第41話 バートの決意
ガタゴト、と幌馬車に揺られている黄金の導はお尻の痛みに悶えて……は、いなかった。
ヘレナが事前に用意してくれていたクッションがあるからだ。
「クッションがなかったら尻が割れてたかもしれないな」
アランが真面目な顔で言う。
「アラン、お尻は元々割れてるよ」
「いや、それ以上に割れるって意味だぞ」
「うん……割れないから。せいぜい痛くなるだけだから」
アランとバートが他愛もない会話をしているのを横目で見つつ、ルクスはマップを眺めていた。
「ルクス様、ぼんやりしてますけど、大丈夫ですか?」
「あ、ああ、ラエティティアには見えないかもだけど、スキルで周囲を確認してたんだ」
「まあ!そうだったんですね、なにかありましたか?」
「いや、周囲には何も……あれ?」
幌馬車の行く手五キロ先の道の近くに赤い人のマークが現れた。
先程まで、マップの範囲外にいたが、範囲内に入ったので表示されたのだろう。
ちなみに、マップは半径五キロ圏内を表示するようになっている。
拡大縮小と対象の詳細の表示もできるので、使い勝手は良いだろう。
ルクスは赤い人のマークをタッチした。
【ウド】
盗賊の一人。下っ端。
ウドから少し離れた場所にも盗賊たちが点在している。
彼らは森の中を通る街道の周囲にいた。
つまり木々などを利用して身を隠しているのだ。
「ラエティティア、ちょっと行ってくる」
「はい、ルクス様」
ルクスは幌馬車から降りて、先頭を走る幌馬車に乗るエーリヒの元にやってきた。
「エーリヒさん」
「どうしたんだい?ルクス君」
「ちょっと、敵を見つけたので、倒してきます」
「え、敵?一人で?」
「行ってきまーす!」
反対されそうな雰囲気を感じたルクスは、そう言い放ちつつ、幌馬車から降りて、物凄い勢いで走っていった。
光属性魔法のオリジナル魔法である光学迷彩を使って周囲から見えなくなったルクスは、空を飛んで、あっという間に五キロ先にやってきた。
森の中に降り立つと、闇属性魔法の【夜蝶の誘い】を使った。
闇でできた真っ黒な蝶々たちが周囲にいる盗賊たちの元に向かい、次々と眠らせていった。
彼らは夜蝶の誘いの効果が切れるまで夢の中だ。
ルクスは盗賊たちを一箇所に集めて縄で縛った。
風属性魔法の飛翔でルクスは眠る盗賊たちと共に飛んで幌馬車の十メートル先に降り立った。
「エーリヒさーん!盗賊捕まえましたー!」
「ルクス君!?」
エーリヒは幌馬車から飛び出して、ルクスの元にやってきた。
「本当に盗賊が……ルクス君、よくやったね」
「いえ」
「ルクス君は幌馬車に戻っていいよ……ちなみに、この盗賊たちは、あと、どれくらい眠ってるのかな?」
「あと五時間は寝てると思います」
「ありがとう」
エーリヒはルクスが幌馬車に入ったのを確認してから、風任せのリーダーであるフランツと話し始めた。
「フランツさん、ルクス君が盗賊を捕まえました」
「!本当ですか」
「ええ、あちらを見れば分かりますが」
「ああ、凄いですね。しかし、一人でですか?」
「ええ、一人でしょうね」
「末恐ろしい少年ですね」
「ええ、それより、盗賊をどうするかなのですが」
「始末は我々がします。盗賊が王都近くの街道付近に出たことを伝書鳩でギルドに報告したいのですが、お借りしても?」
「……ええ、あとで渡しますね」
「ちなみに賞金首はいましたか?」
「私が確認できたのは、一人ですね」
「分かりました。賞金首だけ、首を収納しておきます。賞金はあとでルクス君に渡しましょう」
「すみません、よろしくお願いします」
という会話をルクスは聞いてしまった。
風属性魔法の【風の声】で声を拾ったのだ。
「ルクス様?どうしたました?」
「あ、ラエティティア……」
「お顔が青いですわ」
「うん、ちょっと馬車で酔ったのかも」
「まぁ、では、私の膝で休まれますか?」
「うん……ありがとう、ラエティティア」
ルクスはラエティティアの膝枕に頭を委ね、甘えるような仕草を見せた。
ラエティティアは、その仕草に萌を感じつつ、ルクスの頭を撫でた。
「アラン、クラーラも膝枕……」
「ぅえ?クラーラ?」
クラーラはアランを引っ張って膝枕をした。
「ふふ……アラン、いい子いい子〜」
クラーラはアランの頭をなでなでする。
「はわわ……」
アランは真っ赤になってショート寸前だ。
バートはその様子を見て、とても悲しげな表情で涙を流した。
(いつか絶対可愛くて綺麗な女の子といちゃいちゃしてやる)
と心の中で決意した。




