第87話 入試結果と新たな屋敷
無限月(二月に相当)十日。今日は学園の入試結果発表の日だ。
ルクスたちは厳月(一月に相当)十日にちゃんと、入試を受けているが、結果次第では通えない者が出る可能性もある。
緊張しつつ、彼らは、受験票を持って学園にやってきた。小妖精の二人と神龍のルベウスたちはお留守番だ。
掲示板に貼られた結果を彼らは祈るような気持ちで見上げた。
「あ、四十位に俺の番号がある!」
アランが声を上げた。
「私は三十位」
クラーラが頬を紅潮させ、喜び、アランに抱き着いた。
「僕は十一位だ!」
やった、と言ってバートはガッツポーズした。
「私……平民枠の一位になってしまいました……」
ラエティティアは思ったより良い成績で喜んでいいのか、戸惑っている。
「凄いね、ラエティティア」
「えっと、ありがとうございます。ルクス君」
ルクスがラエティティアの頭を撫でると、ラエティティアは微笑んだ。
「ルクスは、貴族枠だから、こっちだよな?」
アランが隣に張り出された結果に目を向けた。
「うん……あれ、かな?」
「凄いじゃん!二位だよ!ルクス」
「はは、ありがとう、バート」
ルクスは気になって一位の名前を確認した。
「あ、一位はシルウェステルか」
アランが呟いた通り、一位はシルウェステルだった。
「流石、王子様だねー」
バートは感心したように見上げている。
「レヴァナちゃんは三位ですね」
ラエティティアがそう言ったので、ルクスは自身の名の下を確認した。
三位にレヴァナがいた。
名前がレヴァナ・フォン・リーデルシュタイン=ローデンヴァルトとなっている。
「レヴァナちゃん、貴族なんだ」
クラーラは吃驚したように呟いた。
「知らなかったな」
アランが共感したように頷いた。
「シルウェステル君のことだから、レヴァナさんと結婚できるように手を回したんだろうね」
ルクスはそんな考察を口にした。
「うわー、ありそう。流石、レヴァナさん大好きなだけあるね」
バートは苦笑した。
「じゃあ、皆、合格ってことだな」
アランはにかっと笑った。
「そうだね」
「良かったー」
バートがほっと胸をなでおろす。
「じゃあ、帰ろっか」
「「おー」」
「うん」
「はい」
五人は帰路に着いた。
光月(三月に相当)七日。ルクスの元に一通の手紙が届いた。
差出人は商人ギルド不動産部のアルノー・バルテルだった。
「もしかして……」
ルクスは封蝋が押された封筒を開けて、中の手紙を確認した。
手紙には、屋敷が完成したので、商人ギルドに来て欲しいという内容が書かれていた。
ルクスは大勢で商人ギルドに押し掛けるのも良くないと思い、ベネディクトゥスと自由気ままのリーダーのエドヴィンと、風任せのリーダーのフランツと、人それぞれのリーダーであるアガーテを呼んで、彼らと共に商人ギルドに向かうことにした。
受付にいる職員に事情を話すと、すぐさまアルノーがやってきた。
「ルクス様!お待ちしておりました。こちらへどうぞ」
アルノーはルクスたちを会議室に案内した。
全員が席に座ったのを確認したアルノーは、懐から革袋を取り出し、ルクスに渡した。
「ルクス様、お釣りの大金貨五枚と金貨三枚です」
「あ、ありがとうございます」
ルクスは大金貨五十枚を先払いしていたので、これはそのお釣りだ。
「それから、今回ご依頼いただきました屋敷の鍵と購入証明書、不動産所有証明書、物件概要書、土地所有証明書となります。鍵は多くの方が使用されることを想定して、十本ご用意しております」
「確かに、頂戴しました」
ルクスは受け取った資料や鍵をアイテムポーチに入れた。
「それと、門扉は魔導具になっておりまして、登録されている方以外は入れないようになっております。これから、皆さんを登録しますので、ご一緒していただいてもよろしいでしょうか?」
「「はい」」
一行は、アルノーに連れられ、商人街の一角にある屋敷にやってきた。ちなみに住所は商人街(南東区)七番地八号だ。
市民街の神殿に勝るとも劣らない荘厳な屋敷だ。周りを囲む柵は白亜の屋敷の雰囲気を損なわぬように金色だ。もし、純金が使われていたら、盗もうとする不届き者が出るかもしれない。
「え、バルテルさん、この柵って……」
「勿論、純金でございます」
「……誰か盗もうとしませんかね?」
「大丈夫です。誰も柵に純金を使うなどと思う者はいないでしょうから」
「あはは」
「では、門扉の魔導具に皆様を登録しましょう」
アルノーは門扉を開いて、中に全員を招いた。そして、門扉の横に付けられた魔導具を操作して、ルクスたちを登録していった。
「職人街の屋敷にも付けた方が良いかな……」
「あのお屋敷には結界が張られていて、悪人は入れない効果がありますよ」
アルノーの言葉にルクスは目を丸くした。
「え、そうなんですか?」
「はい、すみません、伝えてなかったようですね。私のミスです……」
アルノーはかなり落ち込んでいる。
「だ、大丈夫です。知らなくても生活に支障はなかったですし」
「申し訳ありませんでした。今後はより一層、気を付けていきます」
アルノーは深く頭を下げた。
「そんなに気にしないでください」
「ルクス様……ありがとうございます」
「いえいえ。その、今回の物件については以上で、問題ないですか?」
「はい、大丈夫です。ありがとうございました。もし、今後も物件がご入用になりましたら、ご相談ください。私のできる最大限のサービスを提供できるよう、尽力致しますので」
「ありがとうございます。そのときはよろしくお願いします。では」
「はい、では、失礼しますね」
アルノーは自分の登録を外して去っていった。
「じゃあ、皆、他の皆の登録もするために一旦、職人街の屋敷に戻ろうか」
「「はい」」
ルクス一行は職人街の屋敷に戻った。
そして、屋敷にいる全員を集めた。
「えーっと、商人街の屋敷……クラン【自由の翼】の本部にしようと思ってるんだけど、その本部ができたので、本部とこの屋敷でメンバーを分けようと思ってます。職人街の屋敷は黄金の導と追い風の住まいにします。本部は自由気まま、風任せ、人それぞれで仕切ってもらいたいです。リーダーはエドヴィンにお願いしたいです。因みに、エドヴィンは今日から副団長です」
「ええ!?」
エドヴィンが抗議するように声を上げたが、ルクスは話しを続けた。
「使用人は半分くらい本部で働いてもらいます。人選はベネディクトゥスに任せます」
「え、あの神殿みたいなところ、本当に住めるんですか?」
中を見ていないので、アガーテが不安の声を上げた。
「大丈夫だと思います。設計図ではちゃんと部屋がありましたし、一階は男女で分かれた、とても広い大浴場がありますし」
「「とても広い大浴場……」」
アガーテ含む女性陣が大浴場の言葉に目を輝かせた。
「本部の門は魔導具になっているから、皆、登録しないと入れない。なので、登録しに行きまーす」
「「はーい」」
ルクスたちは全員でクラン本部の門扉の魔導具に登録した。
自由気まま・風任せ・人それぞれの引っ越しは準備でき次第、順次行われることとなった。




