第52話 緋色の輝き
一週間後、ルクスたち黄金の導はいつも通り、ダンジョンに潜っていた。
現在潜っている階は三十層で、自由の羽が使えなくなったルクスたちは苦労していた。
「雑魚蹴散らしながら潜るだけで半日も時間が掛かるなんて……お陰でダンジョン内で泊まって、結局一日掛かったし……ねえ、ルクス、羽は本当に使っちゃダメなの?」
バートはぶつくさ文句を言いつつ、ルクスに問う。
「だめ」
「ええー。ルクスのコウガクメイサイって魔法なら、周りから見えなくなるんでしょ?前みたいに魔法使って羽を使えば良いのに」
コウガクメイサイとは光学迷彩のことだ。
「だめだ(陛下の影が俺たちを尾行してなければ使うんだけど……)」
ルクスはマップの後ろの方を今まで気にしていなかったが、最近、黄色の人マークがいることに気付いて確認すると、王家の影だった。
黄色は味方でも敵でもないという意味なので、油断はできない。
「……うーん、分かった。この話はもうお仕舞い」
「ごめん、バート。一年後くらいには使えるようになるから」
「使えるようになるなら、頑張れるよ」
バートは笑った。そして、黄金の導は三十層のボス【オークキング】を倒して、魔法陣に乗り、地上に戻った。
地上に戻って、ルクスは仲間たちとギルドに向かいつつ、思案していた。
(自由の羽が使えないことで、レベリングに支障が出ている……何とかできたら良いのだけど……)
ルクスは考えた。頭の中にあるゲームの情報をひっくり返して、一つの答えを導き出した。
(そうだ!乗り物……騎乗できる馬を購入しよう!ダンジョンまで歩く時間を短縮することでレベリングの効率を少しでも上げるんだ)
そうと決まれば!とルクスはマップで騎乗できる馬を売っている店を探した。
見つかったその店は馬の貸し出しをする店だった。
できれば購入したいと思ったルクスはとりあえず、その店に行ってみることにした。
(冒険者ギルドでドロップアイテムを売ったら、お店で馬について聞こう)
と決意しつつ、ルクスは冒険者ギルドにやってきた。
「あ、黄金の導の皆さん、待ってましたよ」
と言いつつ、フリッツがやってきた。
「ランクアップの件、奥でお話聞いていただけますか?」
「「はい」」
ルクスたちはフリッツに付いて行った。
会議室のような部屋に通されたルクスたちは各々好きな席に座った。
「失礼するぞ」
部屋に入ってきたのは、冒険者ギルドの制服を身に纏った厳つい老人だった。
「儂はこのギルドのギルドマスター、ゲオルクだ。よろしくな」
にかっと笑ったゲオルクはルクスたちのところにやってきた。
「遅くなって、すまなかったな。なんせ、久しぶりの魔銀以上のランクだ。君が幼いということで、上層部が難色を示したがレベル証明書と儂が稽古を付けるということで納めた。よろしくな、ルー坊」
と言いつつ、ゲオルクはルクスに緋色に輝く金属のカードを渡した。
「緋金級のギルドカードだ、受け取れ」
「あ、ありがとうございます」
ルクスは緋金のカードをアイテムポーチに仕舞った。
「お前さんらは銀級のギルドカードだ」
ゲオルクは一人一人にギルドカードを渡した。
「たぶん、みんなすぐに金級に上がると思います」
「ほう?」
ゲオルクはルクスの言葉に目を細めた。そして、黄金の導のメンバーを見た。
「まあ、以前より強くはなっているようだな」
「以前?」
「気にするな。さあ、ルー坊。稽古を付けてやろう。地下の修練場が開いている。今すぐ行こう」
「ダメです!!」
フリッツが珍しく大声を出した。
「ギルドマスター。山ほど仕事が溜まっているのをお忘れではありませんか?」
「さ、さあ?なんのことだか……」
「副ギルドマスターがカンカンになってましたよ?」
「……仕方ない。だが、ルー坊の稽古はランクアップの条件だ。絶対にやるからな」
「そこは副ギルドマスターが調整してくださいます。予定も組むそうですので、ご心配なさらず」
「……はぁ、仕事に戻る」
そう言って部屋を出るゲオルクの背には哀愁が漂っていた。
「さて、皆のパーティーについてだけど、ルクス君が緋金級ですが、皆は銀級なので、パーティーランクも銀になるよ。あと、これからパーティーに入りたがる冒険者が皆さんに声を掛けてくることもあると思うけど、毅然とした態度で断ることをオススメするよ」
「えーっと、大体は断ると思いますが、全部断らないといけないんでしょうか?」
「ルクス君を目当てに声を掛けてくるような奴がたくさんいるから、碌な奴がいないと思うよ。大丈夫そうな人がいれば、僕に相談してくれると有難いな」
「分かりました」
ルクスたち黄金の導は頷いた。
「それから、ランクについて説明するね。銀級からは、ギルド連盟銀行を利用できるようになるよ。冒険者ギルドを通じて銀貨一枚から預けられるからね。手数料は毎回取られるから、纏めて預けることをお勧めするよ。……緋金級のルクス君も使えるからね」
「はい」
「で、ルクス君向けの話になるけど、緋金級は、貴族の命令に背いてもお咎めなし。正しいことをしているなら、冒険者ギルドが君を守るよ。あと、所属している王国も高ランクの冒険者を手放したくないから、味方するだろうね。それから、この大陸で冒険者ギルドのある国の国境を超えるときにお金が掛からないし、面倒な審査もいらない。あと、無利息でお金の融資も受けられるし、高性能な武具の貸与も可能だよ」
「至れり尽くせりですね……」
「ま、それだけ高ランク冒険者は貴重だってことだよ」
「はぁ」
「僕からの話はこれで終わりだけど、何か質問はあるかな?」
「いえ、大丈夫です」
「じゃあ、ここまでにしよう。長くなって、ごめんね」
「いえ、わかりやすく説明してくれて、ありがとうございました。フリッツさん」
「どういたしまして。ルクス君、皆、応援してるよ!」
「「ありがとうございます!」」
黄金の導の面々は笑みを浮かべ、お辞儀をした。ラエティティアは深々と、ルクスは敬礼くらいで、クラーラはフリッツを見上げたまま笑顔を浮かべている。
アランもクラーラと同じようにしていたが、隣のバートに頭を掴まれ、下げさせられていた。
「フリッツさん、また!」
「うん、またね」
「皆、行こう!」
黄金の導の面々は、会議室を出ていった。




