第30話 パーティー結成
次の日、いつも通り、授業を受けたルクスは、ラエティティア・アラン・バート・クラーラの授業が終わるのを待ちつつ、魔導書を読んでいた。
全員が談話室に揃った頃、ルクスは彼らに告げた。
「じゃあ、みんなで魔物を倒しに行こうか」
この世界での魔物は基本的に人族や亜人族の敵対者という立ち位置で、その中でも、動物に似ている魔物は魔獣、虫に似ている魔物は魔蟲、知能が高く人族や亜人族に似た魔物を魔族という。
「「!!」」
昨日、装備を買ったばかりなのに、もう冒険に行くのか、と驚く彼らに、ルクスは装備を渡してく。
「も、もう、魔物を倒しに行くのか……」
「怖気づいたの?アラン」
「そ、そんなわけ無いだろ!ルクス」
「僕はちょっと怖いな」
バートの顔はちょっと青褪めている。
「俺もベネディクトゥスもいるから大丈夫だよ」
「う、うん……」
顔色が全く変わらないバートを横目にルクスは女性陣に声を掛けることにした。
女性陣は楽しそうにお喋りしている。
(うん、女は強し、だね)
男性陣よりも余程、肝が据わっている女性陣だった。
「僕も行って良いかな?」
と、どこからともなく現れた小妖精王子のアスターがルクスに尋ねた。
「勿論」
「ありがとう。とても楽しみだ」
アスターは微笑んで、ルクスの肩に乗った。
何だかんだで準備ができたルクスたちは、まず、冒険者ギルドで冒険者として登録し、ゴブリン討伐の依頼を受けた。
ベネディクトゥスとアスターもついでに冒険者登録し(小妖精も冒険者登録できることにルクスたちは驚いていた)、ベネディクトゥスに引率されるように子供たち(ルクス含)は王都近くの森にやってきた。
マップを眺めているルクスはゴブリンが二匹やってくるのを確認した。
「もうすぐゴブリンが二匹こっちに来るぞ」
「お、おう」
「ひぃ」
アランとバートはビビっている。
ラエティティアが手を上げた。
「歌でバフを掛けても良いですか?」
「んー、良いよ」
ルクスはラエティティアに許可を出した。
ラエティティアの澄んだ歌声が聖なるマイクを通して、その場に響いた。
「【戦いに赴く勇敢な者らに、どうか神々の祝福を】」
これは戦いの歌という歌で、STR・MND・LUKをUPさせる効果がある。
ついでに、アスターも小妖精が使える魔法で全員にバフを掛ける。
全員が、淡い光に包まれた。
「おー、なんか、大丈夫な気がしてきた」
と言いつつ、アランは盾と剣を構えた。
そのとき、藪の向こうからゴブリン二匹が現れた。
「こいや、ゴブリン共!【挑発】」
アランの持っている盾が淡い赤の光に包まれた。
騎士の持つ盾術の一つ、挑発だ。
この技は、敵のヘイトを集める技で、敵は盾を持つ者に攻撃を集中させる。
ゴブリンは盾に吸い寄せられるようにやってきて、棍棒で盾を叩き始めた。
「クラーラ!」
「はーい!」
飛び出したクラーラは華麗な動作で二匹のゴブリンの首を刈り取った。
「アラン、ナイス」
「クラーラもな」
「……ちょっと嫌な感触だったから、頭撫でて?アラン」
「お、おう」
アランは頬を赤らめつつ、クラーラの頭をなでなでした。
「僕、なにもできなかった……」
「じゃあ、俺と討伐部位を剥ぎ取ろうか」
「え」
ルクスはゴブリンの右耳を斬り落とし、拾って麻袋に入れた。
「ほら、バートも」
バートは渡された短剣とゴブリンの右耳を交互に見て、嫌そうな顔をしつつも、もう一匹のゴブリンの右耳を斬り落として、麻袋に入れた。
「うぅ、嫌な感触だった……」
「バートはしばらく剥ぎ取り係かな」
「えぇ!?」
「後衛だから、斬ることはあんまりないだろうし、慣れておいた方が良いからね」
「そんなぁ……」
バートは泣きそうな表情で血塗れの短剣を見詰めた。
そんなバートにルクスは布の切れ端を渡した。
「これで血を拭った方が良いよ。切れ味悪くなるから」
「うん……」
バートは短剣に付いたゴブリンの血を拭う。
「ルクス様、私も後衛ですので、剥ぎ取りします」
「ラエティティア……うん、分かった。じゃあ、次からお願いしようかな」
と言いつつ、ルクスはアイテムポーチから短剣を取り出してラエティティアに渡した。
「ありがとうございます」
ラエティティアは微笑んだ。
「よし、どんどん、討伐して行こー」
ルクスたちはその後、合わせてゴブリン十匹を倒した。
冒険者ギルドでゴブリンの討伐証明(右耳)を提示したルクスたちは、報酬として銅貨十二枚を手に入れた。
ルクスたちは一人二枚になるように銅貨を分けた。
ベネディクトゥスは受け取るのを辞退したので、残り二枚は共有の財産とした。
「皆はパーティーを組んでるかな?」
受付のフリッツがルクスたちに尋ねた。
「「パーティー?」」
「うん、パーティーでしか受けられない依頼もあるから、組んでおくと便利だよ」
「どうする?」
アランがルクスに尋ねた。
「ま、組んでおくか」
「そう言うと思った」
「じゃあ、パーティーの申請用紙に記入してね」
フリッツは羊皮紙とインク壺、羽ペンをルクスに渡した。
カウンターはルクスにとっては少し高いので、カウンターでは書けそうにない。
それに気付いたベネディクトゥスは「失礼」と言ってルクスを抱き上げた。
「此処から書けますか?」
「……うん」
抱き上げられて書くこととなったルクスは無の境地へ至った。
そして、黙々と必要事項を記入した。
「パーティー名はどうする?」
死んだ魚のような目をしたルクスがメンバーに問う。
「五人だから、【五人組】?」
クラーラが真っ先にそう言った。
「それなら【五人の勇者】とか、どうだ?」
アランが続く。
「いやいや、それなら【五人の冒険者】とかは?」
バートの言葉にアランとクラーラは「ないない」と反応した。
「二人だって似たようなもんじゃん」とバートは呆れたような表情を浮かべた。
「僕のこと忘れてない?」
「「あ、アスター」」
アスターは不満げだ。
「じゃあ、【五人と小妖精】とか?」
バートがそう言うが、アランやクラーラがいまいちだと却下した。
「……【黄金の導】はいかがでしょうか?」
ラエティティアが呟く。
「黄金ってことは、ルクス様のことですか?」
バートはラエティティアに聞いた。
「はい、私たちを教え導いてくださるルクス様のことをイメージして、言葉にしてみました」
「でも、パーティー名ですし、五は入れた方が良いような」
「あら、もしかしたら六人になるかもしれないのに、安易に五を入れてしまったら、後で入る方が可哀相ではないですか。それに、アスターさんも入れないと不公平ですし」
「あ……確かに、それもそうですね」
バートは納得して引き下がった。
「ルクス様、いかがですか?」
ラエティティアは目を輝かせて、ルクスに伺いを立てる。
「……うん、良いと思う。書いておくよ」
「ありがとうございます!」
ルクスはパーティー申請用紙に記入し、フリッツに渡した。
「はい、ありがとうございます。確認ですが、パーティー名は【黄金の導】、リーダーはルクスさん、パーティーメンバーは、ラエティティアさん、アランさん、バートさん、クラーラさんで、よろしいでしょうか?」
「「はい」」
「では、手続きしますので、皆さんのギルドカードを預かりますね」
「「はーい」」
ルクスたちはフリッツにギルドカードを渡した。
ベネディクトゥスに降ろしてもらったルクスはお礼を言いつつ、ベネディクトゥスを見上げた。
「ナチュラルにパーティーメンバーから外してごめんね。ベネディクトゥスには、授業とか家計管理に集中して欲しいんだ」
「かしこまりました。しかし、結構な余裕がありますが……」
「もしかしたら、仕事を増やしちゃうかもしれないし、余裕がある方が良いんだ」
「分かりました」
会話をしている内に手続きが終わり、ギルドカードが帰ってきた。
ギルドカードには、パーティー名とパーティーランクが刻まれている。
パーティーランクはリーダー以外のメンバー全員が鉄級なので、鉄だ。
「はい、みんな、頑張ってね」
「「はい」」
仲良く返事をするルクスたちを見て、フリッツはほっこりした。




