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工藤は、伊藤の夢をあざけり笑う


「悪いか、復興の夢見てさ。今日で人生が終わるなんていやだ、また家に帰って、紅蜂さんのポスター眺めながら、プロゴルファー猿 影のトーナメントを日影さん=死神みたいに、地味に確実に一打一打刻むゴルフをしたいんだよ」

「そういいつつ伊藤は、ファミコンソフトを消費させる」

「しまった、つい……仕方ないじゃないか、僕がファミコンソフトを口にするのは天命。免れない運命なんだ。さくまあきらが、堀井雄二のマネしてRPGを作ったように、さくまあきらがボードゲームを作れば、堀井雄二は同じく、いただきストリート 私の店によってってをつくるざるを得なかったように、僕とファミコンソフトのつなぎ目は切り離せないんだ」

「けっこうなメジャーソフトよ、いたストって。相当数の人類にダメージがあったと思うよ、それでも、伊藤は復興を口にするの?」

「うん、矛盾してるようだけど、僕は復興を夢見る」

「私は付き合いきれないわ。勝手にやって」

「いいよ、その覚悟はできてる、僕は復興を頭に入れつつ、君はファミコンソフトをたんたんと消費させる。それでもいいと僕は思う」

「いいのかしらね、ファミコンソフト消費するにつれて、終りに近づく世界で、そんな悠長なこといってて」

「いいじゃないか。だから、工藤は工藤の自由に。僕は僕の自由に」

「で、どうやって復興させるの? プランはある?」

「……」

「ないのね、だと思ったわ。だってねえ、見てご覧なさいよ、世の中どうなってるか」

 火山の噴火のあと、数度繰り返された地震によって、町は、もはや壊滅状態だ。

「どう、これから復興なる?」

「なるさ、きっとなるさ!」

「そう。でもねえ、東京壊滅が引き金みたいに、復興するとか、助かるとか、町の人々はすっかり諦めて、思い思いのことをしてるわ。どうせ地球が、世の中が、最後なら、悔いなく死んでいこうと。ほらあの人、見てみなさいよ」

「風船をつけたおじさんが、二階の窓から飛び降りようとしてる!」

「多分、あれ、バルーンファイトごっこよ。そして、今度はこっちよ。地震で避けた谷底あるでしょ」

 地震によって稲妻のように切り裂かれた地面は、ぱっくりと口を開き待ち構えている。

「こんな時こそ、町に谷底が広がる、日常の異空間の時こそ、あの遊びができるのよ」

 長さ4mほどの谷底を、幅跳びのように飛んでいる男が、二人いる。服装はいずれもサイケな80年代のアイドルファッション、一人はサングラスを決めている。

「あ、あれは、まさか」

「そう、まさか。ファミコンソフトを口にしたくないであろう伊藤にかわっていうけど、あれは花のスター街道ごっこよ」

「二人息あわせて、谷底を飛ぼうとした! 広がる谷底は助走なしで飛べる距離じゃないぞ!

ああ~やっぱり、飛び損ねて……」

「谷底に落ちたようね。でもあの二人に悔いはないはずよ、死ぬ前にできないはずの花のスター街道ごっこができたんだからさ」

「……」

「伊藤も夢は諦めて、好きなことをしようよ、私と伊藤が好きなことって、ファミコンソフトを言い尽くすことに他ならないでしょ」

「……」

「強情ね、意外と……。で、今度はあっちよ、ホラ、5、6人のグループで、それぞれスケート靴履いてたり、スキーの板をさげてるでしょ、あれもそうよ」

「ウインターゲームズごっこか……って言わせるなよ、ついいってしまったじゃないか。ええいこのさいだ、ボブスレーやら、スピードスケートやらフィギュアやら、ファミコン初の冬季種目の遊べるゲームだ!」

「今だからできることよ、ウインターゲームスごっこわ」

「って今、冬じゃないし、別に今じゃなくてもできるし」

「そうとも言えるわね、じゃあ、なにあのオバカさんたち、冬でもないのに冬季種目のかっこして。バッカじゃないの」

「って、工藤が推したんじゃないか、世界の終わりだ、諦めて、思い思い好きなことをしろってさ」

「そうだったけかしら、そうだったわね」

「たくもう……」

「それで、伊藤は復興諦めた? それとも復興プランが練上がった?」

「練上がったさ。ネイピーブルーで鍛え上げた戦略性にヌカリなし」

「ほらまた消費させたわよ」

「いいんだ、口を衝いて出るファミコンソフトは気にしないことにする。とにかく、僕の復興プランはすごいぞ」

「いいからいってごらんなさい」

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