始まり:フレーデル・アンドール
エイベルとはいつも一緒だった。ママとエイベルのママは仲が良かったから、エイベルが生まれた時から今までずっと一緒に育った。エイベルは昔から少し気弱そうな男の子で、そんなエイベルをあたしはいつも引っ張ってあちこち連れ回したの。
あたしの方が2歳だけ年上だったからお姉さんぶりたくて、ママの受け売りを自慢げにエイベルに教えてあげたり、他の子に意地悪されてたらあたしが代わりに怒ったこともあったなぁ。小さい頃からずっとそんなんだったからエイベルのことはなんだか手のかかる弟みたいに思っていた。
「ねー、フレーってエイベルと幼馴染じゃない?好きとかってないの?」
「え?ないない!だってエイベルが赤ちゃんの時から知ってるんだよ?好きになるとかってないよ。なんだか弟みたいな感じするし」
「そうかなぁだってエイベルかっこよくなってるよ?なんか思わないの?」
そう友達のマリルから言われたとき初めてエイベルの変化に気付いた。確かに最近じゃあたしより背が高くなって少し見上げなきゃ視線が合わないかも…
ちらりと向こうにいるエイベルを見ると小さい頃とは違って、気弱そうなところは表情から消えていた。少し伸びた黒い柔らかい髪の毛を風吹かれるままにして、涼し気で好奇心が強そうな紫の目を細めて一緒にいる友達に向けて笑っていた。
なんだかそのエイベルがまるであたしの知らない人に見えて胸がざわつく。そういえば、この前エイベルが近くの街に行ったときに女の子にキャーキャー言われてたんだっけ。ライフェがそう言ってたかも。
でも、変わったのはそこだけ。あたしの前では昔と同じようにちょっかいを掛けるただの人見知りするいたずら好きな悪ガキだもん。
昔と同じように悪戯を企んでそうな紫の目をして、昔と同じようにあたしの前では口が悪くて、言い返されると少しムッとして右目の下にあるほくろを指で掻く。でもそんなエイベルでもあたしの誕生日には必ず一番にお祝いしようとしてくれるちょっと可愛いところもある。
そんなところは今でも昔と何一つ変わらない。それを思い出すとさっきまでざわついていた胸がすっと落ち着き、なんだか暖かくて、くすぐったい気持ちになった。
「見た目もそうだけどさあ、エイベルすごくない?魔法学校に行くって言ってるんでしょ?お兄さんがいて家を継がなくてもいいからって思い切ったよね」
「そうだねえ。まあ、これで毎日ちょっかいかけてくる煩いのがいなくなると思うと清々するよ」
「またまたそんなこと言っちゃって。ほんとは寂しいんじゃないの?」
「そんなことないよ!」
エイベルはおじいちゃんに似て魔法の才能があったらしく、来月から首都の魔法学校に行くらしい。魔法学校は15歳から入学して4年間学ぶって聞いたの。そして才能ありだったり、実家がお金持ちだったらまた2年間研究生として学校にいるシステムだって。
エイベルは頭がいいからきっと6年はこっちに帰ってこないかもって、大人たちが言ってた。
「フレー!ちょっと洗濯物を取り入れるの手伝ってちょうだい!」
「はーい!ママが呼んでるから行ってくるね」
「うん。じゃあね~」
ママが呼んでくれて良かった。あのまま話が続いてたら気まずくなるに決まってる。マリルったらお年頃なのかしら。最近顔を合わせるたびに恋バナしようって言ってくるんだもん。最近みんな好きな人の話とか、誰かの結婚式を見に行こうとか誘ってくるんだよね。
結婚式かぁ、前見た花嫁さんはすごくきれいで、みんなから花を降らせてもらっててすごく幸せそうだったなぁ。




