第48話 報告書と散歩
ラエティティアの誕生日から一週間が経ち、ベネディクトゥスの授業を終えたルクスは机の上に広がる資料を読んでいた。
資料は、ベネディクトゥスがグラジュスの影から貰った報告書だ。
アルヒ王国の地図と各地の地形が詳しく載った地図や説明および各地の植生が詳しく載っていた。
魔物の分布も地図で分かるようになっているので、とても分かりやすい。
魔物の分布はゲームとの差異があまりないが、植生はゲームで一部の植物や木、花しか出ていなかったことがよく分かった。
ゲームに多くの種類の植物を出現させるのはデータ的に困難だ。これは仕方のないことだろう。
植生について様々な報告がされている報告書を読み終えたルクスはもう一冊の報告書を手に取った。
『ラファル帝国の皇族について』というタイトルの報告書だ。
ルクスと血が繋がっているであろう、ラファル帝国の皇族に興味があったのだ。
ラファル帝国の皇族は総勢三十名。
皇帝と皇妃、側妃が三名、皇妃との子が五名、第一側妃との子が六名、第二側妃との子が五名、第三側妃との子が四名、皇妃との子である皇太子の妻とその息子二名と娘二名。
皇太子には現在の妻の前に聖女を娶っていたが、死別している。
死別の理由は産後の肥立ちが悪かったことだ。聖女の子は死産だった。
皇族の血を引いている者たちもいる。
皇帝の妹で、現公爵夫人と、その息子娘。皇帝の弟で現公爵とその息子娘だ。
彼らの性格についてだが、皇族は、大抵が傲慢で贅沢を好んだ。
皇族の血を引いている者たちはまだマシだと報告にあるが、どうなんだろう、とルクスは思った。
唯一、皇帝と皇妃、そして皇太子とその妻、および子供たちはまだマトモと言えると報告書に記載があり、帝国はまだ滅びないだろう、と思いつつルクスは報告書を閉じ、全ての報告書をアイテムボックスに入れた。
今日は黄金の導としての活動は休みの日としている。
なので、ルクスは暇だ。
「……散歩にでも行くか」
ルクスは街の子供らしい簡素な服のまま、屋敷を出た。
そして、ぶらぶらと街を散策し始めた。
街の建物の殆どは一般的なハーフティンバー様式で、煉瓦と木材が使われている。
いかにも中世ヨーロッパ風な街の景色を堪能しつつ、ルクスは市民街の神殿に向かった。
神殿でジョブレベルが見えないか聞きに行くためだ。
ルクスの鑑定では、ジョブレベルまで見れない。現在どれくらいなのか確認したかったのだ。
神殿に入ったルクスは、近くにいる神官に話しかけた。
「こんにちは」
「こんにちは、小さな信者さん、何か御用ですか?」
「これでジョブのレベルを教えていただくことってできますか?」
ルクスは金貨が五枚入った小さな革袋を神官に渡した。
神官は中身を見ることなく、頷いた。
「大丈夫ですよ、さ、こちらへどうぞ」
まさか、中身が金貨だと思っていない神官は革袋を懐に入れ、事実の石板の間にルクスを案内した。
そして、ルクスが石板に手を当てると、神官は浮かび上がった文字に驚愕し、二度見した。
「ルクス、様というのですね、レベル六十八……そして、ジョブレベルが七十七。凄まじいですね」
神官は「ジョブレベル証明書を発行しますか?」とルクスに問う。
「ありがとうございます。大丈夫です。では、失礼します」
ルクスは微笑んだ。
「貴方に、神々と生命の樹の祝福があらんことを」
神官は微笑み、ルクスを見送った。
神殿を出たルクスは不意に視線を感じた。
神殿の前方にある建物の陰にフードを深く被った男とルクスは目が合った。
気になったルクスはフードの男の元に向かった。
男は驚いたように路地裏の奥に向かって走った。
奥は行き止まりで、男は逃げ道がなくなった。
「どうして逃げるんですか?」
「あ……それは……」
男は言いよどむ。
「憲兵に怪しい人がいますって突き出しても良いんですよ?」
「それは!止めていただきたいです」
「じゃあ、なんで神殿を見ていたんですか?」
フードの男がルクスではなく、神殿を見ていたとルクスは感じていた。
ルクスと目が合ったのは偶然だとも思っていた。
「その……君を巻き込んでしまうかもしれない」
「別に問題ないと。俺、こう見えてレベル六十八なんです」
「!?レベル六十八……なら、大抵のことは大丈夫かも、しれない……分かりました。お話しします」
フードの男は覚悟を決め、フードを外した。
「あ、あの時の……!」
ルクスは見覚えのある顔に驚いた。




