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ゲーマーはゲームのような異世界に転生して最高の人生を掴むようです  作者: 星海亘
第1章 昔日の記憶は導となる

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第4話 奴隷落ちした元貴族




 ルクスは好奇の目から逃れるべく、「どーもどーも」と言いつつ笑顔を浮かべ、そそくさとその場を去り、表通りに出た。

 表通りに出たルクスは、古着屋に向かった。

 古着屋で自分のサイズと合う子供服と靴を幾つか購入したルクスは、古着屋で着替えてから外に出た。

 上質な子供用の礼装を纏ったルクスは目立つような気がしたが、目立たなかった。黒を基調とした服だったので、地味で意外と目立たないのだ。

 ルクスは若干の不安を感じつつ、とある店に入った。


 アーキン奴隷商。

 この王都で一番大きい奴隷商だ。

 ゲームでプレイヤーは入ることができなかった奴隷商だが、ルクスは入ることができた。現実なのだから当たり前だが。

 ルクスが、このアーキン奴隷商に行くことにした理由は幾つかある。

 ルクスにはこの街に知り合いがいないし、保護者がいないので、保護者代わりになる人が必要だ。しかし、保護者になってくれるような人はいない。だから、保護者のカモフラージュに奴隷を買うことにした。

 そして、ルクスは文字の先生を求めている。学のある奴隷を購入すれば、文字の先生として十分なのでは、と思ったのだ。

 あとは、護衛になって貰うためだ。奴隷は裏切らないので、背中を任せるに値するとルクスは判断した。


「いらっしゃいませ」

「奴隷を見せて欲しい」

「かしこまりました。こちらへどうぞ」


 店員はルクスの服を見てどこぞの金持ちか貴族の息子だと思ってくれたようだ。


「少し不快に感じるところもあると思いますが、こちらに当店の殆どの奴隷がおります」


 広い部屋だった。

 檻がたくさん並んでおり、中には人族や獣人たちが入っている。

 入り口の近くの檻に見覚えのある二人の子供がいた。


(アランと、バート?)


 トアル村で一緒に遊んでいたルクスの幼馴染で同い年の二人の少年だ。


「すみません、あそこの子供二人はいくら?」


 ルクスはなるべく平静を装って店員に聞いた。


「ああ、技能もありませんし、銀貨四枚ですね」

「買おう」


 ルクスは銀貨四枚を店員に渡した。


「お買い上げありがとうございます」

「それと、教養があり護衛にもなる男の奴隷はいるか?」

「こちらに」


 少し奥に入ったところの檻に男がいた。

 憔悴しているが、美しい風貌の男だった。


「没落した貴族で、今は平民しかも借金奴隷ですが、剣の腕は確かで元貴族なので教養もございます。お値段は金貨五枚ですね」

「買おう」


 ルクスは金貨五枚を店員に渡した。


「!私を買うなら妻と、娘もお願いします!!」

「おい!!」


 店員が怒鳴りつける。

 罵声を浴びせようとしているのを見たルクスは口を開いた。


「話を聞こう」

「え?」


 店員は、お客様であるルクスを遮ることはしない。不満そうだが、静かになった。

 元貴族の男は目を丸くしつつ、ルクスに懇願した。


「妻は、とても美しい人です。人妻であろうと高値で売られてしまうでしょう。娘は妻に似てとても美しいです。まだ幼いですが、奴隷として売られた先では酷い目に遭うでしょう……しかし、貴方は大丈夫だと私の直感が告げています。私は私の直感と貴方を信じたい」

「……はぁ、良いでしょう。店員さん、この人の奥さんと娘さんはどこに?」

「特別に個室が与えられております。母親は金貨五十枚、娘は金貨百枚ですね。ただ、二人共美しいのでオークションに掛けることになっておりまして……」

「……おお、そうだ、()()古代金貨を五枚持っていたのだけど、もし、その二人を確実に売ってくれるなら、一枚を店員さんにあげよう」


 本当は数え切れないくらい古代金貨を持っているルクスだが、そんなにあると態々教えれば情報が漏れてどんな目に遭うか分からない。


「私の最大限の力を尽くしてお客様にお売りしましょう。暫くお待ち下さい」


 と言って店員は部屋を出ていった。

 ルクスは「客をここに置いていくのか……」と呟きつつ、元貴族の男と話をすることにした。


「俺はルクスです。貴方は?」

「私は、ベネディクトゥスと申します。家を潰してしまいましたので、家名は名乗れません」

「えっと、どうして没落したんですか?」

魔物暴走(スタンピード)で多くの領民を失い、スタンピードを何とかするために多くの冒険者を雇いました。スタンピードは何とか討伐できましたが、冒険者に払うお金が膨大で、家財を売り払っても払い切れず、借金をして支払いましたが、借金が払いきれず、我々は貴族の身分を返上して奴隷になりました」


 魔物暴走(スタンピード)とは、ダンジョンから魔物(モンスター)が溢れ出て、街を襲ったりする現象のことを言う。


「スタンピードで討伐したモンスターの素材は売れなかったんですか?」

「モンスターの素材は冒険者の取り分ですから……」

「ああ。成程……」


 善良な貴族だったのだろう目の前の男にルクスは同情した。

 善良だから、お金を払おうとして奴隷落ちしたベネディクトゥスなら、人としても信頼できそうだな、とも思った。


「お客様!」


 そこに店員がふくよかな男を連れて戻ってきた。


「お客様が古代金貨四枚で奴隷を購入していただける方でしょうか?」


 ふくよかな男がルクスに話しかけた。


「はい、えっと……」

「失礼致しました。私、この店の店主、ビリー・アーキンと申します」

「あ、私は店員のダンです」

「お前、名乗ってなかったのか?」

「はい、すみません」

「はぁ……(後で説教だな)。本当に失礼致しました、お客様……」

「大丈夫です。それで、古代金貨四枚で買えますでしょうか」

「勿論でございます!」


 ビリーは食い気味で言う。それもそうだ。古代金貨の通常買取金額は大金貨五枚だが、販売価格はもっと高い。オークションに掛ければ更に高くなる。

 二人の奴隷は大金貨十五枚はするが、オークションにかければ、もっと上がるだろう。

 しかし、古代金貨四枚もあれば、二人の奴隷をオークションにかけるよりも利益が高くなる、とビリーは予想した。


「それで、古代金貨は……」

「これで」


 ルクスはビリーの手に古代金貨四枚を握らせた。


「すぐに鑑定して参りますので少々お待ち下さい!」


 ビリーは颯爽と部屋から出ていった。


「お客様……」


 店員のダンが揉み手をして待っている。


「はい、これ」


 ルクスはダンに古代金貨一枚を渡した。


「ありがとうございますぅ、これでこの店から独立できそうですぅ」


 ダンの猫撫声が気持ち悪く、ルクスは笑顔が引き攣った。


「それは、良かったね」


 何とかそう言うと、早く離れて欲しいオーラを出したルクスだが、ダンは気付かず、ルクスに媚びる為、褒め称え始めた。


「いやぁ、お客様は何かが違うと最初から気付いておりました〜。金色の目は理知的ですし、滲み出るオーラがもう、全く違います!」

「あのさ、もうこれ以上は古代金貨は出ないよ」

「いえ、お客様を褒め称えなければ、私の気が済みません」


 ダンは、ルクスの機嫌を取って、これから独立した時の太客にしたいと思っていた。

 逆に機嫌を損なっている気もしないではないが。

 ルクスを褒めちぎり捲るダンを止めたのはビリーだった。


「お客様を困らせるんじゃない!」


 ビリーがダンにげんこつを食らわせた。


「いったぁ、店長……酷いっす」

「酷いのはお前だ、こんな接客をして、私に恥をかかせるつもりか」

「そんなことはないです」

「はぁ……お客様、大変申し訳ありません」

「いえ、大丈夫です。それで、鑑定結果は?」

「勿論、本物でございました。お客様が、今まで購入を決めた奴隷を準備いたしますので、応接室にご案内いたします」


 店主のビリーがルクスを二階の応接室に案内した。


「少々お待ち下さい」


 ビリーが出ていった。

 ルクスは待っている間にセフィロトのパスが全部光っているかどうか確認することにした。

 パスは全て光っているが、まだ強化されていないので、その効果は発揮できていない。


(まあ、セフィロトはやり込み要素みたいなものだからな……)


 セフィロトを強化する為の素材は希少価値が高く、市場には出回っていないとルクスは予想している。

 素材は主にダンジョンの下層から出るので、手に入れるのはレベルを相当上げてからになるだろう。

 ルクスがセフィロトを見ているのは、ただ、現実になったセフィロトがとても美しいからだった。


コンコン


 ルクスがセフィロトを眺めていると、扉がノックされた。

 セフィロトを閉じてルクスは、「どうぞ」と声を掛ける。


「失礼します」


 やってきたのは店主ビリーと店員ダン、元貴族の借金奴隷ベネディクトゥスと奥方らしき美しい女性、娘らしき美しい少女、その美しい二人に見惚れている幼馴染の少年二人たちだった。奴隷たちは皆、一般人と変わらない格好をしている。

 見惚れていてルクスに気づかない幼馴染二人に内心呆れつつ、ルクスは店主の話を聞いた。


・奴隷を殺すことは契約違反だが、主人を助ける為に奴隷が死ぬことは問題ない。

・奴隷を解放することはできるが、復讐される場合があるのでおすすめしない。

・奴隷紋によって奴隷は命令を聞き、逃げ出すことができない。


 という注意点を聞いて、ルクスは奴隷を益々哀れに思った。


(文字とか知識とか学んで身にできたら元貴族の皆さんは解放しよう。幼馴染の二人は……ちゃんと自立できるまで育ったら解放するか)


 この世界の住民からするとルクスはかなりのお人好しだった。


「それでは、こちらに血を一滴程、垂らして下さい」


 インクの入った器を差し出されたルクス。

 ルクスは渡された針を指に少し刺して血を垂らした。

 インクが淡く光る。

 店主はインクに筆を浸して、奴隷たちの鎖骨の下辺りに奴隷紋を描いていった。

 ルクスは描かれた奴隷紋を鑑定した。


【奴隷呪術陣刺青】

特殊なインクで奴隷呪術陣を刺青にしたもの。スキル呪術を持つ者にしか施すことができない。

この刺青の血の主人の命令は絶対。命令違反すると激しい頭痛に襲われる。

自殺することもできない。

主人の合意があれば、神聖術の【解呪】で消すことができる。


 成程、と思いつつ、解放するときは神殿に行こうと決めた。


かせは付けますか?」

「いえ、大丈夫です」

「では、店頭までお送りします」

「ありがとうございます」


 店頭まで送られたルクス一行。


「またのお越しをお待ちしております」


 深々とお辞儀するビリーとダンに見送られ、ルクスたちは眠り猫亭に向かった。


「いらっしゃいませ」


 受付にやってきたルクスは従業員に聞く。


「あの、三人部屋を二部屋取りたいのですが」

「三人部屋二部屋ですね、かしこまりました……スタンダードの三人部屋が二部屋が空いておりますね。何泊されますか?」

「えっと、三泊で」

「では、銀貨六枚になります」


 ルクスは従業員に銀貨六枚を渡した。


「確かに頂きました。それでは、こちらの鍵をどうぞ」


 二つ鍵を受け取ったルクスは奴隷たちと共に一階にある三人部屋にやってきた。


「とりあえず、皆でこの三人部屋に入りましょう」


 ルクスは一つの部屋に全員で入るよう促した。

 ぞろぞろと全員で入り、部屋に鍵を掛けたルクス。


「ベッドでもなんでもいいから座れるところに座ってください」


 奴隷たちはそれぞれベッドに腰掛けた。


「さてと、アランとバートはいい加減、そのお嬢さんを見つめるのは止めなさい」

「「はっ!ルクス!?」」

「やっぱり気付いてなかったのか……嘆かわしい」


 ルクスはわざとらしく溜息を吐いた。


「いやー、仕方ないだろ?こんな別嬪さん見たこと無いからさぁ」

「うんうん、超別嬪さんだもんね」

「お前たち、お嬢さんに手を出すんじゃないぞ?これは命令だからな」

「「はーい」」


 仲良く返事をしたアランとバートは首を傾げた。


「ところで、なんで俺たち、ルクスに買われたんだ?ルクスだって口減らしの対象だったろう?」


 アランはルクスに尋ねた。


「ああ、俺は逃げて、お宝を拾ったんだ。お前たちを買えたのは、お宝のお陰だな」

「へぇ!凄いな、ルクス!」

「まあな」


 ルクスは気安い遣り取りに笑顔を浮かべた。


「そういえば、俺たち以外にこの人達を買ったのは理由があるのか?」


 アランはそう言って元貴族の一家に目を向けた。


「ああ、彼らには保護者代わりになって貰おうと思っていてね、それと先生になって貰いたくてさ」

「それって、ルクスだけだよな?」

「安心しろ、お前たちも一緒に勉強するんだ」

「「うえぇ」」


 明らかに嫌そうな声を上げた幼馴染たちにルクスはジト目を向けた。


「教育が受けられるのは恵まれたことなんだぞ、絶対、勉強させるからな」


 二人は諦めたように項垂れた。


「あの……私たちは、ルクス様とお二人の勉学の講師のようなものになる、ということでしょうか?」

「ああ、すいません、ベネディクトゥスさん。そうですね、ベネディクトゥスさんたちには勉強を教えて貰いたいんです。それと、ベネディクトゥスさんには、俺たちがモンスターと戦うときの護衛になって欲しいんです。良いですか?」

「その、勉強を教えることは問題ないと思いますが、三人を護衛する、というのは状況によっては大変だと思います……」

「はは、無理はさせませんよ。最初は俺だけの護衛になっていただきます。俺が十分強くなったら、二人を強くする為に、俺と一緒に護衛してもらうつもりです」

「それなら、大丈夫ですね……」


 ほっと、安心した表情を浮かべたベネディクトゥスは、真剣な表情を浮かべ、ルクスに進言した。


「ルクス様、どうか、我々のことは呼び捨てにし、敬語も使わないよう、お願いします」

「どうして、ですか?」

「我々は奴隷です、主人が奴隷に敬語を使うことは序列を乱すことに繋がります」


 と言って、ベネディクトゥスは頭を垂れる。


「分かった、ベネディクトゥス」


 ルクスはそう言って、頷いた。


「ありがとうございます、ルクス様」

「いいや、教えてくれてありがとう、ベネディクトゥス。では、ベネディクトゥス、この鍵を」

「宿泊部屋の鍵、ですか?」

「隣の三人部屋の鍵だ。家族水入らずで、ゆっくり話すと良い」


 ルクスがそう言うと、三人は「ありがとうございます」と声を揃えて、お礼を言うと、部屋を出ていった。

 幼馴染の二人は「ああっ!俺たちの癒しが……」とか言いながら嘆いていた。

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