表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
65/69

伊藤と工藤は何もないゴールに向かって走り出す

「38本と9国をどう判断するかだ」

「9国といっても、最終の被害情報の把握とタイムラグがあるはずだわ。国ごと吹っ飛ばす破壊力あるソフトの消費は、確かに、行われた」

「とすると、いいとこ、5国くらい」

「しかも、どれだけの国力やら人口規模がある国が残ってるか、わからない。小島みたいな小国かもしれないし」

「残りのファミコンソフトのリストと照らし合わせると、大きな国は全滅したとみていいんじゃないかな」

「うん、だって、残りの38本は、ようは、1200本以上のファミコンソフトが会話にあがっても、それでも出なかった生粋の地味なソフト群といえるわ」

「地味、マイナー、日の当たらない、会話に出しづらいか……」

 伊藤は、吹っ切れたように遠くを見つめる。ただ伊藤が、どこを眺めても、希望の光は見えず、世界は終息に向かって、収束している。

「それでも、あえて、とっておいたって感じのソフトもあるのよ」

「フラッピーかな? 確かに、なんで今まででなかったのが不思議なほどの知名度の高いパズルゲームさ」

「土砂崩れが起きたときとか、道端に落ちてたきのこを、伊藤がいやしく拾って食べたときとか、いくらでもフラッピーを織り込む隙があったのにね」

「いや、僕は、きのこ拾って食ってないし」

「それに、アルテリオスも出てないのが不思議、多惑星ワープRPGの金字塔よ。いろいろとかこつけて、話に出せるのに」

「いやいや、普通、アルテリオスは出てこないよ、なかなか」

 工藤は、終わりかけの世界に似つかわしくない澄んだ瞳で笑いかける。

「うふ、今ので、どれだけの国が消えたかしらね? フラッピーは、残りのソフトの中で、屈指の破壊力のソフトだと思うけどさ」

「残る小国くらい、ぶっ潰す破壊力はあったはず」

「国は滅びても、私は大丈夫なのは不思議ね」

「どうなるんだろうな、国の滅びたかどうかの基準って、少なくとも首都圏完全壊滅した日本は、機能を失ってるに等しいんじゃないかな」

「そうね、私と神が生きてるけど」

「神か……僕の中の別の僕が、世界を滅ぼす活動をしてるなんて、不思議だな。ソフトの決められた破壊力によって、計画的に世界を滅ぼすなんて、なんとなく事務員的な地味な活動にも思える」

「ドラゴンスクロール 蘇りし魔竜……。マジカルアクションって、どんなジャンルかしら、考えれば考えるほど、泥沼にはまっていく感じ」

「35本だっけ?」

「うん、35本」

「すでに、高確率でババを引くババ抜き状態だね。持ち札35枚のうち、一枚じゃない枚数のババが繰り込まれてる感じ」

「次の消費活動で、私は、ババを引くかも知れないね、神と融合した伊藤と違って、安全確認がなされてないんだし」

 すでに荒れはれた荒野とかした首都圏。工藤は、線路の上にいるが、電車が通り過ぎる心配をする必要はどこにもない。もはや、日常は過去と化したのだから。

「ベースボールスター めざせ三冠王のサブタイトルは、誇大広告でもなんでもないわ。今までの野球ゲームと一線を画す、成績記録システムの元、本当に三冠王を目指しちゃえるんだから。まあ、架空のチームや選手相手に、タイトル争いなんて、リアルを追求する野球ゲームゲーマーにとっては、賛否両論かもしれないけどさ」

「工藤はまだ世の中にいる」

「電車が急に走ってきて、なんで、この世の中のこのありさまで、電車走らせてるのよ? ジーサスでもやって、すぎやまこういちミュージックに浸ってなさいと言いながら、死んでいくと思ったけれど、まだ生きている」

「33本か」

 伊藤は、そうつぶやきながら、学生カバンの中から、『ファミリーコンピュータ全ソフト大全集』を取り出した。

「ボロボロになるまで読みふけったこの本を開くのも、もう最後かもしれない。伊藤と違って、残りのファミコンソフトを克明に記録・記憶していない僕の頭脳は、どうしても資料を欲する。僕は本を開く。ちょうど開いた場所にあるゲームを解説する。それが、まだ未消費のゲームかどうかは定かじゃないけれど……。フリートコマンダー。戦後40年の1989年に第二次世界大戦のシュミレーションゲームを出すのは、ちょっと生々しいようにも思えるな」

「32本ね、でも私の身に異常はない」

「僕の身にも当然のごとく異常はない。引き続き、僕は適当に本を開く。ダークロード……。バットエンディングを引き当てると、世界が無に帰す」

「今の私と伊藤みたいね」

「そうかな、世界が無に帰すのは、全網羅した結果、グッドエンディングとしか思えないよ」

「31本、それでも私は生きている」

 工藤は、腕を伸ばして、線路に寝っ転がる。スカートの裾から、下着が覗いても気には止めない。

「あ~あ、なんだか、疲れたわ~ 地べたに寝っ転がるなんて、神に土砂がついて絶対にしたくない行為だったけれど、お風呂に入る余裕なんて、もうないんだから、髪が崩れてもどうでもいいわ。スターゲイト……。ってこれじゃ、ダメなのね、映画と混合されるから、今一度、スターゲイト……質素なゲーム画面には驚かせられるわ」

「30本、それでも工藤は生きている」


ストーリー二点


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ