第9話 どんどこ強化
翌朝。
寝惚け眼のアランとバートを追い立てつつ、顔を洗い、歯磨きして、寝癖を整えたルクス。
二人が朝の準備をするのを横目で眺めつつ、隙間時間を使って、セフィラを強化すべく、セフィロトを起動させる。
アイテムボックスから虹の雫を取り出して、どんどこ強化していった。
ルクスが全てのセフィラを+5まで上げた所で、バートに声を掛けられる。
「ルクス?朝ごはん、食べに行こう」
「ああ、分かった」
ルクスはセフィロトを消して、アランとバートについていく。
一階では、ベネディクトゥス親子が既に席を取っていた。
ベネディクトゥスがルクスとアラン、バートに気付くと、軽く手を上げて笑顔を浮かべた。
ルクスも軽く手を上げて微笑む。アラン、バートは元貴族であるベネディクトゥスに対して恐縮しているのか、お辞儀をした。
「席を取ってくれて、ありがとう。ベネディクトゥス」
「いいえ、これもルクス様の配下である私の務めです」
「大袈裟だなぁ」
ルクスは苦笑しつつ、二人と共に朝食を注文した。
「昨日の買い物については、軽くしか聞けなかったから、詳しく聞いても良いかな?」
「勿論です。昨日は【古着屋レーギ】で、全員の普段着をそれぞれ二着ずつと、寝間着を二着ずつ、下着を二組ずつ、鞄を一つずつ、靴を一足ずつ、女性用の用品などを購入しました。お昼御飯もいただいたお金を使わせていただきましたが……」
「それは大丈夫。言ってなくて、ごめんね」
「いいえ、主人の意図を正しく汲めたのであれば、これ以上ない誉れです」
「……大袈裟だね」
ルクスは困ったような表情を浮かべ、頬を掻く。
「大体昨日の動向は分かった。ありがとう。俺の服は後で貰うとして、今日についてだけど、ベネディクトゥスには、この古代金貨五枚を買い取ってもらいに行って欲しい。店はゼンイ商店が良いね」
「!!こんな、大層な品を……流石です、ルクス様」
「いや、偶々拾ってね……(腐る程あるって言ったら崇め奉られそうだな。今度から、こっそり売ろう)」
「いただいたお役目、しっかり果たします」
「うん……(ベネディクトゥス、最初は普通だったのに、忠誠心?が深まってる気がする)」
「アラン君とバート君はお留守番でしょうか?」
「そうだね、午前中は俺と一緒にある事をして、午後は自由時間にするつもり。俺は午後、ある場所でやることがあるから午後はいない。ベネディクトゥスの買取は午前中で終わるだろうから、午後はアランとバートと合流して自由時間で」
「かしこまりました」
話している内に朝食が運ばれて来る。
本日の朝食は、野菜スープ・サラダ・オムレツ・パンのセットだ。
食前の祈りを捧げ、一行はしっかり咀嚼して、食べる。
「さて、食べ終わったかな?」
暫くして食べ終えたルクスは全員の皿が空っぽになっていることを確認すると、席を立った。
「じゃあ、ベネディクトゥス、よろしく」
「仰せのままに」
「アラン、バート、行こう」
「おう」
「うん」
彼等は別れてそれぞれの目的地に向かう。
ルクスはアラン、バートと共に宿泊部屋に戻った。
「んで、なにするんだ?ルクス」
アランがルクスに問う。
「これを使おうと思ってな」
ルクスはベッドの上に大量の虹の雫を載せた。
「なんだこれ?」
「うわぁ、綺麗だね、なんだろう、ポーション?」
「これは、虹の雫。セフィロトを強化するためのアイテムだ」
ルクスはセフィロトを出して、十八本の虹の雫を使った。十八本の虹の雫により、セフィラがプラス六になる。
何故、十八本必要なのかといえば、レベルを六にする為には十八本の虹の雫が必要だと決まっているからだ。
セフィラのレベルが上がる度に要求本数が上がっていく。
セフィラをレベル十にするには、合計二百二十七本の虹の雫が必要だ。
「消えた」
「わあ」
「じゃあ、アランとバートもセフィロトを出して、強化しよう」
「ああ」
「うん」
アランとバートはセフィロトを出そうとして、止まった。
「どうした?」
「あ、いや」
「えっと、僕達、セフィロトを出す為の呪文、覚えてない」
「あー、はい、じゃあ、復唱するように。……【生命は数という神秘でできている】」
「「【生命は数という神秘でできている】」」
二人のセフィロトが出たようだ。
「じゃあ、適当な虹の雫を手にとって強化するように」
以上、と言って、ルクスはセフィラやパスをどんどん強化していく。
アランとバートは顔を見合わせ、頷いて、虹の雫を手に取り、強化し始めた。
アランとバートが強化を終える頃、素早く強化していたルクスも強化を終えた。
正しくは虹の雫をほぼ使い果てた。
セフィラ十個は全てレベルMAXに、二十二本のパスは九本をレベルMAXにしている。
「プラス十まで強化できた?」
「おう」
「うん」
「表示はMAXになってる?」
「ん?俺は『限界点』って書いてある、ように感じる」
「僕も」
「ふぅん……(人によって表示が変わるのか……その人が最も分かりやすい表示になっているのかもしれない)」
ルクスは納得して頷いた。
「じゃあ、ちょっと早いけど、俺は用事を片付けてくる。アランとバートはベネディクトゥス達と合流するために食堂にいて欲しい。これ、軍資金な。みんなで使ってくれ」
ルクスはバートに大銀貨二枚を渡した。
「おう……分かった」
「うん……頑張る」
ベネディクトゥスの名を聞いて暗い表情を浮かべた二人にルクスは首を傾げた。
「なんかあった?」
「いや、なんというかベネディクトゥスさんって笑顔なのに怖くてさ」
「うん、笑顔で怒ってるよね」
「え、怒ってたのか?」
「アラン、気付いてなかったの?」
「つまり、二人はベネディクトゥスを怒らせることをしたんだ?」
二人はルクスの言葉に気まずそうな表情で頷いた。
「ちょっと騒ぎすぎたというか」
「うん、初めて街を散策したものだから、はしゃぎ過ぎたね」
「はぁ、まだ、子供だからな」
「「ルクスだって子供だろ(でしょ)」」
「う……まあな」
三人は顔を見合わせて笑い合った。
「じゃあ、ルクスは用事に行ってきなよ。僕らは二人で大丈夫だから」
「そうそう、俺達子供だけど、しっかりしてるからな」
「本当か〜?……分かったよ。じゃあ、行ってくる」
「「行ってらっしゃい」」
二人に見送られ、ルクスは部屋を出て、眠り猫亭から表通りに向かう。




