第69話 ゲオルクの指名依頼
クラン自由の翼の紋章が刻まれた緋金の装備を礼装の上に纏った自由気ままや風任せ、五人組の面々は意気揚々と冒険しに出かけた。
黄金の導はゲオルクの指名依頼により、アサヒ村に行くことになっていた。
何故かゲオルクも黄金の導に同行することになり、ゲオルクの準備した馬車でアサヒ村に向かっていた。
一台目の馬車にはゲオルクとルクス、アランとバートが乗っている。
「ギルドマスター……」
「ん、なんだルー坊。あと、儂のことはゲオルクと呼んで良いぞ」
「じゃあ、ゲオルクさん。なんで僕たちに詳細不明な指名依頼を?」
ルクスたちが受けた指名依頼は依頼内容が不明だという普通はない依頼だった。
「心配するな、そんな変な依頼はせんよ」
「そう言われると、更に心配な気分になります……」
「はっはっはっ、儂を一撃で沈めた礼だよ」
「……はぁ」
そんなやり取りをした二人の横には気まずそうな表情のアランとバートがいた。
「そういや、そこの二人も随分強くなったみたいだな」
「「はい」」
「今度、試合《殺し合い》でもやろうじゃないか」
「……バート、なんか副音声が可笑しくなかったか?」
「うん、殺し合いって聞こえた……」
アランとバートはこそこそと話して頷き合った。
「「お断りします!」」
「ふはっ!潔いな!」
気に入ったぞ!と二人の頭をぽんぽん叩くゲオルク。逆に気に入られたことで、二人は青い顔をしていた。
馬車は進み、野営をしながら十日でアサヒ村に着いた。
降り立ったゲオルクは、すぐに村長の家に向かい、ルクスたち黄金の導を紹介した。
「こりゃあ、有難い。じゃあ、早速、麦刈りを手伝っておくれ」
「「麦刈り?」」
「あんら、ゲオルク、説明してながったのか?」
「ああ、そういえば」
「「そういえばじゃないよ」」
「っていうか、ゲオルクさんは村長と知り合いなの?」
ルクスのツッコミにゲオルクは村長と顔を見合わせた。
「知り合いというか……」
「兄弟じゃな」
ええー!というルクスたちの叫びが響いた。
「あー、言ってなかったな、すまんな、お前たち」
「とりあえず、行くべ」
村長を先頭にゲオルクと黄金の導は小麦畑にやってきた。
アサヒ村は蜂蜜の産地だが、小麦も育てているのだ。
「この一面の小麦を狩るんだべ。ちょっとコツはいるが、なあに、簡単だべ。村人総出で麦刈りしてるから、その手伝いをして欲しいんだべさ」
「……分かりました」
ルクスたちは手伝いに向かった。
麦刈りが依頼内容ということを意外に思っていたルクスたちだが、温かい村人たちの手伝いをしている内に、やりがいを見出していた。
「ふぅ、小麦畑も殆ど刈り尽くされたね」
「えぇ、そうですね、ルクス様」
ルクスとラエティティアは手伝っていた村人に渡された近くに湧いている泉の水を貰い、木の根元に座って小麦畑を眺めた。
半数くらいの村人はルクスたちと同じように休憩していた。
「あー、つかれた……」
「僕も……」
「私はまだ元気」
アランとバート、クラーラがルクスたちの元にやってきた。
その後ろにはゲオルクもいた。
ゲオルクはルクスに話しかけた。
「どうだった?ルー坊」
「んー、元々、俺、農家の息子なんで、懐かしいな、と思いました。でも、ここまで豊作な小麦畑は初めてだったので、ちょっと新鮮でしたね」
「お前らは?」
「ルクスと同じく」
「僕も」
アランとバートはそう応えた。
「私は王都で生まれ育ったから、新鮮だった」
「……私は、西の辺境が故郷で、毎年、小麦畑を眺めてました。その光景を思い出しました」
クラーラとラエティティアはそう応えた。
「そうか」
ゲオルクは遠くを見つめるように、目を細めた。
「……この王国には、色んな村が幾つもある。小麦・大麦・野菜・蜂蜜や、モゥモ・メェル・コッコなどの家畜を育てているところもある。儂らは王都に住んでいるが、王都が機能しているのは、村あってこそじゃ。そのことを忘れてはならん」
「「はい!」」
「良い返事だ、さてと、村長が豪華な飯を用意してくれているそうじゃ、行くぞ」
「「はーい」」
その夜、ルクスたちは素朴ながらも、温かく美味しい料理に舌鼓を打った。




