第73話 新たな門出
翌日、ルクスは黄金の導と追い風のメンバーを集めて談話室で話を始めた。
「昨日、陛下から黄金の導のみんなを王都の学園に通わせて欲しいと手紙が届いた」
皆、神妙な表情を浮かべている。
「もし、学園に通うなら奴隷という身分だと問題がある。ということで、皆を奴隷から解放しまーす」
「「おおー」」
突然の発表に驚きの声が上がった。
「しつもーん」
アランが手をあげた。
「はい、アラン君」
「奴隷から解放されたら、今と何か変わるのか?もしかして、屋敷から追い出されるとか……」
「いや、俺が命令しても強制力がなくなるだけ。屋敷からは追い出さないよ。これからは同じパーティー、クランメンバーになるだけだ」
「へえ、じゃあ、全然大丈夫じゃん」
「うん、ルクスが僕らを追い出すのは大人になってからだと思うよ」
バートが横からアランに言った。
「え、まじか!?独り立ちできる準備ができたらにしてくれ!」
「いや、勝手に話を進めないで。追い出すもなにも、君たちの意思に任せるから安心して」
ルクスがツッコミを入れつつ、説明した。
「ほっ」
「でも、僕たちが悪いことをしたら、追い出すよね?」
バートが問う。
「あー、内容によるな。犯罪を犯したら、憲兵に突き出すぞ」
「うぇ……、でも、犯罪とかしないだろうし大丈夫だな!」
アランがあっけらかんと楽観的に言う。
「未来は何が起こるか分からないんだから、楽観視し過ぎるのも良くないからね」
バートは冷静にツッコミを入れた。
「うーん、まあ、気を付ける」
アランは頷いた。
「じゃあ、神殿で奴隷解放して貰うから、皆で行くよ」
「「はーい」」
ルクスたちはぞろぞろと大人数で街を歩き、市民街の神殿に向かった。
祈りの間の近くにいる神官にルクスは声を掛けた。
「こんにちは」
「こんにちは、小さな信徒さん」
「お願いがありまして……」
「なんでしょう?」
「奴隷から解放したい人がいるんです。これでできますか?」
ルクスは金貨が人数分の八枚入った革袋を神官に渡した。
神官は中身を確認して、微笑む。
「解放したい方は八人でしょうか?」
「はい」
「では、こちらへご案内します」
神官は奥の応接室にルクスたちを案内した。
「では、少々お待ちください」
神官が応接室から出て行った。
「……ルクス様、本当によろしいのですか?」
ベネディクトゥスがルクスに問う。
「何が?」
「我々を解放することです。私やヘレナ、ヴォルフさんやアデリナさんのような大人まで解放してしまえば、我々が貴方様の情報を漏洩したり、貴方様の元から去ってしまうとは考えなかったのですか?」
「そりゃあ、勿論、考えたよ。でも、信じることにした」
「信じる……もし、我らが本当に貴方を裏切るような真似をしたとしても?」
「それでも信じるよ。そんなに長く一緒に暮らしたわけじゃないけどさ、それでも、皆の人となりは分かってるし、もしも、俺のもとから皆が去ってしまったら、そのときは俺に人望が無かったんだって思うことにする」
「ルクス様……」
ベネディクトゥスは涙を流した。
「ええ!?ベネディクトゥス?」
「私が間違っていました、主人を試すような真似をして……ルクス様が信頼してくださっているのに、このような……大変申し訳ありませんでした」
「ちょ、待って、ベネディクトゥス、土下座はやめて」
土下座しそうになるベネディクトゥスをルクスは無理やり立ち上がらせた。レベル差があるからできることだ。
「ルクス様」
立ち上がらせたベネディクトゥスはルクスの前に跪いた。
「ちょ」
「我、ベネディクトゥスは誓いを捧げる。我が剣、我が力、我が命は主人のために使うと誓う」
いきなり誓いを捧げられたルクスは近くにいたラエティティアに救いを求めた。目で。
「『そなたの誓い、受け取った』と仰ってください」
小声でラエティティアは助言をした。
「……そなたの誓い、受け取った」
渋々誓いに応えたルクス。ベネディクトゥスは晴れやかな笑顔を浮かべた。
「ありがとうございます、ルクス様。騎士の誓いを捧げられて、嬉しく思います」
「騎士の誓いって?」
「騎士が生涯に一度だけ主人となる者に捧げる誓いのことですね」
「え、ベネディクトゥスは貴族だったんだよね?国王陛下に捧げなかったの?」
「私は貴族でしたから、貴族として陛下に仕えておりましたし、誓うことはありませんでしたね。他の貴族でも騎士ではない者もおりましたし、普通です」
「えっと、ベネディクトゥスは騎士じゃないってこと?」
「身分としては騎士ではありませんでした。ジョブが騎士ですし、騎士課程は修了してます。騎士と言えるか言えないかと聞かれますと微妙ですが……しかし、先程の誓いは本気ですからね!」
「うん……。分かった」
拒むと、色々言われる気がしたルクスは受け入れることにした。
丁度そのとき、ドアがノックされた。
「失礼いたします。私、神殿長のパウルと申します」
パウルは細身の苦労していそうな中年の男性だった。
「こんにちは、パウルさん。俺はルクスといいます」
「よろしくお願いします。ルクスさん、早速ですが、解放した奴隷というのは……?」
「俺以外の皆、なんですが……大丈夫でしょうか?」
「勿論、大丈夫です。では、ルクスさんは少し離れた場所に移動いただけますか?」
「はい」
ルクスはラエティティアたちから離れた。
「神々と生命の樹に、希う。我、この者たちを解放せしめんと欲す。どうか、叶え給え。【解呪】」
神殿長パウルは手を組み、目を閉じて祈った。【解呪】と言った瞬間、パウルの身体から光が迸り、ラエティティアたちを包み込んだ。
やがて、光は空気に溶けるように消えた。
「あ、奴隷紋が消えてる」
アランが自分の鎖骨の下あたりを覗き込んで、驚いたように声をあげた。全員、自身の奴隷紋がなくなったのを確認すると、目を瞬かせ、驚いていた。
「ありがとうございました」
ルクスは追加で喜捨をしようと、大金貨十枚が入った革袋をパウルに渡そうとした。
「これ以上は受け取れません。前神殿長のように欲を張ると良いことがありませんから」
「はは、そうですね。ありがとうございました」
ルクスは大金貨十枚をアイテムポーチに戻した。
「皆様に、神々と生命の樹の祝福があらんことを」
「ありがとうございます、パウルさんにも祝福がありますように」
神殿長パウルは微笑みを浮かべた。
「ありがとうございます、ルクスさん。お気をつけてお帰り下さい」
「はい」
ルクスたちは神殿を出た。
「帰ろうか、俺たちの家に」
「はい、帰りましょう。ルクス様」
ルクスとラエティティアは手を繋いだ。
ベネディクトゥスは複雑な表情をしつつ、ヘレナに慰めて貰っている。
「俺たちってことは、俺も入ってる?」
「勿論だよ、アラン」
「僕は?」
「大丈夫だよ、バート」
ルクスとラエティティアの傍にアランとバートもやってきた。
「私も帰るー」
クラーラがアランの腕に抱き着いた。
アランは頬を赤く染めたが、パニックにはなっていない。成長した。
「クラーラ、アラン君をからかうのは程々にね」
ヴォルフの腕に自身の腕を絡めたアデリナは苦笑しつつ、クラーラに注意した。
「からかってないもん、本気だもん」
「なら良いわ」
「がふっ」
本気という言葉にアランは顔を真っ赤にして立ったまま、気絶した。
「アラン?大丈夫?アラン?」
「……」
アランは立ったまま白目を剥いて気絶している。
「仕方ないなぁ」
ひょい、とクラーラはアランをお姫様抱っこした。
高レベルなので、クラーラにとっては全然負担ではないが、アランがこのことを知ったら恥ずか死ねるだろう。
「「あはは」」
その構図を見てルクスとバートは爆笑した。
ラエティティアも面白くてくすくすと笑っている。
大人たちは苦笑していた。
(こんな日がいつまでも続けば良いけど、楽しい時はあっという間だって言うしなぁ)
忘れないようにと、ルクスはこの光景を心の中に思い出として収めた。
ふと、ルクスは空を見上げた。
雲一つない青空がどこまでも広がっている。爽やかな秋風と小鳥たちの囀り、その全てがルクスたちの新しい門出を祝福しているようだった。
─ 第2章 色とりどりの日々 了 ─
読んでくださり、ありがとうございます!
第二章はここで完結です。
♡や☆☆☆、感想などいただけると作者のやる気が爆上がりして執筆が捗るかもしれません。
三章でも王都から拠点を移動できないかもです(-_-;)
王都から旅立てるのは、いつになるのでしょう……作者も分からない(爆)
ポケ〇ン最新作もミア〇シティから出られるか分からないことを思うと、結構先のことになりそうな予感……。
きっと、いつか世界中を旅するようになる……筈!
別作品『極貧男爵家に転生したので、チートスキル【石の王】で最強の領地を作る』もオススメ!
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