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ゲーマーはゲームのような異世界に転生して最高の人生を掴むようです  作者: 星海亘
第1章 昔日の記憶は導となる

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第24話 指名依頼と小妖精




 一時間程で解放されたルクスは、冒険者ギルドの近くにある食事処兼酒場でお昼ご飯を食べた。

 正午の鐘が鳴り、暫くした頃に食事処兼酒場を出たルクスは、冒険者ギルドにやってきた。


「あ、ルクス君」

「フリッツさん、こんにちは」


 フリッツのいる受付にやってきたルクスを出迎えたフリッツは、一枚の小さめの羊皮紙を取り出した。


「ルクス君に指名依頼が来ているよ」

「あ」


 ルクスは指名依頼と聞いて、薬師エルナが指名依頼を出すと言っていたことを思い出した。


「薬師のエルナさんからの指名で、レーア草の採取依頼が来てるよ。レーア草は珍しい薬草だから依頼達成はいつでも良いそうだよ」


 受けるかい?とフリッツはルクスに優しく問う。


「はい!やります!」


 ルクスは元気よく承諾した。


「レーア草を見かけたことのある冒険者の証言をもとに作った地図があるのだけど、いる?」

「あ、欲しいです」

「ちょっと分かりにくいかもしれないけど……」


 フリッツは大きめの布の切れ端をルクスに渡した。

 そこには地図のようなものが描かれていた。

 レーア草は王都アルヒの東側の森の奥にある泉の近くで見られることがあるようだ。


(ここ、()()()()()()()()()の近くだな)


 ルクスはこの後、行ってみようと決めた。


「地図にもあるように、レーア草は森の奥でよく見られる。森の奥には強い魔物も出るから、レベルを上げて準備してから向かった方が良いね」

「(普通は)そうですね」

「……無理は禁物だよ?」

「はい、大丈夫です」


 なんか心配だなあ、とフリッツは呟く。


「ルクス君。とりあえず、指名依頼の手続きをするから、ギルドカードを提出して欲しいな」

「はい」


 ルクスは冒険者ギルドカードをフリッツに渡した。フリッツは、指名依頼の手続きを済ませた。


「はい、ありがとう」


 フリッツからギルドカードを受け取ったルクスはお辞儀した。


「ありがとうございました。行ってきます」

「行ってらっしゃい」


 ルクスはフリッツに見送られ、冒険者ギルドを出た。


「さてと、()()のついでにレーア草、採取しに行きますか」


 そう言って、ルクスは王都アルヒを出て、森に向かった。




 森の奥への道のりは平坦なものではない。

 ゴブリン・ホーンラビット・ウルフ・トレント・オークなどなど、様々な魔物が現れる。

 ルクスはそれらの魔物を切り捨て、ゴブリンは魔石と右耳だけ取って、他は死体ごとアイテムボックスに入れた。

 やがて、ルクスは美しい泉に辿り着いた。

 この泉に辿り着いた時点で、ルクスのレベルは三十一になっていた。

 泉の水を一口飲んだルクスは、近くに生えている小さな紫色の花を咲かせた草を鑑定した。


【レーア草】

花から根っこ全てがポーションの素材になる珍しい薬草。

中級治癒ポーションの材料。


 ルクスはレーア草を採取し、麻袋に入れると、アイテムポーチに仕舞った。

 ルクスは泉の前に立ち、泉を鑑定した。


小妖精(フェアリー)の泉】

小妖精たちの世界に繋がる入口が近い為、小妖精の泉と呼ばれるようになった。特に効果はないが、ミネラルたっぷりの美味しい水が飲める。


 ルクスはアイテムボックスから、小妖精の剣を取り出した。

 メインストーリーでは、勇者と共に小妖精たちの世界に向かい、小妖精の秘宝である小妖精王の指輪を借りるのだ。勿論、小妖精たちの依頼を達成する必要があるが。

 小妖精王の指輪には状態異常無効の効果があるので、プレイヤーたちは勇者を羨ましがり血涙を流した者もいたとか。

 まあ、メインストーリー完結後に似たようなアイテムを手に入れられるようになるので、僅かな差だと言うプレイヤーもいた。

 ルクスの目的は小妖精王の指輪ではなく、小妖精自身にある。

 メインストーリーでは勇者が小妖精王の指輪を得るが、プレイヤーは気に入った小妖精を連れて行くことができた。

 小妖精によって属性が違い、やれることも変わるので、検証班が大変だったという記憶がルクスにはある。

 ルクス自身はプレイヤーっぽいがこの世界の住民でもあるので、小妖精を連れて帰れるかは微妙なところだったが、小妖精たちの世界を見に行きたかった。

 ルクスは小妖精の剣を掲げ、言葉を紡ぐ。


「我、善なる心を持つ者也。開け、小妖精の扉(フェアリードア)


 メインストーリーで勇者が唱えた台詞をルクスは唱えた。

 小妖精の剣が光となり、その光が収束して丸い光の玉になった。

 光の玉はふわりと舞い、何かにぶつかって弾けた。

 すると、小妖精の泉の前に、白い重厚な扉が現れた。

 ゆっくりと開かれる扉にルクスは入っていった。


「わぁ」


 どこまでも広がる美しい青空、大地には色とりどりの花が咲き誇っている。

 だが、ルクスは様子がおかしいことに気付いた。


(ストーリーだと、入口にも小妖精たちがいっぱいいたのに、今は小妖精の姿すら見えない)


 何かあったのかもしれない、とルクスは森の向こうに(そび)える小妖精の城に向かった。

 小妖精の城の前には警戒している小妖精の兵士たちがいた。


「何者だ!」

「えっと、人族のルクスと申します。あなた方の王様に謁見できたら、嬉しいのですが……」

「今は緊急事態だから、無理だ」

「緊急事態?」

「そうだ、オーガが小妖精界(フェアリーワールド)に攻め入ってきたんだ」

「オーガ……」

「分かったら、帰ると良い」

「その、オーガ、俺が倒しても良いですか?」

「なっ!オーガはお前よりも遥かに大きいし、強いんだぞ!?お前では無理だ」

「やってみないと分からないと思いますよ?」

「……そこまで言うなら、やってみるが良い。今、オーガは……」


 兵士は状況をルクスに伝えた。

 今の状況を簡単にまとめると以下の通り。


・小妖精の通り道で小妖精を捕まえたオーガがその小妖精に入り口を開けさせて小妖精界に侵入

小妖精王(フェアリーキング)と小妖精兵たちが小妖精を助け出す

・小妖精王がオーガの動きを封じている←今ココ


「動けないオーガなら難なく倒せそうですね、行ってきます」


 ルクスは小妖精王の城の横にある西の森に向かった。

 兵士の話では西の森にオーガがいるのだ。

 マップにも西の森にオーガがいることを確認しているルクス。

 簡単にオーガ十体と小妖精王の姿を見つけた。

 ルクスはミスリル剣を抜いて、動けないオーガと対峙する。

 ミスリル剣に魔力を流したルクスはオーガが硬そうだな、と思ったので、剣技を使うことにした。


「【一閃】」


 オーガ三体がルクスの一閃により、倒れ伏し、事切れた。


「なっ、このガキ!!」


 オーガたちは激情に任せて動こうとするが、小妖精王の力によって動けない。

 その間に、ルクスは残りのオーガ七体を倒していった。

 オーガの死体をアイテムボックスに仕舞ったルクスは、小妖精王らしき王冠を被った小妖精に話しかけた。


「貴方が小妖精王(フェアリーキング)ですか?」

「いかにも、私が小妖精王(フェアリーキング)オベロン。人族の幼き者よ、我らの世界を守ってくれ、本当にありがとう」

「えっと、どういたしまして」

「礼をしたい。我らの城に招いても良いか?」

「勿論です」


 これからの冒険の相棒になる小妖精がゲットできるかもしれないと思うと、ルクスは機嫌良く王城に向かった。

 王城は小妖精の大きさに合っておらず、とても大きく、まるで人族の王城のようだった。


「驚いたであろう、この城は小妖精の王城なのだが、巨人族も入れるように設計されているのだよ。見えない部分は小妖精に合わせているがな」


 小妖精王自らルクスを案内して謁見の間までやってきた。

 玉座は人族の玉座と同じくらいのサイズで、部屋に合わせて作ったものだとよく分かる。


「さて」


 玉座に座った小妖精王はルクスに笑みを向けた。

 ルクスは自然と跪いていた。


「我らの世界を救ってくれたルクス殿には【小妖精王の指輪】を贈ろう」


 ルクスは冷や汗を掻く。


(それって勇者が借りるやつーー!!)


 ルクスはがばり、と顔を上げる。


「恐れながら、陛下、その指輪は陛下の大切な品かと存じます。そのような品をいただくのは、(いささ)か荷が重いかと存じます」

「ふむ、しかし、それ以上の品は……」

「私は、私にとっての相棒のような存在を望んでおります」

「ふむ、ルクス殿は小妖精を所望しているのだな?」

「……はい」


 謁見の間に控えている兵士たちがざわついた。


「静まれ」


 小妖精王の言葉で、謁見の間は静まり返った。


「ふむ、そうだな、ルクス殿には我が息子を預かっていただこう」

「?」

「アスター」


 小妖精王の玉座の近くに立っていた少年っぽい小妖精がルクスの近くにやってきた。


「次男のアスターだ。ルクス殿の旅路に同行させてやってくれ、それと」


 小妖精王は配下に目配せする。

 配下がささっと動いたと思うと、その配下の両手には、小妖精には大きな瓶が二つ現れた。

 一つの瓶には金色に輝く粉、もう一つの瓶には、金色に輝く水が入っている。


「小妖精の鱗粉と、小妖精の涙だ。受け取りなさい」

「ありがとうございます」

「アスターの準備は半刻程で終わるだろう。それまで客間でゆるりと過ごされよ」

「はい」


 ルクスは兵士たちに連れられ、客間にやってきた。

 持て成しを受け、あっという間に半刻が過ぎ、ルクスはアスターと対面した。

 謁見の間ではよく見えなかったが、アスターは金髪に緑色の瞳の美少年だった。


(将来は女泣かせ……否、女小妖精泣かせになるだろうな……)


 などと想像しつつ、ルクスは声を掛けた。


「アスターさん、よろしくね」

「こちらこそ、よろしく、ルクス殿。さんは無くても良いよ」

「おー、じゃあ、アスター、よろしく。俺も殿はいらないよ」

「分かった、ルクス」


 あっ、そうそう、とアスターはリュックから何かを取り出した。


「ルクス、手を出して」

「?こうかな」


 アスターがルクスの掌に何かを置くと、その何かはニョキニョキ大きくなり、金色の指輪になった。


「これは?」

「言葉の指輪。これがあれば相手の言葉が翻訳されるし、自分の言葉も翻訳される便利な指輪だよ」


 一瞬、ルクスの脳裏に青狸のこんにゃくが過った。


「へぇー、あ、じゃあ、小妖精は皆持ってるのかな?」

「ううん、持ってるのは王族くらいかな」

「え、でも普通に話せてたよ?」

「それは、この小妖精界の領域にいるからだね。不思議だけど、この世界では言葉が通じるんだよね」

「そうなんだ」

「そう、でも外の世界では通じない。だから、この指輪をして欲しいんだ」

「分かった」


 ルクスは右手の小指に指輪を嵌めた。


「ありがとう」

「でも、いつか、小妖精の言葉も話せるように頑張るよ」

「んー、小妖精言語は難しいよ?」

「まあ、何とかなるよ」

「本当かなー?」


 二人は笑い合った。

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