第94話 一難去ってまた一難?
翌朝。
ルクスは徒歩で王城に向かった。
ちなみに、ベネディクトゥスの授業はしばらく無しになっている。皆、学園で授業を受けているので、今のところ必要ないとベネディクトゥスが判断したためだ。
「おはようございます」
ルクスは貴族街の門番に声を掛けた。
「おはよう、どうしたんだい?坊や」
「えっと、用事があって。これで中に入れますか?」
ルクスは国王から貰った金のメダルを門番に見せた。
「!!もしや、貴方は、フォルティス伯爵ですか……?」
「あ、はい。印章も見せた方が良かったですね」
と言ってルクスは指輪型の印章を門番に見せた。
「見せていただき、ありがとうございます。王城までご案内いたします」
門番はもう片方の門番に門を任せて、ルクスを王城に案内した。
そして、王城の門番と一言二言話すと、王城の門番はすぐに近くを通った騎士に声を掛けた。
近くを通った騎士がルクスを案内してくれることになった。
王城までルクスを案内してくれた門番に礼を言いつつ、ルクスは騎士の後を追った。
(一応、道は覚えているんだけど、俺が勝手に動き回ったら不審者?だしな)
ルクスは大人しく騎士に案内され、国王シリウスの執務室にやってきた。
「失礼します。フォルティス伯爵がお越しです」
騎士がノックして、そう告げた。
「どうぞ」
シリウスらしき声が聞こえた。
騎士は扉を開けて、ルクスに中に入るよう、促した。
中に入ると、シリウスが執務机で書類と格闘しているのが見えた。
「失礼します」
「よく来た、ルクス殿。こんな状態で迎えてしまい、すまないな」
「いえ、俺こそ、連絡もせずに来てしまい、すみません」
「良い良い。いつでも来るようにと、私が許可したのだから」
「……ありがとうございます、陛下」
「さて、ルクス殿、何か私に伝えたいことがあるようだが?」
「はい、まずはこれを」
ルクスは暴れ馬の重要書類と暴れ馬の報告書をシリウスに渡した。
「こちらは、クラン暴れ馬と第一騎士団の癒着の証拠です。こちらは暴れ馬に関する資料です」
「ふむ……癒着とは、穏やかではないな。確認しよう」
シリウスは癒着の証拠に目を通した。
「……少なくとも第一騎士団の幹部と冒険者街の憲兵たちは癒着しているようだな」
第一騎士団の幹部の殆どは貴族に連なる者だ。平民上がりの騎士は殆ど関与していない。
ちなみに第一騎士団は王国所属の騎士団だ。王国所属の騎士団は他にも三つある。近衛騎士団、ここは言わずもがな、王族の警護などを業務としている。第一騎士団は王都の警備や王都周辺の魔物討伐を業務としている。第二騎士団は王領の警備や魔物討伐を業務としている。第三騎士団は王国各地に遠征し、魔物討伐を行っている。
この四つの騎士団がアルヒ王国を守っている。
見分け方だが、主に騎士服の色を見ると良いだろう。
近衛騎士団は白、第一騎士団は赤、第二騎士団は青、第三騎士団は黒だ。
鎧を着てしまうと一般の騎士は見分けがつかないが、副団長や団長は騎士服と同じ色のマントを纏っているので、マントを見れば分かる。
「はい」
「この件は私が預かっても良いかね?」
「ええ、勿論です」
「ありがとう。この者たちが逃げぬよう、秘密裏に探らせよう」
「よろしくお願いいたします」
「またルクス殿に助けられてしまったな。何か望みはあるかな?」
「そう、ですね……特にはありませんが……」
「遠慮するな」
「……では、もしかしたら、将来スタンピードが王都を襲うやもしれません。ですから、兵力の増強に力を入れて欲しいです」
国王シリウスは目を丸くした。
「スタンピードか……十年くらい前に他国でも起こったらしいから、我が国でも起こる可能性はある。兵力増強は構わないが、本当に将来、王都にスタンピードが来るのかね?」
「確証はありませんが、俺は起こることを知っています」
「知っている……面白いな、ルクス殿は。よし、兵力増強大いに結構。だが、普通に増強しても面白みがないだろう。そこでだ、ルクス殿にも兵力増強を手伝って貰おうかな?」
「はい?」
「名誉元帥ではなく、ルクス殿には第零席元帥となっていただく。そして、期間限定……そうだな、一年のみ、第一騎士団の顧問になっていただこう」
「ええーー!?」
「勿論給料は出すし、学問の時間は存分に取って構わない。ただ、いずれは他の元帥と顔合わせをしたり、第一騎士団の顧問として、騎士たちを強化してくれると有難いな」
「俺でなくても他にいるのでは……?」
「ルクス殿は他の元帥よりずっと強いと元帥の中でも切れ者の第三席が言っておった。強くなるには一等強い者から教わるのが近道だ。だから、ルクス殿に頼みたい」
「……分かりました。けど、俺は学生ですから、学問とかやりたいことを優先させていただきますよ?」
「構わんよ。まずは第一騎士団の幹部を粛正してからだな。粛正が終わったら、頼んだぞ、ルクス殿」
「……はい」
ルクスは項垂れ、シリウスに挨拶して、部屋を出た。
「大丈夫でしょうか?フォルティス様は」
控えていた侍従が心配そうにルクスの去っていった扉を見ていた。
「問題ないだろう。全力で役目を果たして欲しいとは言っておらぬしな」
「それはそれで、兵力増強が叶わなくなりそうですが」
「いや、ルクス殿が、ほどほどに役目を果たしたならば、それは、普通の者からすれば、完璧に役目を果たしたように見えるだろう、と私は思う。彼は規格外だからな」
「そう、なんですね……」
紅茶を淹れて参ります、と言って侍従は奥の部屋に入っていった。
「私は期待し過ぎているのかもしれない、だが、あの若者に期待せずにはいられないのだ……」
シリウスは窓の外に広がる青空を見上げた。
それから二週間が経った冠月二十三日。
第一騎士団の幹部三名と冒険者街の憲兵、そして、クラン暴れ馬の団長および団員が捕らえられた。
罪状は収賄罪や贈賄罪、人身売買罪、恐喝罪、暴行罪、強制猥褻罪など多岐に渡る。
幹部三名と憲兵と暴れ馬たちは全員、奴隷として北の辺境の鉱山に送られることとなった。
極寒の大地で鉱山夫として一生逃れられない労働に従事することになる。
それに伴い、騎士団の人事も発表され、王城の人々は慌ただしく動いていた。
これで一件落着したなとルクスがのんびり屋敷で寛いでいると、屋敷にルクス宛てで国王からの使者がやってきて、『第零席元帥』と『第一騎士団顧問(期間限定)』に任命する書類を渡された。
そして、補佐官として、アレクサンダー・クラウリーが派遣されてきてしまった。
アレクサンダーは十二歳の見習い騎士で、ジョブも騎士。外見は黒髪に黒い瞳を持っている美少年だ。
「その、君はアルイスター・クラウリーさんと何か関係があるの?」
「ああ、アルイスター・クラウリーは僕の叔父です」
「なるほど……(シナリオにはいなかった気がするけど……そうか、騎士見習いじゃ、プレイヤーと関わることもないだろうし、描かれなくても仕方ないか)」
「叔父を知っているんですか?」
「ああ、アルイスターさんはお店をされているよね、俺はその店の客なんだ」
「へえ!あの変な店によく行く気になりましたね」
「(アルイスターさんが聞いたら怒りそうだな)あー……、商品のクオリティが高いからね、あと、良い店だと、思うよ?」
「良い店ですかね?合言葉を知らないと行けない店なんてどうかしてると思いますけど」
「あはは……(ハッキリ言うな、この子)」
「でも、フォルティス閣下と共通の知り合いがいて、僕、嬉しいです」
「えっと、フォルティス閣下は止して欲しいな。俺のことはルクスと呼んでくれ」
「じゃあ、ルクス様とお呼びします。僕のことは如何様にも」
「え、……はい。じゃあ、君のことはアレクサンダー君と呼ぶよ」
「ありがたき幸せ」
アレクサンダーは微笑んだ。
「あと、敬語はなしにして欲しいんだけど……」
「それは難しいかと。私はルクス様の補佐官ですので」
「うん……分かった。話は変わるけど、アレクサンダー君は今、何レベル?」
「三十一レベルですね」
「そう……じゃあ、レベリングしようか」
「れべりんぐ?」
アレクサンダーはきょとんとしていた。
夏休みの後半、ルクスはアレクサンダーとレベリングを頑張り、アレクサンダーのレベルは七十五になった。
アレクサンダーは神殿で貰ったレベル証明書を手にし、呆然としていた。
こうしてルクスの夏休みは終わり、二学期が始まった。




