第16話 ツンデレ?勇者
ルクスはスラム街の外側にある端の家にやってきた。
今にも壊れそうなボロい木造の家だ。
「レヴァナ、大丈夫か?」
「うん、今日は気分が良いの」
中を覗くと、勇者が灰色の髪と赤の瞳を持つ少し吊り目の美少女を介抱しているのが見える。少女の右腕は黒く変色している。
そこで、ルクスは思った。
(どうやって声を掛けよう……)
悩んでも仕方がないので、ええいままよ、とルクスは声を掛けた。
「すみません」
「っ!誰だ!?」
勇者が警戒して声を上げたので、ルクスは姿を現した。
「あの、通りすがりの者、です」
自分でも何を言っているのか、とルクスは思いつつ、言う。
「……何か用があるのか?」
「その、そちらのお嬢さんの肌が一部黒くなっているのが見えて……。俺、同じような症状を見たことがあるんです」
「!!本当、ですか?」
少女が反応した。
「ええ、この腕輪を着ければ治ると思いますよ」
そう言ってルクスは青い宝石の付いた腕輪を取り出した。
【解呪の腕輪】
着用した者の呪いを一度だけ、解呪することができる。※強い呪いの場合、呪詛返しになる。
因みに、この腕輪もアルヒ遺跡でルクスが取った財宝の中にあった。
「そんな怪しい腕輪、着けるわけが……」
「着けます」
「レヴァナ!?」
「シルウェステル、私はこの病を治せるなら、やれることをやりたいの」
「レヴァナ……分かった」
勇者はルクスから腕輪を引っ手繰るように取って、少女に渡した。
少女が腕輪を身に着けると、腕輪が眩い光を放つ。その光は少女を包み込んだ。やがて、黒い何かが飛び出して、屋根をすり抜けてどこかに飛んでいった。
(呪いが強すぎて呪詛返しになったか……吸血鬼のこの娘を呪っていた吸血鬼に呪いが返っていったんだな)
少女は吸血鬼の真祖だ。その力に嫉妬した吸血鬼が少女を呪っていたことを公式ファンブックで知っていたルクスはそう思った。
「わぁ!身体が軽い!あははっ!」
肌が白くなった少女はぴょんぴょん飛び跳ねた。
暫くして落ち着いた少女はルクスに深々と頭を下げた。
「病を治していただき、本当に、ありがとうございました。お礼なのですが、このネックレスで」
少女は身に付けていたネックレスをルクスに渡そうとした。
「あー、いいです、俺には必要ないですから」
「でも……」
「大丈夫です。それより、貴女はずっとこのスラム街にいるつもりですか?」
「えと、私は病気でしたし、吸血鬼なので、街中に入れないと……」
「大丈夫だと思いますよ。もし良かったら、俺の家で働きませんか?」
「!」
少女が是非!と言いそうになったとき、勇者が声を上げた。
「レヴァナ!」
「シルウェステル?」
「そいつの家に行くくらいなら、僕の家に来て欲しい」
「でも……」
レヴァナはシルウェステルの家のことを知っているので、言い淀む。
「何とかする。父上を説得するから」
縋るような目でレヴァナを見るシルウェステル。
その目に負けたレヴァナは、苦笑しつつ、頷いた。
「……分かった。行くよ」
シルウェステルはぱっと明るい表情を浮かべた。
「!じゃあ、今から行こう」
「今から?でも、彼にお礼をしないと……」
「そうだな、忘れるところだった……君はなんて名前なのかな?」
愛しの少女を取られそうになったからか、勇者の言葉は若干刺々しい。
「ルクスです。あなた方は?」
「僕はシルウェステル・アルヒ。この国の王子だ」
「私はレヴァナです」
「ルクス。後日、王城に登城するように。これを持って、僕の名前を言って、招かれたと門番に伝えれば入れるだろう」
シルウェステルはルクスに金色のメダルを渡した。メダルには、一本の剣と獅子が刻まれ、獅子の目に青い宝石がはめ込まれている。
「……レヴァナの命を救ってくれて、ありがとう」
シルウェステルはそう言って、レヴァナと共に小屋から出て行った。
「……ツンデレ?ま、いいか。帰ろう」
ルクスはスラム街から王都に戻って、屋敷に帰ってきた。




