第5話 意外な事実
ルクスは幼馴染二人にそれぞれベッドに座るよう、促した。
アランは焦茶の短髪に、茶目を持つ、ちょっとつり目で、活発な少年。
バートは明るい茶髪に明るい茶目を持つ、ちょっとタレ目で、おとなしめな少年で、ルクスと三人でよくつるんでいた。
ちなみに、ルクスは昨日、初めてこの宿泊部屋に備え付けられている鏡で自分の姿を確認した。
鏡に映ったルクスは、赤髪に金色の瞳、整った相貌の可愛らしい美少年で、将来はモテそうな感じだ。
(そういえば、俺って、俺を売ろうとした家族と似てないんだよな……)
なんでだろ、と思ったが、ルクスは気にせずアランとバートに話しかけた。
「アラン、バート。俺が今から言う言葉を唱えてくれ」
「おう、了解」
「えっと、うん、分かった」
ルクスは「【生命は数という神秘でできている】」と言う、ルクスの前にセフィロトが現れるが、二人は驚いた様子がないので、見えていないのだろう。
「「【生命は数という神秘でできている】」」
二人は同時に唱えて、目を丸くした。
何故なら光でできた木のようなものが目の前に現れたのだから。
「なっ、なんじゃこりゃ!?」
「る、ルクス、これなに!?」
二人はあわあわしつつ叫んだ。
「危険はないから大丈夫だ」
「お、おう、確かに、俺達生きてるしな」
「ま、まあ、光る木が見えただけだもんね」
二人は納得したように頷いた、かのように見えた。
「「……納得できないわ(よ)!」」
「あ、ああ、とりあえず、説明するから落ち着けって」
ルクスはどうどうと二人を宥めつつ、説明し始めた。
自分が転生者だということは伏せて、宝物を拾った時に拾った本にセフィロトのことが書いてあったことにした。
ルクスは、セフィロトが世界の機能で、全ての者が持っていて、それは魂と肉体に結びついているということを説明した。
その上で、ルクスは二人に、光っているセフィラがあるか尋ねた。
「あ、下の方……?イェソドって書いてあるセフィラが光ってる。あれ、文字とか知らないのに読めてるな」
「僕は、右上の方にあるセフィラ、コクマーって書いてある、ように読める」
「イェソドは基礎って意味だな。防御力が少し上がる。コクマーは知恵って意味で、賢さが少し上がるな」
「へぇ」
「なるほど、だから、僕って賢いのか」
「なんで、俺の方を見ながら言うんだよ、バート」
アランはこうしてやるっ、と言ってバートの脇腹を擽った。
「ちょ、あははは!止めてよ!」
擽りに弱いバートは笑い転げる。
戯れるアランとバートを優しい微笑みを浮かべ眺めるルクス。以前は二人に混ざって巫山戯ていたルクスだが、精神年齢が前世の記憶により高くなった為、混ざる気が起きないのだ。
暫くして戯れを止めた二人は、ターゲットをルクスに定め、ルクスに襲いかかった。
「!?ちょ、まっ、止めろって!」
ルクスは擽り攻撃によって、笑い転げる羽目になった。
真面目な顔をしたアランとバートの頭には、たんこぶがあった。
ルクスに殴られたのだ。
「とりあえず、最初はレベリングして、最終的にはこのセフィラを強化するんだ。分かった?」
「「分かった」」
「なら、よろしい。じゃあ、食堂に行くぞ」
昼御飯だ。と言って、部屋を出ようとしたルクスの後ろでアランがバートに小声で話しかけた。
「ルクスって、怒ると怖いよな」
「うん……」
「おい、聞こえてるぞ」
「「ひぃ」」
「ひぃじゃないよ、ひぃじゃ。ほら、ベネディクトゥスたちを呼んで」
「「はーい」」
アランとバートは、隣の部屋をノックして、「ご飯行きますよ〜」と、声を掛けた。
出てきた三人は泣いていたようで、目元がほんのり赤くなっていた。
アランとバートはベネディクトゥスの妻と娘の美貌にぽーっとなりつつ、「ルクスが昼御飯って言ってたよ」と伝えた。
アランとバートがそう言ったとき、ベネディクトゥスが優しげに見えるのに、冷たい吹雪が吹き荒れているような雰囲気になって、アランとバートに声を掛けた。
「アラン君、バート君」
「「ひぃ、は、はいぃ」」
「ルクス様のことは、様付けで呼ぶように」
「ぅえ、でも、ルクスはルクス」
「良いですね?」
有無を言わさぬ凄味のある笑みだった。
「「……はい」」
二人は頷いた。
「二人共、それから、ベネディクトゥスと……あー、奥さんと娘さんは名前を聞いてなかったね。食堂で自己紹介しようか」
「「はい」」
「じゃあ、行こう」
六人は一階に降りて食堂に向かった。
六人がけの机にそれぞれ座る。
ベネディクトゥス達は、遠慮していたが、ルクスが「これは命令のようなものです」と言うと、困ったような表情を浮かべつつ、座った。
「とりあえず、注文しよう。俺と同じメニューで良いかな?」
「はい、勿論です」
ベネディクトゥスが真っ先に応えた。
「「大丈夫です」」
ベネディクトゥスの妻と娘もそれに続く。
「同じ?食べ合う為に、なんか違うの頼まないのか?」
「アラン、あそこで、まともに食事できてたのか?」
「んー、村よりも食べられなかったかも」
「いきなり沢山食べたら、お腹が吃驚するから、軽い食事が良いんだよ」
「ふぅん?分かった」
「バートは?」
「あ、僕も大丈夫」
全員の了承を得たルクスは、手を上げて給仕を呼ぶと、注文した。
暫くして料理が運ばれて来る。
「うわぁ、旨そう」
アランは涎を垂らしそうになりつつ、感嘆の声を上げた。
ルクスが注文した昼御飯は、野菜スープと、パン、そして、オムレツだった。
「ゆっくり食べるんだぞ、アラン、バート。じゃあ、食べよう、えーっと、神々の御恵に感謝を」
「「感謝を」」
これは食前の祈りというもので、アルヒ王国ではポピュラーな作法だ。どの家庭でも行われているだろう。
アルヒ王国では、十の神々を祀る、十光教と呼ばれる宗教を国教としている。
だから、神々へ祈るのだ。
大体は家長が代表で祈る。奴隷たちの主ということで、ルクスが代表して祈ったのだ。
ルクスたちはゆっくり咀嚼し、味わって昼御飯を食べ終えた。
アランとバートは借りてきた猫のように大人しい。
先程のベネディクトゥスが怖かったからだろう。
「えっと、御飯も食べ終えたので、自己紹介しようか。まずは、俺から。俺は、ルクス。トアル村という王都から一週間程の距離にある小さな村で生まれ育った農家の五男坊。口減らしで売られそうになったので、逃げてきた。逃げているときにお宝を見つけたので、今はお金に困っていない、以上」
ルクスの言葉に目を丸くしたのはベネディクトゥスと妻と娘だった。
「え、ルクス様はラファル帝国の血を引いた高貴な方ですよね?」
思わず、といった感じでベネディクトゥスの妻が言った。
「??」
ルクスは目を丸くする。
「え、どういうことですか?」
ルクスの代わりに問うたのは、バートだ。
バートの問いに応えたのは、ベネディクトゥスだった。
「ルクス様は黄金のように美しい金色の目を持っているだろう?金色の目は、帝国の皇族特有の目なんだ。だから、ルクス様は帝国皇族の血を引いているということだ」
「「えぇ!?」」
アランとバートは驚いて声を上げた。
「えっと、俺に皇族の血が?」
「そうですね、ルクス様は、ご自身の出自を御存知ないようなので、恐らくですが、ご落胤なのかもしれません」
「ご落胤……庶子ってことか……面倒極まりないな。帝国皇族の目について知っているのは貴族だけかな?」
ルクスの俺TUEEE観光計画(レベリングして強くなって各地を旅行し、ボスを倒したり、やりこみ要素を楽しみたい)に皇族の血というものは入っていない。
そして、前世含め生粋の庶民であるルクスとしては、権力争いに巻き込まれそうな高貴な血というのは、邪魔でしかない。
「そうですね、王国では貴族……あとは豪商は知っているかと……、帝国の周辺諸国では、平民ですら知っているかもしれません」
「わあ……目の色とか変える魔法ってないかな?」
「高度な光属性魔法や闇属性魔法は目の色や髪の色、果ては姿も変えることができると聞いたことがありますが、私はどちらも使えません」
「うーん、カラコンでもあればな……」
「?からこん、ですか」
「あ、いや、大丈夫だ。まあ、光属性魔法や闇属性魔法は簡単に取得できると思う」
「簡単に、ですか……」
「魔導書が手に入ればね」
「魔導書があっても適正がないと、難しい、かと」
ゲームでは、プレイヤーは全ての属性の適正があるので、ルクス自身も全ての属性適正があると、ルクスは思っていた。
「大丈夫、だと思う。俺の予想が合っていれば」
と言いつつ、ルクスは思う。
(ご落胤か……想定外だけど、たぶん、俺TUEEEしたり、各地を巡って世界を楽しむことはできるだろう)
折角ゲームみたいな異世界に転生したのだから楽しまねば、とルクスは前向きだった。




