妙なプレミア感
追いかけっこにも飽きた伊藤と工藤は鉄棒を背もたれに一休みの体勢を取っていた。
「ねえ伊藤。本当に世界って滅びつつあるのかしら」
「まだ実感がわかないきてるのか。ラジオで聞いただろ。さっき目の前でサラリーマンが突然死しただろう」
「そうね、実感しないといけないんだったわ」
「アルゴスの戦士のサブタイトルがはちゃめちゃ大進撃であることを実感するようにね。美麗なグラフィックと秀でたゲームデザインに反してどうして世界観を台なしにするサブタイをつける?」
「たしかにそうね。なにかしらはちゃめちゃな進撃って。帰ってきた軍人将棋 なんやそれ? みたいな突き抜けたしょうもなさもないわ。自分でボケて自分で突っ込む。それが関西弁であることにあたしはどうしようもない憤りを感じるけどね」
「ケルナグールくらいしっくとこないといけないよ。ナムコのセンスは時に僕のハートのど真ん中を打ち込む」
「ヒットラーの復活 トップシークレットも相当なもんよ。ネオナチ大喜びよ。よく厳しい任天堂の検閲に通ったものよ。ヒットラーの復活を願うってどういう思想かしら」
「政治家とくれば、ゴルビーのパイプライン大作戦だよ。ゴルビーと愛称で逃げてるところも微妙さに拍車をかけている。勝負をかけているのに、どうして逃げ道を用意するんだろう」
「1942と1943くらいの潔さが欲しいわよね。一年ごとに悲惨さをましていくばかりの戦争をゲームにかぶしてくるとは」
「1945とくると生々しすぎる。攻めて引くところは引くこのカプコンの戦略性が素晴らしいよ」
「激亀忍者伝もどうかと思うわ。忍者タートルズがいくら日本じゃ浸透してない時期だからといって、このゲーム名変更はどうかしてるわ
「権利を買ったコナミの意地が、裏目に出た形。その後、忍者タートルズが日本でも本格的進出してきたけど、受け入れられたかというと……」
「だって亀が忍者よ。忍者をなんだとおもってるって話よ。忍者くんや忍者じゃじゃ丸くんが闊歩する日本を舐めなさんなってことよ。魔城の冒険よ、阿修羅の章よ、撃魔伝 幻の金魔城よ、忍法帳よ、銀河大作戦よ、忍者なのに銀河が相手なのよ」
「忍者くんってそんなに日本人の心を捉えて放さないっけ?」
「あらあたし言い過ぎたかしら。ごめんなさい」
「いいよ、工藤。忍者龍剣伝やら、仮面の忍者花丸やら、忍者COPサイゾウよりも心は捉えたことは確かだ。忍者龍剣伝なんてIIにⅢまで出てる。暗黒の邪神剣に黄泉の方舟ときたもんだ」
「あら忍者龍剣伝はそれなりよ。その例に出すのはどうかしら。そのゲームの嫌らしさはゲーマーの腕を振るわせるのに十分。メインキャラクタはその後、人気ゲームに流用されたほどよ」
「ええそうなの? じゃ花丸やサイゾウも?」
「花丸は本格的、サイゾウは外したって覚えてけばいいわよ」
「なるほど安易にあげつらうのも反省の一言だ……」
「いいのよ、人間ってのは反省を重ねて成長していくんだから」
「成長ねえ。僕らが言い終わると世界が終るのに」
「それでも成長するのは悪くないでしょ。世界が終わろうと最後まで自身をみつめて自己改革に挑むべきよ」
「そうかなあ」
「なに浮かない顔して」
「いや世界が終るのにどうして僕らはファミコンのソフトをあげつらっているのだろうか」
「じゃあ辞める? あたしたちが辞めたら、地球の滅亡速度は沈下していくはずよ」
「それでも誰かがふと口にする度に世界の崩壊は確実に進んでいく。それならいっそ僕たちが口にする」
「でしょうよ。伊藤はそう選択すると思ったわ」
「うん、まあねえ、うん……。僕の選択はプレジデントの選択」
「定価9800円ね。なにがどうして制作費がかさむのでしょうか」
「光栄のゲームにありがちだな、妙に高値がつくのは」
「信長の野望 全国版。三國志。蒼き狼と白き牡鹿 ジンギスカン。トップマネジメント。ロイヤルブレッド。が9800円、それでも腰が引ける価格なのに、蒼き狼と白き牡鹿 元朝秘史。信長の野望 武将風雲録。ランペール。大航海時代。維新の嵐。水滸伝 天命の誓い。信長の野望 戦国群雄伝。は11800円よ。万を越えてきたわ。そして14800円よ。三国志Ⅱはねえ、CDがついて14800円よ、なんなのよこの価格。CDなんているの
? 本当に必要なの?」
「武将を事細かに調べる調査費か、それともあえて高い価格をつけて高級感を出したか、それともついてこれるものだけに向けたゲームだからか」
「今じゃ戦国、歴史シュミレーションって子供から幅広く誰でもやるけど、当時は敷居が高かったのかしら」
「どうだろうね。とはいえ麻雀大会なるゲームが7800円。光栄史上ファミコンソフト最安値でこのお値段」
「麻雀作って、ぼろ儲けね。まるで役満天国よ、プロフェッショナル麻雀悟空よ、ナムコット麻雀Ⅲ マージャン天国で麻雀家族はのんきに4人打ち麻雀で麻雀大会高じて麻雀大戦よ。5人家族なら余った一人が寂しく麻雀から、まじゃべんちゃー 麻雀戦記よ」
「これまた一気の消費だな。井出洋介名人の実戦麻雀か田村光昭の麻雀ゼミナールで麻雀の基礎から習ったほうがいい君が」
「いいえ、井出洋介名人の実践麻雀IIなほど麻雀の知識ありますから」
「麻雀倶楽部永田町 総裁戦のように入り組んだ君は理解し難いな」
「ねえ、それはそうと伊藤。さっきから気になることない?」