第14話 料理人を求めて
翌日、金曜日に相当する龍日。ルクスは料理人を探すべくベネディクトゥスと共にアーキン奴隷商にやってきていた。
何故、料理人を探しているのかといえば、食事を作れる人がルクス以外、誰もいないからだった。
ベネディクトゥス一家は元貴族なので作ることはできないし、アランとバートも家の手伝いはしたことがあるものの、美味しい料理を作る意識がないのでルクスが却下した。
昨日の夜は食材を買い込んで、ルクスが六人分の野菜スープと鶏肉のトメト煮を作った。因みに、トメトはトマトを少し四角くした野菜だ。
セフィラを強化した影響で、重いものも簡単に持ち上げられるので、ルクスは毎日作るのも問題ないと感じている。
最初、ベネディクトゥスたちが主であるルクスに作らせる訳にはいかないから自分たちが作ると言って危ない手つきで作ろうとするものだから、ルクスが自分に作らせないと、土下座すると脅し?て何とかルクスが作ることになった。
今後もこのようなやり取りをしたくないルクスは料理人を奴隷商で購入することとした。
掃除ができる人もついでに購入できれば、と考えている。
何故、雇わずに奴隷を購入するのか、といえば、ルクスが持つ情報に相当な価値があるので、なるべく情報を漏らさないようにするべきだとベネディクトゥスから助言を得た為だ。
昨夜、ルクスはベネディクトゥスに生命の樹関連の情報を伝えている。
その上で、料理人を雇うべきか、奴隷にすべきかを相談したのだ。
ベネディクトゥスは奴隷一択だと即答した。
この生命の樹に関する情報が漏れてしまえば、ルクスの存在が明るみに出て、誘拐されたり、もしかすると毒殺されてしまう可能性がある。
ルクスはその可能性を聞いて、料理人を奴隷から選ぶことにした。
「いらっしゃいませ、ルクス様」
店員から知らせがあったのだろう、奥から店主のビリー・アーキンがやってきた。
「こんにちは、アーキンさん。今日は二人奴隷を購入しようと思っていまして」
「それは、ありがとうございます。どんな奴隷をお求めでしょうか?」
「えっと、料理ができる者と掃除ができる者を……」
「では、見繕ってお持ちしますので、奥の応接室でお待ち下さい」
店員に案内され、ルクスとベネディクトゥスは応接室に案内された。
暫くして、五人の奴隷が連れられてきた。
ルクスは左端にいる中肉中背の中年男性を鑑定した。
【グスー】
借金奴隷だが、過去に殺人を犯している。
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ルクスはその隣にいる中肉中背の若い女性を鑑定した。
【ピーチ】
借金奴隷だが、過去に殺人教唆の罪を犯している。
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笑みが引き攣ったルクスはその隣にいる少し長い黒髪の癖っ毛と茶色の瞳を持つ、無精髭のガタイの良い狼獣人らしきおっさんを鑑定した。
【ヴォルフ】
借金奴隷。元は食堂の店主だった。料理が美味しく、評判の店だったが……
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ルークは思わず→を押してしまった。
漁師だった父親が多大な借金を遺して死んでしまったので、借金奴隷となった。
妻と娘も同じく借金奴隷となった。
因みに、ヴォルフの父は良い人だったが、友人に騙されて多大な借金を抱えることとなった。
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ルクスは隣にいるストレートの長い茶髪とヘーゼルの瞳を持つ、お胸の大きな美女猫獣人を鑑定した。
【アデリナ】
借金奴隷。ヴォルフの妻。家事と裁縫が得意。
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ルクスはアデリナの隣にいるストレートの黒髪とヘーゼルの瞳を持つ、可愛らしい美少女狼獣人を鑑定した。
【クラーラ】
借金奴隷。ヴォルフとアデリナの娘。家事と裁縫と身体を動かす事が得意。
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ルクスは店主であるビリーを見上げた。
「アーキンさん……最初から選択肢がない気がするのですが」
「ルクス様なら気に入られると思ったのでございます」
「気に入るという表現は適切ではない気がします。ですが、あちらの獣人三人を購入することにします」
「ありがとうございます。三人で金貨九枚でございます」
ルクスは大金貨一枚をビリーに渡した。ビリーは金貨一枚のお釣りをルークに返した。
諸々の手続きを終え、自己紹介をして、ルクスはベネディクトゥスと三人の新たな仲間を連れて屋敷に戻った。
「ん?ルクス、その人たちは誰だ?」
丁度、玄関ホールで掃除をしていたアランと出くわした。
「この人たちも借金奴隷なんだ。料理や掃除をしてもらう為に来てもらったんだよ」
「へぇ……えーっと、俺はアラン!新入りさんたち、よろしくな!」
「「よろしくお願いします」」
「よろしくねー」
ヴォルフとアデリナは行儀よくお辞儀した。
娘のクラーラは笑みを浮かべてアランに挨拶した。
獣人美少女の可愛らしい笑みにアランは頬を赤く染めた。
そして、アランはクラーラの近くまでやってきて問う。
「なぁ、お前、なんていう名前なの?」
「私?クラーラっていうの。お父さんとお母さんが付けてくれたの!可愛い名前でしょ?」
「お、おう、可愛いな」
アランはクラーラが可愛いと言いたいのだろう、更に頬を赤く染めた。
「でしょー」
アランはクラーラに首ったけの様子。
ルクスは微笑ましそうに眺めている。
「なあ、ルクス、新入りさんたちは俺が屋敷の中を案内するよ。良いか?」
「良いよ」
「決まりだな!クラーラ、行こうぜ!」
「うん!」
アランはクラーラの手をとって屋敷内を案内し始めた。
好きな娘にはカッコいいところを見せたいのだろう。
両親はクラーラを追いかけたいが、ルクスを置いて行くわけにもいかない。
「あ、ヴォルフとアデリナもアランに付いて行って」
初対面に近いので、ルクスは敬語を使いたいが、ベネディクトゥスの手前、敬語が使えない。
「「はい」」
ヴォルフとアデリナはルクスに一礼して、アランとクラーラを追いかけた。
「……ベネディクトゥス、昼ご飯はこれで皆で外食してね。あと、これ当面の資金にして欲しい」
「かしこまりました」
ベネディクトゥスはルクスから大銀貨二枚と大金貨三枚を受け取り、恭しく頭を下げた。
「ルクス様はどちらへ?」
「クエスト……人助け、かな?」
「流石です。ルクス様」
「うん……まあ、お礼を貰うつもりだから、褒められたものではないけどね」
「動機は何であれ、人助けをするということが尊いのです。私は良い主を持ちました」
「ベネディクトゥス……ありがとう。行ってくる」
ルクスは家を出て、街中に向かった。




