、こんなところでやめようよぉ。
 蔓花さん達と芹香ちゃん達が舌戦を繰り広げていると、生徒会の女子が「静かにしてください」と文句を言いにきた。

「はぁ?外部生が偉そうな口を叩いているんじゃないわよ」

 蔓花さんが生徒会の子を思い切り睨みつけた。

「外部生とか内部生とか関係ないでしょう。私は生徒会役員として」
「生徒会役員だからなんだっていうのよ。たかが生徒会が」

 蔓花さんにせせら笑われたその子は、顔を真っ赤にして怒った。
 口ゲンカはヒートアップし、生徒会を交えた三つ巴の様相を呈してきた。やめようよぉ。ほら、周りから注目されているから落ち着いて!目立ってるから!

「麗華さん、どうしたの!」

 そこへ璃々奈が、おうおうおう、どうしたどうした、といった態度で手下を引き連れのっしのっしとやってきた。
 この期に及んでさらに面倒くさいのがきたーー!
+注意+
特に記載なき場合、掲載されている小説はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている小説の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による小説の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この小説はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この小説はケータイ対応です。ケータイかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。
小説の読了時間は毎分500文字を読むと想定した場合の時間です。目安にして下さい。
↑ページトップへ