ブラック・ボックス
悪夢を見ていた。
視界がぶれて、脳内を駆け巡る黒々とした稲妻が、 精神疾患を引き起こす前に、生み出した僕だけのブラック・ボックスで怯えながら膝を抱えて座っていると、徐々にその空間は小さくなっていって、息が苦しいくらいに圧迫された時には、僕はその圧迫感すらも救いに感じるようになって、このまま押し潰されて、血と肉の塊になって、誰かに食べられて、誰かの血肉として働きたい、そんな事を考えると無性に楽しくなって、汚い笑い声が漏れてしまって、そんな自分が気持ち悪いと感じて、その時、まだ自分には理性があるのだと気付いて、そして初めて僕は、収縮する壁を押し返していて、壁はとても重くて、決して楽では無い作業なのに、なぜかそうなった時には、僕はまだ生きたいと思ってしまっていて、結局完全に押し返してしまうと、その後、また何もなく薄暗い空間に、明日も空虚な現実が待っていることを突き付けられて、僕は疲労感からあまり考えられず、ぐったりと横たわって、そのまま夜を明かして、起きた時には、汗がぐっちょりと衣服に染みていて、気持ち悪さで僕は這いずり回って、ああーっ、と奇声をあげてみても、虚しくなって、僕はずっと白痴のように布団で悶えながら、自分の五臓六腑をあちこちに散布してやりたくなって、そんな妄想をしていると、結局小一時間ほど経って、落ち着いたら、また仕事に向かう時間がやってきて、僕は現実に戻って、また人間に擬態して、社会を生きていくのであった。
仕事は楽しい。
周りみんな、普通の人間だから。
仕事を終えて帰ってくると、僕のマンションは無くなっていて、代わりに真っ黒な建物に変わっていたが、僕は戸惑うことなく今朝までマンションだったものの階段を登って、僕の部屋があった場所のドアを開けると、そこは暗闇だった。
ブラック・ボックス。
僕は首を吊ろうと思った。
首が吊りたくて吊りたくて、仕方なくて、だけど暗いからやり方が分からなくて、首を掻きむしっていると、首の皮が剥がれて、その皮を食べると塩っ辛くて、そこで初めて僕はまだ味を感じる理性が残っている事に気付いて、そしてまた生きたいと思ってしまって、夜を明かして、起きた時には顔から血の気が引いていて、気持ち悪くて僕は這いずり回って、ああーっ、と奇声をあげてみても、虚しくなって、布団の生地をブチブチと千切っていると、自分の目玉も抉り取ってやりたくなって、転がり落ちた目玉の妄想をしていると、また小一時間ほど経って、落ち着いたら、また仕事に向かう時間がやってきて、僕は現実に戻って、
また人間に擬態して、
社会を生きていくのであった。




