第36話 星の飴
デザートワームキングの魔石と、宝箱から出た金平糖のような形の虹色の飴──【星の飴】をルクスはアイテムボックスに入れた。
砂漠には一つの魔法陣が展開されていた。
「ルクス様、この魔法陣は?」
「これは、地上に戻る為の魔法陣だよ」
「まあ、では、帰れるのですか?」
「うん」
一行はほっとし、息を吐いた。
「逆に、奥の階段を下りると次の階に行けるけど……」
「絶対、帰ろうぜ、ルクス!」
アランが力強く却下した。
「あ、うん、帰ろうか」
ちょっとだけ、ルクスは残念そうに階段を見つつ、黄金の導のメンバーと共に魔法陣の上にやってきた。
光が彼らを包む。
一瞬の後、彼らはダンジョンの外、廃坑にいた。
「良かった、戻ってきた……」
バートが心底ほっとしたような表情を浮かべ、溜息を吐いた。
「ああ、良かった……」
アランはしみじみと呟いた。
「うん、良かったね」
クラーラはアランに微笑みかけた。
アランはクラーラの笑みに癒された。
「ルクス様、帰りましょう」
「うん」
ラエティティアに促されたルクスは、黄金の導のメンバーと共に廃坑を後にした。
戻ってきた黄金の導は冒険者ギルドでデザートワームキングの魔石を売った。良いお値段(金貨三枚)になった。
屋敷に帰ってきた彼らは、恒例の鑑定でステータスを確認した。
アラン・バート・クラーラ・ラエティティア・アスターは元々レベル十五だったが、今はレベル二十五になっている。
ルクスはと言えば、
元々ルクスは四十六レベルだったのが、五十五レベルと、九レベル上がった。
因みに剣士はいつ頃、昇格できるのかといえば、剣士のジョブレベルが百になれば昇格できる。
ジョブレベルはレベルとは違い、ジョブに関するありとあらゆることを行うことによって上がる。
他のゲームでは昇格することは容易だったようにルクスは記憶している。
ルクスは、Sefirot Chronicle特有のシステムだと思って、昇格については気長に頑張るつもりだ。
余談だが、鑑定ではジョブレベルが見えないので、ルクスにもジョブがいつ昇格できるかは不明だ。
「じゃあ、一旦解散するけど、みんなはこれからどうする?」
ルクスはみんなに問う。
「俺は、夕飯の用意の手伝いかな」
「私も調理場で手伝う」
アランとクラーラは調理の手伝い。
「僕は魔法の勉強がしたいから、書庫に行くよ」
バートは真剣な表情でそう言った。
ダンジョンで見たルクスの魔法に刺激を受けたようだ。
「私は母の手伝いに」
ヘレナの手伝いといえば、裁縫関係だろう。
「そっか、俺はベネディクトゥスと用事があってね」
今朝の授業でルクスはベネディクトゥスと約束をしていたのだ。
「じゃあ、また後で」
「「また後で」」
ルクスたちは解散し、それぞれの目的地に向かった。
談話室にやってきたルクスは中に入った。
因みに、ルクスの所有するこの屋敷には、十の寝室と、十の客室、十の使用人部屋がある。
十の寝室は最上階の三階にあり、様々なデザインの内装になっている。
最上階の奥にある主人の部屋らしき部屋は金の模様が描かれた濃い赤い絨毯が敷かれ、壁には金の模様が描かれた白い壁紙が使われている。
広々とした部屋に赤と白を基調としたキングサイズのベッドなどの家具が置かれている。
主人の部屋の近くにあるベネディクトゥスとヘレナの部屋は濃い緑と白を基調とした内装で、ベッドが二つと様々な家具が置かれている。
ラエティティアの部屋は両親の部屋の近くで、白と銀を基調とした内装で、ベッドが一つと様々な家具が置かれている。
クラーラの部屋はラエティティアの部屋の近くで、落ち着いたブラウンの家具とベージュの壁紙、焦げ茶の絨毯が敷かれている。ベッドは一つだ。
クラーラの両親、ヴォルフとアデリナの部屋はクラーラの部屋の隣で、内装も同じ。ベッドは二つだ。
アラン・バートはちょっと離れた部屋で、クラーラの部屋と同じような内装。ベッドは何故か四つだ。
どの部屋にもお風呂が付いている。
屋敷の排水施設はしっかりしているので、各部屋にお風呂を付けられるのだ。
因みに使っていない十の客室は二階にあり、十の使用人部屋は一階にある。
一階には大浴場、談話室、書庫、食堂、調理場がある。
離れには倉庫がある。
馬車を停める空間や、厩もある。
これで小さめの屋敷というのだから、普通の屋敷は相当広いのだろう。
閑話休題。
談話室にはベネディクトゥスがいた。
「ルクス様、こんにちは。今日の冒険はいかがでしたか?」
「こんにちは、ベネディクトゥス。今日は大変だったよ」
ルクスはモンスターハウスのことと、デザートワームキングのことをベネディクトゥスに話した。
「左様でございましたか……今回は不可抗力でしたが、あまりご無理なさらないでくださいね」
「うん。無理はしないようにするよ」
「ところで、ルクス様、今朝仰っていた《《頼み》》というのは……」
「うん、実はね」
ルクスはグラジュスの影と契約したことをベネディクトゥスに話した。
「一年で大金貨百枚、それを五年の契約ですか……確かに、ルクス様の資産を考えると払える金額ですが……」
そこまでの価値はあるのか?とベネディクトゥスは問いたいのだろう。意を汲んだルクスは頷いた。
「正確な情報はとても価値がある。貴族だったベネディクトゥスなら分かるだろう?」
「確かに正確な情報には大きな価値があります。しかし、各国の情報というのは、些か広すぎるのでは?」
「いずれは世界を旅したいんだ。俺にとっては必要な情報なんだよ」
各地のボスを倒しまくるのに、地形なども大事だが、貴族の横やりが入ったりしないか情報を集めることも大事だとルクスは思っていた。
情報があればあるだけ自分の役に立つだろう、ということも。
「左様でございますか……分かりました。それで、私は何をすれば良いのでしょうか?」
ルクスは微笑みを浮かべた。
「ベネディクトゥスには連絡役になって欲しいんだ。良いかな?」
「勿論です」
ベネディクトゥスは恭しくお辞儀をした。
自室に戻ってきたルクスはソファーに座り、アイテムボックスから【星の飴】を取り出した。
ルクスは自分のスキルである鑑定で星の飴を鑑定した。
【星の飴】
舐め終えると限界突破できる飴。幻想級。
ルクスの鑑定は魔導具とは違うようだ。幻想級でも鑑定できたことにルクスはほっとした。
そして、ゲームと同じ効果があることにも安堵した。
ルクスは限界突破すべく、星の飴を舐めた。
口の中で甘さが弾け、蕩けていく。
舐め切ると、ホログラムウインドウが現れた。
[限界突破しました]
ルクスは自分を鑑定した。
【ルクス・フォン・シュトラウス】
種族︰人族
性別︰男
年齢︰10歳
レベル︰55☆
ジョブ︰剣士
スキル︰アイテムボックス マップ 鑑定 生活魔法 剣術 剣の心得 全属性魔法
称号︰転生者
装備︰ミスリル剣 ワイバーンの革鎧 守りの指輪 布の服 丈夫な半長靴 死防ぎのミサンガ 言葉の指輪 黄昏の指輪 死防ぎのタリスマン
状態︰良好
レベルの部分に『☆』がついた。☆は最大九個つき、十個になると『★』になる。★はルクスの記憶では、最大十個つく。
☆一つで、十レベルの限界突破という意味がある。
つまり、最大千レベル上乗せすることができる。
基本レベルの限界は百なので、百を超えるまでは実感は難しいかもしれない。
(とりあえずの目標はレベル百、ジョブの昇格、それから廃坑のダンジョン攻略かな……有用なアイテムとか装備も集めないと……)
冒険による疲れか、ルクスはソファーでうたた寝をした。
夕食の時間になると、黄金の導の面々が部屋を突撃してくるのだが、今のルクスは予想もしていない。
ただ、健やかに眠っていた。




