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オゴレスを倒すのだ

「頭ごなしに決めつけるのは辞めよう。バード・ウィークになにかしらの感銘を受けてバードウォッチャーになった人も世の中にはいるもしれない」

「それほどゲームって人生に影響を与えるものかしら」

「そりゃ与えるよ。僕だって、マインドシーカーで超能力者を志したし、松本亨の株式必勝学で投資家の夢を抱いたし、目指せパチプロ パチ夫くんでパチプロになれば人生の成功者と思い違いしたのは、僕の人生経験上かかせない事実だ」

「パチ夫くん2はいいとして、3は帰ってきたパチ夫くんよ。その後、4、5と続くけど、3ほど自信に満ちたサブタイトル付けをしてない以前にサブタイトルもない」

「3が帰ったきたと銘打つのはいいけど、1と2の発売間隔は二年ほど、それが2と3は一年なの。2が帰ってきたというよりも、2で帰ってきたというべき発売間隔じゃないの?」

「それはウルトラマン的思考だろうよ。3といえばウルトラマンにすれば、帰ってきたウルトラマンに等しい。だから3のそのサブタイトルは納得できるというもの」

「なにかウルトラマンを出してきたのは恣意的な気もするわ。この際かこつけてウルトラマン関連を一掃しようと」

「ウルトラマン 怪獣帝国の逆襲。タイトルだけでわくわくするじゃないか。出撃! 科特隊も悪くない。世界の危機に居ても立ってもいられない科特隊の切迫感がよく出ている。それに比べてウルトラマン倶楽部のせせこましさと来たら。1の地球奪還作戦はまだいい。だが2は帰ってきたウルトラマン倶楽部だぞ? 3はまたまた手動 ウルトラ兄弟だよ。なにかもうウルトラマンにあったはずの哀愁を放棄している」

「というかあなた、帰ってきたと3作目の関連性を説いといて、ウルトラマンのゲームの2に帰ってきたつかってるじゃない」

「う……」

 自説の穴に漬け込まれた伊藤は青ざめた顔を隠すように、急に歌い始めた。

「すすめ~ すすめ~ ものど~も~ オ~ゴ~レ~スを倒すのだ~」

 伊藤の歌い方は物々しい歌詞にふさわしく軍歌調。士気を高めるように、腕を振り続けて歌う伊藤は現代の小学校には異質すぎる。

「なによ急に歌い出してごまかして。なにその歌。カラオケスタジオ基本セットに含まれてる歌? カラオケスタジオVOL.1 トップヒット20に含まれてる? それともカラオケスタジオ専用カセット Vol.2? いったいこの三つのどこからなのよ」

「知らないふりでソフトタイトルの消費と浪費をするのはどうかな」

「本当に知らないのよ。教えて」

「そうか、説明書に載っていただけの歌だから、君が知らぬでも無理はないか。これはね、ボコスカウォーズの音楽に乗せて歌う歌なんだよ」

「あ、そういえばそうね。ボコスカの歌詞ね。Ⅱコンのマイクを使って歌うの?」

「なわけないでしょ。ゲーム上に意味はない。バンゲリングベイじゃないのだから。ただ日常ふとしたときに歌い上げるの。つい僕の鼻歌はボコスカになりがち」

「そうそれはよかった。Ⅱコンの可能性をどこまでも求めるのは無駄足と思う主義だから。代表的なバンゲリングベイだってそうよ。ハドーソン、ハドーソンって自社名をユーザに叫ばさせすセンスはこのさい置いといて、だいたいファミコンが音の違いなんて聞き分けられるわけがないのよ、もう」

「なんだいその自責紛いの物言い。まるで馬鹿正直にハドソンと叫んで、恥をかいたエピソードがあるみたいじゃないか」

「ふん。ないわよ、ひねくれず育った普通の子供たちは、なんの障壁なくハドソンと叫んだのよ。あたしも例外じゃないわ」

 工藤の顔はほんのりと赤みを帯びた。伊藤の推測が的を得た証拠か。

「ふふん、その表情が図星って証拠だよ、ふふ~ん」

「バカ、あたしをからかわないの」

 逃げる伊藤を追いかける工藤は、もちろん本気で追っているわけじゃない。追いつかないほどのスピードで追うその距離感こそが二人の関係性の深さそのものか。

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