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【第二章完結】ゲーマーはゲームのような異世界に転生して最高の人生を掴むようです  作者: 星海亘
第2章 色とりどりの日々

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第60話 特許権




 今月は雨でジトジトする栄月ホドなのだが、初旬はあまり雨が降らなかった。

 しかし、中旬になってから徐々に雨が増え、今日はざあざあと激しい雨が降っていた。


「雨の日は読書が捗るなぁ」


 窓の外を眺めつつ、ルクスは呟いた。


「そうですね、ルクス様」


 対面のソファーに腰掛けたラエティティアが微笑んだ。


「まあ、レベリングはお休みになってしまうんだけどね」

「仕方ありませんわ、この雨ですもの」

「だね……」

「そういえば、お母様がこの雨にインスピレーションを得て、朝から衣装づくりをしてました。どんな、お洋服ができるのか、ちょっと気になりますわ」

「そうだね、雨をテーマにした服とか見たことないな」


 ルクスたちは和やかに会話をしつつ、紅茶を嗜んだり、読書に集中したりと、有意義な時間を過ごした。




 雨季には珍しく晴れた栄月ホド下旬のある日、ルクスは和紙と鉛筆の特許を取りに商人ギルドにやってきた。

 商人ギルドは特許権という権利を管理している。

 正確には、国の代わりに特許を管理する権利を商人ギルドが持っていると言える。

 各国は商人ギルドに特許権を管理する権利を与え、報告する義務を課していて、商人ギルドは見返りとして、特許権管理手数料を国から貰うことができる。


 例えば、アルヒ王国で発明された技術を特許としてAさんが商人ギルドに登録を申請する。

 商人ギルドは過去に存在した特許と重複がないことを確認すると、アルヒ王国の特許部門の担当者に特許を申請する。

 特許部門の担当者は王国に有用な技術だと判断した場合、王国内のみで技術を扱うことを許可する限定特許権を証明する書類を商人ギルドに渡す。

 商人ギルドは限定特許権を証明する書類の写しをギルドで保管し、原本をAさんに渡す。

 限定特許権の独占期間は二十年。それ以降は三十年王国内のみで限定公開され、それ以降は、外国にも公開される。

 もし、アルヒ王国のみでずっと使い続けたい技術があるとするならば、王国で独占するために、Aさんは囲われる可能性が高い。

 因みに、有用な技術と判断されなかった場合は、通常特許権がAさんに与えられ、独占期間二十年以降は、各国に公開されることになる。

 だが、特許権があれば、二十年は模倣されることはない。二十年もあれば、軍資金に困ることはなくなるだろうと、ルクスは見込んでいた。

 軍資金というのは、ルクスや仲間たちが強くなるために必要な金のことを指す。

 武具や消耗品、ポーションなど冒険に必要なアイテムを購入するには金がかかる。

 それに、ルクスは全世界を旅する予定だ。そのための旅費も欠かせない。

 和紙と鉛筆という商品がどれくらい売れるかにもよる。しかし、ルクスは売れると予想していた。

 何故なら、和紙には羊皮紙にはない良さがある。

 例えば価格。

 羊皮紙は羊や子牛などの動物の皮から作られ、とても丈夫で書きやすいことから、重宝されるが、羊皮紙一枚を作るためには羊一匹分の皮が必要だし、製造工程が複雑で時間も人件費も掛かる。よって、大量生産は不可能。なので、値段も自然と高値になり、平民は購入するのを躊躇うだろう。

 それに比べ、和紙はどうだろう。

 今回、ルクスは、王都の近くの森に自生する亜麻で和紙を作った。

 本来であれば、こうぞ三椏みつまた雁皮がんぴなどの低木が和紙の主な原料なのだが、生憎、王都の近くにそのような低木は自生していなかった。

 和紙の原料は他にも、麻・桑の木・竹・藁・・バナナ・パイナップルなどがある。

 そんなことをルクスが覚えていたのは、前世、大学で農学を専攻していたとき、和紙について論文を作ったことがあるからだ。

 そのとき、麻の仲間である亜麻で和紙が作れないか試したことがあり、問題なく作れた記憶があった。

 だから、ルクスは亜麻で和紙を作ったのだ。

 亜麻は王都近くでも多く自生しているし、グラジュスの影の報告書によれば、アルヒ王国内に多く自生している。

 材料としては申し分ない。

 トロロアオイもアルヒ王国に自生している。此処は中世ヨーロッパっぽい文化体系だが、気候的には日本と似ているから自生できているのだろう。

 以上の要素を踏まえると、技術と人員さえいれば、和紙を量産することは簡単だ。

 和紙は、薄くて丈夫だし、羊皮紙と同じように長持ちする。量産できるとなれば、比較的安く流通することができる。

 羊皮紙と違う透け感なども魅力がある。

 ただ、羊皮紙とは違い、書き損じても削れるわけではない。一発で書き上げなければならないのは、大変だ。

 そこで、鉛筆の登場だ。鉛筆で下書きをし、清書をすれば、和紙でも手紙や書物を書くことができるだろう。

 清書が不要なメモをするときは、鉛筆だけでも良い。

 他にも用途は色々ある和紙と鉛筆だ、絶対に売れるだろう。


 そう思ったのはルクスだけではない。

 ルクスが持ち込んだ先の商人ギルド特許部の部長であるディーター・バルテルも久々に商人の血が騒いだ。

 余談だが、ディーターは不動産部のアルノー・バルテルの兄だったりする。


「ルクス様、この和紙と鉛筆は爆発的に売れます」

「まあ、売れるとは、思いますが……」

「絶対に売れるでしょう。因みに、商会を作って和紙や鉛筆を販売されるご予定は?」

「ないですね。できれば、信頼できる幾つかの商会にお願いして純利益の一割を使用料ロイヤリティとして貰えればありがたいのですが……」

「純利益の一割?それでは、この技術を提供する使用料ロイヤリティとしては安すぎます。売上の一割がよろしいかと」


 売上とは商品やサービスを販売して得た収入の総額で、「稼いだ金額の全体」を指す。

 一方、純利益は、売上から商品仕入れに掛かるコスト、商品の販売や商会の運営に掛かる費用、それ以外の家賃などの費用などをすべて差し引き、さらに税等を差し引いた、商会が最終的に手にする「儲け」であり、「使った後に残る金額」だ。


「えっと、ほぼ丸投げする予定なのですが」

「それでも、売上の一割が妥当ですね」

「分かりました」

「まずは特許を申請しないといけません。こちらの書類に記載願います」


 ルクスは羊皮紙に和紙と鉛筆の材料と作り方を記載した。


「鉛筆ですが、真ん中に穴を開けるために風魔法を使うのと、土属性魔法で粘土と作るのは、魔法使いを雇う必要が出ますから、コストが掛かると思います。代用できる手法などありますか?」

「そうですね……」


 ルクスはダメ元で鉛筆を鑑定してみた。


【鉛筆】

黒鉛と粘土を合わせた芯と、木でできている。

作り方→


 ルクスは作り方を見た。


魔法で作ると簡単に作れる。

手作業で作る場合、木の板に溝を彫り、溝に芯を乗せ、その上に溝が彫られた木の板を重ね接着剤で貼り付ける。

上の面と下の面を削って、一本一本切り離せば、鉛筆の出来上がり。

芯は黒鉛の粉と粘土を混ぜ、乾燥し、焼き、熱した油を浸透させ、冷まして出来上がる。

素材の詳細→


 作り方には何故か画像も添えられていた。


「手作業で作ることも可能です。例えば……」


 ルクスは鑑定に記載されている作り方をディーターに伝えた。


「なるほど、それなら量産できそうですね。接着剤はスライム接着剤を使えば問題ないでしょう。あとは粘土ですが……」


 ルクスはスライム接着剤という言葉に反応したが、今は仕事中。議題に集中しなければならない。

 鑑定の素材の詳細を見たルクスはディーターに粘土の詳細を伝える。


「粘土ですが、湿度の低い地域で採れる結晶化が進んで、不純物を含まない粘土が良いようです。あと、黒鉛ですが、木炭でももしかしたら代用できるかもしれません」


 木炭鉛筆も前世では存在していたことをルクスは覚えていた。

 そんなことは絶対に口にはしないが。


「湿度の低い地域の粘土……北部で採れるかもしれませんね。調べてみます」

「あ、わざわざ北部から粘土を取り寄せて作る鉛筆と、近場で採れる粘土を使って作る鉛筆を作ってみるのも良いかもしれませんね。書き心地が変わるでしょうから」

「なるほど……書き心地によって値段を変えるのも良いでしょうね。素晴らしいです」

「いえいえ」

「あとは黒鉛の調達ですね」

「廃坑ダンジョンの廃坑に結構黒鉛がありましたけど」


 ルクスは黒鉛がある場所を事前にマップで確認し、廃坑にあることを知ったのだ。


「本当ですか!採掘権についても調べなければなりませんね……しばらくは、国内で黒鉛が採れる地域から取り寄せれば良いですが、近場に採掘場があった方が良いですし」

「ですね……では、追記しますね」


 ルクスは作り方を追記し、材料についても追記した。


「できあがりました」

「拝見いたします」


 ディーターは書類に目を通して、頷いた。


「問題ないかと存じます。ないとは思いますが、念のため、私の方で重複している特許がないか確認後、王国の特許部門の担当者に申請します。恐らく、三ヶ月ほど掛かるでしょう」

「分かりました。よろしくお願いします」

「特許権が降りましたら、ご連絡したいのですが、ルクス様のお住まいはどちらでしょうか?」

「職人街の十番地七号です。元々は魔法使いの屋敷だったそうですね」


 住所は以前、物件を購入した際に貰った物件概要書に記載があった。ルクスは、特許を取ることになって、アイテムボックスから引っ張り出して、確認したのだ。

 ちなみに、現在ルクスが住んでいる屋敷の税金は十年分先払いしているので、あと十年は税金に悩むことはないだろう。


「ああ、あのお屋敷ですか。分かりました。ありがとうございます」

「手続きはこれで終わりですか?」

「はい、以上で手続きは終了となります。お見送りしますね」


 ルクスはディーターに見送られ、商人ギルドを出た。

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