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いつかの誕生日

作者: 佐方仁優

今日の夕方に仕上げた、マンゴームースのケーキを冷蔵庫から取り出して、ケーキにゆるくかかっていたラップをそっと外す

ほんとはカットしてお皿に乗せる、という行為をしたほうがいいって、わかってる

でもしない、めんどうっていうだけじゃなくて

ほんとは今夜来る友達と食べる為に作ったケーキだから

一人でひっそり食べるなんてなんかキツい

それならはじけてしまえ、と大きいフォークでつやつやに輝くマンゴーをさして口をあけた


すると携帯の着信音

彼からの電話

すぐに取りたいけど、でも、なんか気持ちがささくれだってるから、とりたくない

食べ損なったマンゴーをケーキにそっと戻して、フォークをテーブルに置いて、一息、ついてから取る


「今、大丈夫?」


「うん、仕事もう終わったの?」


「いや、まだ会社、友達、きてるんだっけ?」


「・・・う・・・ん・・・」


すごい、言いにくい、だってなんか惨めだし、それになんか気を使うよね、きっと

ソファに座り込む


「ん?どした」


「友達、今日、残業言われて・・・」


「・・・そっか、大丈夫か?」


「なんで?大丈夫だよ、残業は友達だって、私はここでのんびりしてるよ」


「ごめんな」


あ、やっぱり気を使わせてる、この後のセリフの続きは・・・


「俺、そばにいられないから寂しい思いさせてるよな」だ


「・・・俺、そばにいられないから寂しい思いさせてるよな」


ビンゴ、罪悪感持たせてしまった

一瞬の間・・・暗い・・・ダメ、こういうの


「な~に言ってんの?今だって仕事中なんでしょう?近くにいてても会えてないじゃん」


「・・・ほんとだな」


浅く笑う声、そういうときの彼の少し歪んだ顔が目に浮かぶ


「でも、電話うれしい・・・遠距離になるからって、あの時、別れてたら、今こうやって話してないわけだし」


「うん」


ちょっと甘くなった彼の声・・・うれしさが胸にしみこんで行く


「それに、こういうのめんどうになったら、すっぱり別れるつもりだったけど、残念なことに、大好きな気持ちが勝っちゃって・・・仕方ないよね」


なんて、更に本音をこぼしてしまう


そんな私の気持ちを知ってか知らずか、


「別れててもお前の誕生日には電話してたよ、たぶん」って軽くいう彼の声


「やさしいじゃん」


「わかってないな、誕生日に新しい彼氏といたら、そいつに牽制するためだよ、誕生日に前の彼氏から電話なんてかかってきたら、ラブラブな雰囲気一瞬で壊せるだろ?」


相変わらずおまえは単純だよな、って満足そうな声でいう


そこまでは思いつかなかったわ、私も・・・


ピンポーン

急に大きな音がリビングに響く

あわてて電話をもちながら玄関に向かう


「あっ友達来たみたい、仕事終わったんだ、きっと」


「そっか、じゃ俺も仕事戻るわ、じゃあな」


「うん、ありがとね」


そういって、電話を切ってから、

ドアを開ける


明るい雰囲気をまとった女友達が

居間までのしっとりした空気を変えた


「ごめんね~、遅くなっちゃって」


「ううん、こっちこそ、忙しいのにごめんね」


「仕事終わってから電話したんだよ、ずっと話中だったけどぉ」


「あっごめん」


なんて、会話をしながら居間に移動して


「彼氏でしょう~相変わらず仲いいよね~わぁ~おいしそうマンゴーケーキ!」


「ごはん、もう食べた?実はフライドチキンとかおにぎりとかもあったりして・・・」


「やん、めっちゃ素敵~」


って、歓声をあげる友達

こういう雰囲気、懐かしいな、ついこの間までお誕生日のお祝いって女友達とするもんだったものね


今夜はいっぱいおしゃべりしようね、なんていいながらフライドチキンをかぶる友達と楽しい時間


彼のことを話しながら彼のいない寂しさを忘れられる時間


ありがとうね・・・



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