表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
2/2

始まり:エイベル・エッフェンベルガー

オレとフレーは物心ついたときからいつも一緒だった。


「おーい!遅いぞエイベル!早くしないと捕まっちゃうからな!」

「待ってよフレー!」

「おいガキども!!戻ってこい!」


いたずらして大人に怒られて逃げる時とか。あれはフレーが主犯だったけどいつの間にかオレも巻き込まれて二人そろって怒られた。


「なあなあ、フレーは何になりたい?」

「えーそうだなぁ…あっ!パパとママみたいな立派な人形職人になりたい!」

「え、できるのか?だってフレーがさつじゃん。人形が完成する前に壊しちゃうんじゃないの?」

「やってみなきゃわかんないじゃんか!そういうエイベルは立派な夢があるんだろうな?あたしのより立派なね!」

「うん!オレは魔法使いになるんだ!じいちゃんよりもっとすごい魔法をつかえるようになるんだ!」

「えーその魔法使う前に怖くて泣いちゃうんじゃないのか?」

「そんなことないよ!」

「そんなことあるもんねー!だってエイベル犬にほえられて泣いてたじゃん」

「泣いてなかったよ!」


幼稚な将来の夢をお互いに語る時だって。


「おーいフレー!これ、ウチの母ちゃんがおまえにって」

「わあ!クランベリーのパイ?エイベルママのパイ美味しんだよね!ありがと!あとでお礼持ってくね!」


大きくなってからも、母さんとおばさんが仲いいし家が隣だったしで、毎日顔を合わせていた。逆に顔を見ない日はどっちかが風邪ひいてる時ぐらいしかなかった。それはこれからも変わらないんだろうなって思ってた。


 オレの幼馴染であるフレーデル・アンドールは小さい頃は男と間違われる程やんちゃで、がさつで、近所で有名な悪ガキだった。経った二歳年上だからって偉そうにするし、まだ小さい頃はオレよりも背が高くて悔しい思いをしたものだ。

 気が弱かったし人見知りするから、自然とよくウチに遊びに来るフレーとつるむようになった。小さな村だからオレとフレーは有名で、「フレーがいたらエイベルもいる。エイベルがいたらフレーもいる」と言われるほどだった。まあ多分、いたずらに警戒しろってことだったと思うけど。

 だけど、大きくなると不思議なもんで、フレーはどんどん大人たちが言う「理想の娘さん」に近づいた。明るいオレンジ色のカールした髪は腰より少し上まで伸ばしておさげにし、長いスカートを履いて言葉も女の子っぽくなってしまった。オレはそれが面白くなくていつも自分からちょっかいを出した。そのたびにフレーは緑の目をあきれたようにくるりと回して、昔と同じようにズバズバと容赦なく言い返してくるんだ。

 キラキラと宝石より綺麗なその目を見て俺は無性に嬉しかった。どれだけ見た目とか言葉遣いとかが変わってもフレーはフレーなんだと安心した。


 でも、別の日に親戚の家の手伝いのために兄ちゃんと(すき)を振るっていたら兄貴が突然、


「フレーちゃんのことどう思うよお前?」

「なんで兄貴までフレーのことをどうのこうのってオレに聞くんだよ。別にどうも思ってねえって」


なんて聞いていたのだ。思わず鍬を取り落としそうになって手に力を込めてできる限りどうでもよさそうに聞こえる声で返事する


「えーフレーちゃん小さい頃は確かにやんちゃだったが、今は可愛いお嬢さんだろ?え?なんか思わんのか?」


何が「完璧なお嬢さん」だ。あいつは見た目は変わったかもしれねえが、中身は昔のままだっての。みんなよく知らないくせに、よくもまぁあれこれ言えんな。例えばあいつが怒っていないのに怒っているように目を細めて言い返すのとか、ちょっとした言い合いの時によく見ると口元が緩んでいるところが案外可愛いとか、花の中でも特にプリムラが好きなところとか、寝る時の顔はけっこう幼く見える事とか…みんな知らねぇだろ・


「別に…」

「ふーん…それに、知ってるか?フレーちゃん、この村もそうだけど他の村のヤツからもモテてんだとさ。ヒューッさすが俺の妹!」


ニヤニヤと全てわかっているとでも言いたげな目でオレを見る兄貴にお前の妹じゃねえだろ、と心の中で言い返す。

ってかフレーのやつ、あんなんでもモテてるんだ。オレには全くそういう話はしないくせに、と考えると日差しの暑さとは別の汗が背中を伝い、じっとりとした嫌な焦りが急速に広がった。


「こないだフレーちゃんにプレゼントをしたやつがいたんだと。フレーちゃんの好みじゃなかったらしいが、とうとう貢がれるまでになったか〜そのうちフレーちゃんに告白するやつが出てくるかもな」


兄ちゃんが鍬の上に顎を置いて、どうする弟?と言わんばかりに見てくる。その見透かすような視線に認めたくないが少し動揺した。

 アイツとずっといたのはオレだし、アイツの好みわかってんのもオレ。それは絶対に変わらない。でもこれからもずっと一緒にいれるかどうかはわかんねえ。アイツはもしかしたらよその村に嫁いじまうかもしれねぇし、もしこの村の中で結婚しても、今まで通りの関係が続くとは思えない。


「…早めに動いたほうがいいのかな…」

「え、なんて?」

「別に、兄ちゃんには関係ねえだろ」

「ほぉ〜ん?」


ニヤニヤとする兄ちゃんを置いてさっさと仕事の続きを始めた。

こちらは不定期に更新する予定ですが、一週間に一度出すことを目標に活動します。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ