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【第二章完結】ゲーマーはゲームのような異世界に転生して最高の人生を掴むようです  作者: 星海亘
第2章 色とりどりの日々

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第42話 魔力欠乏症




 アルヒ山脈を越えた商隊は一つ目の村、ヒルネ村にやってきた。

 村の近くには小麦畑が広がり、その向こうに牧場があった。

 豊かな村なので、自警団もいるので、商隊は村の中で野営させて貰うことになった。

 ヒルネ村では二台分の馬車いっぱいに載せた物資と特産品の小麦粉や乳製品を物々交換した。

 その様子を見ていたルクスはエーリヒに聞いた。


「これって儲けとか大丈夫なんですか?」

「うーん、乳製品は高く売れるから、何とか儲けは出るよ」

「そう、ですか」

「まあ、高く売るのが商人の仕事だから、ルクス君は気にしなくて良いよ」

「はい」


 商人であるエーリヒを畑違いの冒険者のルクスが心配しても仕方がないのだ、という結論に達したルクスは、村を見て回ることにした。

 様々な村人と世間話をしつつ、回る。

 そして、村長の家の裏でしゃがみ込んで泣いている五歳くらいの男の子がいるのに気付いた。


「どうした?」

「ぐすっ……ミアが、倒れたんだ……」

「ミアちゃんっていうのは、この家の子かな?」

「うん、俺の幼馴染。まりょくけつぼーしょーって、変な名前の病気なんだって」

「……魔力欠乏症か」


 |Sefirot Chronicleセフィロトクロニクルのクエストで、NPCが罹ってることが偶にある病気だ。

 魔力欠乏症とは、魔力回路のどこかが壊れているので、魔力が漏れ出てなる病だ。

 治癒ポーションで治るが初級治癒ポーションでは治らない。中級や上級治癒ポーションで少しマシになるが、治すなら超級治癒ポーション以上のポーションが必要だ。


「少年、このポーションをミアちゃんに飲ませると良い」


 ルクスはそう言って王都の薬屋の店主、アメリアから貰った超級治癒ポーションを男の子に渡した。

 エリクサーがなければ渡す気は起こらなかっただろう。


「凄い綺麗なポーションだね……ありがとう、兄ちゃん、ミアに飲んでもらう」

「おう」


 男の子は超級治癒ポーションを大事そうに抱えて村長の家に入っていった。

 しばらくすると中から歓声が聞こえたので、ルクスはその場を後にしようとした。


「兄ちゃん!!」


 呼び止められたルクス。


「おじさんが呼んでるから来て!」


 ルクスは男の子に引っ張られて村長の家に入った。

 男の子が言うおじさんは、村長のことだった。


「娘を助けてくれて、本当にありがとう」


 ミアは村長の娘だった。


「いや、えっと、頭を上げて下さい」

「ありがとう、娘を助けてくれた礼として、受け取って欲しいものがあるんだ」


 村長は、二つの木の箱をルクスに贈った。


「箱は普通の木だけど、中身は凄い物らしい。先祖代々受け継がれてきた家宝なんだ」

「そ、そんな大事なもの受け取れません」

「いいんだ。実は家宝はまだあるんだ。気にしないで欲しい」


 そう言って、村長は壁に飾られている白檀と黒檀の太い枝を見た。


「実はね、君に渡したのは、あの白檀と黒檀の枝の一部を使った指輪なんだ。私たちには、あの白檀と黒檀があるから、問題ないんだよ」

「そう、ですか……分かりました。有り難く頂戴します」

「ルクス君、本当にありがとう」


 ルクスは村長に見送られ、幌馬車に戻った。

 ルクスたちが乗っていた幌馬車には、誰もいなかった。皆、村の中を見て回っているのだろう。

 ルクスは二つの箱から花のマークが彫られた黒と白の木の指輪を取り出し、鑑定した。


【黒檀の指輪】

聖なる黒檀の木の枝から削り出された指輪。

邪なる者を寄せ付けない効果がある。


【白檀の指輪】

聖なる白檀の木の杖から削り出された指輪。

邪なる者を寄せ付けない効果がある。


 ルクスのパーティーは五人と一人の小妖精がいる。

 とても、二つでは足りない。


「皆と相談するか」


 そうして、ルクスは幌馬車で休みつつ、黄金の導のメンバーが戻って来るのを待った。


「おー、ルクス。アポー採ってきたんだ、食べる?」

「うん、食べる」


 アランとバート、クラーラとラエティティアがアポーを抱えて戻ってきた。


「そんなにアポー採って、どうするの?」

「アポー煮を作るの」


 クラーラが代表して応えた。


「砂糖も持ってきたの」


 クラーラはアイテムポーチから鍋と砂糖の入った麻袋を取り出した。


「とりあえず、外でやろうか」


 黄金の導は幌馬車から外に出て、焚き火の用意を始めた。


「お、夜ご飯なら、バッハ商会が用意してくれるから大丈夫だぞ」


 ルクスが火属性魔法で小さな火を出し、枝に火を点けているのを見て、フランツが声を掛けた。


「いえ、夜ご飯ではないです。おやつです」


 フランツは、焚き火の周りにアポーがいくつもあり、少し離れた場所の小さな机でアポーを切ったり、皮を剥いているクラーラとアラン、バート、ラエティティアを見て理解した。


「おやつか」

「はい」

「俺も食べたいな」

「一切れ小銀貨一枚ですね」

「高っ」

「砂糖も使いますから……」

「ああ、なるほど……」


 ルクスは火の番をしつつ、鉄でできた柵のようなものを置いた。


「なんだ、それ?」

「焚き火台です」

「台?」

「王都の商人街の路地裏のアイテムショップで売ってました」

「何に使うんだ?」

「えっ、……鍋を置くのに使います」

「はー、便利だな」

「……風任せさんはいつも料理は?」

「もっぱら狩った魔物……大体ホーンラビットの肉を焼いて塩振って食べてるな」

「……」


 やばぁ、という表情を浮かべたルクス。


「ええ?そんなに引くことか?どこのパーティーも似たようなもんだぜ?むしろ干し肉にあんまり頼ってない俺らの方が凄いぞ」

「……まさか、バッハ商会の食事も」

「バッハ商会はちゃんとした料理を出してくれるな。だから、バッハ商会の依頼は人気なんだよなぁ」

「うん、フランツさんたちもバッハ商会を見習った方が良いと思う」

「あー、俺たちの料理の腕前は壊滅的だから、無理だな……」


 フランツは苦笑した。


「……うん、ごめんなさい?」

「そんな憐れむような目で見ないでくれるか?」

「ふふ」


 二人の横にいつの間にかラエティティアがいた。


「アポーを煮込む準備ができましたよ」

「うん、分かった」


 ルクスはそそくさとクラーラの元にやってきて、砂糖水とアポーが入った鍋を持って焚き火台まで戻ってきた。

 そして、鍋を焚き火台の上に載せて火にかけた。


「後は私の仕事なの」


 クラーラはアポーをゆっくりかき混ぜつつ、ルクスに言う。


「俺も手伝う」


 アランはクラーラの横で火の番をすることになった。


「おっ、フランツ、聞いたか?」


 ゲルトがやってきて、フランツに声を掛けた。


「?何かあったか?」

「村長の娘の病気が治ったらしく、快気祝いに宴だそうだ。今晩は飲めるかもしれないな」

「……俺たちは護衛だから、飲めないぞ、ゲルト」

「!!がーん」

「お前は酒好きの癖に、飲むとすぐ酔うから、絶対に飲むなよ」

「……分かった」


 ゲルトは渋々頷いた。

 フランツとゲルトがじゃれ合いつつ、風任せのメンバーの元に戻っていくのを横目で見つつ、ルクスは段々と色が変わるアポーを眺めていた。


「美味しそうだね」


 バートがルクスに声を掛けた。


「うん、トアル村では食べられなかったご馳走だ」

「トアル村の周辺って木の実も元気ない感じだったもんね」

「ああ、あそこは元々痩せた土地だったんだろうね、ここよりももっと北にあったし」

「小麦も全然実らなかったね」

「あれは、小麦しか植えてないから、土地がもっと痩せたんだろうね」

「……なんで、ヒルネ村はこんなに豊かなのに、トアル村は厳しかったんだろう」

「さっき聞いたんだけど、ヒルネ村は三年前から王国の施策で新しい農法の実験台になってる。つまりは国の補助があるわけ。だから、余裕があるんだろうな」

「……うん」

「まだ、兄さんたちのこと引きずってるのか?」

「うん……」


 ルクスは沈んでいるバートの頭を撫でた。


「兄さんたちの分も、俺らが生きるんだ。バート」


 バートは目を瞬かせ、頷いた。


「うん、ありがとう、ルクス」


 その目には、小さな光が宿っていた。


「終わった?ルクス様、バート」


 クラーラが二人に声を掛けた。


「はい、どうぞ」


 木の小皿に盛ったアポー煮をクラーラはルクスとバートに渡した。


「甘いの食べると元気が出るよ」


 そう言って、クラーラは笑顔を浮かべた。


「「ありがとう」」


 二人は声を揃えて礼を言った。


「食べようか、バート」

「うん」

「「神々の御恵に感謝を」」


 ルクスとバートはアポーを一切れ食べた。


「おいしい……」


 バートは呟いた。


「おいしいね、ルクス」


 涙を流しつつ、バートは、アポー煮を食べた。


「ああ、おいしいな」


 ルクスはバートの隣に座り、その悲しみに寄り添った。

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