第47話 花束
ヘレナに連れて行かれたルクスは、一着の服を渡され、自室で着替えることとなった。因みに、アスターはヘレナに捕まっている。
着替え終わったルクスは、いつの間にか部屋の前にいたベネディクトゥスに声を掛けられた。
「よくお似合いです」
「そうかな……(まあ、一応美少年だから似合うだろうけど)」
ルクスがヘレナから渡された服は礼装だ。モーニングっぽいスーツで、金で縁取られた黒いジャケットとパンツに金糸で刺繍が施された黒いシャツと赤いベスト、赤いネクタイ。カフスやネクタイピンなどはないが、貴族の令息が着ていそうな礼装だ。
「では、行きましょう」
「ん?これで、外に?」
「いえ、食堂です」
ベネディクトゥスに連れられ、食堂の前にやってきたルクスは、食堂の前にヘレナと美しい令嬢がいることに気付いた。
美しい令嬢は、銀糸で刺繍が施された白いエンパイアドレスを纏った美少女──ラエティティアだった。
まるで小さな女神が降臨したかのような美しさに、ルクスは見惚れた。
「ルクス様?」
ラエティティアはルクスに気付き、呼びかけた。
呼び掛けられたことで、ルクスは我に返った。
「ラエティティア、その……似合っているよ」
「まあ、ありがとうございます。ルクス様も、似合っていて素敵です」
「ラエティティアほどじゃないよ、さっきは、まるで小さな女神みたいに見えたから、驚いたよ」
「まあ!……嬉しいです」
ラエティティアは頬を染めて、はにかんだ。
ルクスは可愛らしいラエティティアの笑みを見て、胸を撃ち抜かれた。
「う……そ、そうだ、ベネディクトゥス、ヘレナ。食堂に用があるんだろう?中に入らなくて良いのか?」
「勿論、入りますよ、ルクス様。二人が揃うのを待っていたのです」
「え、それってどういう」
ベネディクトゥスとヘレナは食堂の扉を開け放った。
「「誕生日おめでとう!!ルクス様!ラエティティア!」」
そこには屋敷のメンバーが全員揃っており、皆、笑顔で二人を祝う言葉をルクスとラエティティアに投げかけている。
「ベネディクトゥス?」
ルクスは驚きつつ、ベネディクトゥスに問う。
(俺、誕生日はとっくに過ぎているんだけど)
ルクスのジトっとした目に、ベネディクトゥスは口を割った。
「実は、ラエティティアの誕生日が慈月十五日──今日でして、ルクス様の誕生日を祝っていないのに祝うのも……という話になったのですが、ヘレナが『一緒に祝えば問題ない』と言いまして、他のメンバーも賛同し、このような流れに」
ベネディクトゥスは正直に白状した。
「もしかして、この礼装はヘレナが準備してくれたの?」
「ええ、ヘレナは裁縫士のジョブを持っておりまして、幼い頃から縫い物が好きだったようで……全員分の礼装を作るのもお手の物です。今日はルクス様とラエティティアの誕生日を祝うということなので、二人に礼装を着ていただきました」
「説明ありがとう、ベネディクトゥス。さ、今日は祝いの日なんだろう?難しいことは考えず、楽しもう」
「はい、ルクス様」
ルクスはご馳走の並ぶ机のお誕生日席に並べられた二つの椅子の内の一つに座った。
「ラエティティア」
「あ、はい」
ルクスはラエティティアに手招きして、ラエティティアを横に座らせた。
「ルクス様、乾杯の音頭を……」
ベネディクトゥスにお願いされたルクスは盃を持って立ち上がった。
「今日は無礼講だよ!みんな、楽しんでね」
かんぱーい!とルクスは盃を掲げた。それに合わせて、皆もかんぱい!と言いつつ、隣の人と盃を合わせた。
そして、ご馳走を頬張る。
ご馳走のあまりの美味しさに、皆無言だった。
皆が、あっという間に平らげてしまった。
平らげたアランとクラーラは目で合図し合い、部屋から出て行った。
そして、大きな花束をそれぞれ持って戻ってきた。
「ルクス、はい、みんなの気持ちだ。受け取ってくれ」
「ありがとう、アラン、みんなもありがとう」
花束を受け取ったルクスは年相応な満面の笑みを浮かべた。
「ラエティティアも、お誕生日おめでとう。みんなからだよ」
「クラーラさん、皆さん、ありがとうございます」
花束を受け取ったラエティティアは嬉しそうに笑った。
宴会は子供たちが寝る時間まで続いた。
(穏やかな日々がずっと続けば良いな)
部屋に戻ったルクスは窓から星空を見上げ、星に願うように、そう思った。




