伊藤はそこはかとなく、そこはかとない
「ぞれじゃ、内戦よ、内戦なら起こりうるわ。名門!第三野球部みたいに、一軍と三軍が二軍を通り越して、喧嘩して、入れ替えを賭けて戦うようにね、内輪もめよ」
「内戦? 内輪もめ? 東京と大阪がやり合うとか?」
「東京と大阪じゃ遠すぎるわ、戦闘機や飛行機に限りある現代日本で、たくさんの兵隊が東京に行くのに新幹線移動よ? 間抜けよ、ワープマンみたく、ワープできればいいけれど。新幹線で時間つぶしに兵隊が、GREAT DEALをやったり、バブルボブル2をしたりするの? 時間つぶしには、テーブルゲームやパズルゲームがぴったりくるって」
「いや、携帯ゲームやるでしょ、今の時代。というか、ファミコン全盛時代も車内でファミコンは無理だよ。移動手段が不足してるなら、スクーンみたく潜水艦を使用すればいいし、チョップリフターみたいなヘリを用意すればよろしいのでは?」
「まったく、伊藤は無茶なことをいうわ。スクーンみたいな潜水艦やらチョップリフターみたいなヘリコプターをどうして用意できると思うのよ? 究極タイガーみたいな戦闘型ヘリだってムリよ。現代日本の科学力、軍事力なら高機動戦闘メカ ヴォルガードIIを用意するのが精一杯よ」
「いやヘリやら潜水艦なよりも、戦闘メカ用意するのが難しいし……。でさ、東京と大阪の内戦ってどんな風にやり合うの? 自衛隊が出動するの? それとも真田十勇士みたいに、現代の徳川家康を総理大臣に見立てて討伐するの?」
「ディグダグⅡみたいに、地面に亀裂入れて囲んで落とすのよ」
「え~東京囲むの? 大阪囲むの?」
「そうよ。東京囲んで落とすと、大阪が勝利宣言してもまだ早いわ。首都機能が神奈川に移るから、東京の天下統一とはいかないの」
「なんてこったい。東京落としても、神奈川がある。それが首都圏の奥深さ。でも、東京に本社を置くゲーム会社はみな潰れるから、神奈川に本拠を置く光栄の天下さ」
「光栄……光栄」
「あ、工藤。さては、光栄のゲームはどうして、無駄に高い話に花が咲いた時に、漏れた光栄ゲームに目星をつけてるな」
「ばれた? てへ。検索結果によると、ロイヤルブレットとランペルールがまだ語られてないみたいよ」
「なんで、その2本が漏れたのだろうな。ロイヤルブレットは9800円で、二岡でも手が出る価格だし、ランペルールは11800円って、無駄な高さに花が咲くような価格だし」
「きっと、楽観視してたのよ」
「楽観視?」
「ええそうよ、きっと光栄のゲームを出し尽くさなくとも、あとでなんとでもなるとね」
「なったじゃないか。竜王戦(ファミコン将棋竜王戦)みたいに、なぜか一本だけ語り残してた将棋ゲームよりは語れるだろうよ、実際、二岡だの連想ワードを出して、見事に語りつくせたじゃないか」
「無理やりっていうか。ネタがかぶってるわ、価格ネタは一度にしてよ、乱発するものじゃないわ」
「そうか、ネタかぶりか」
伊藤は、大げさにがっくりとうな垂れる。
「そう気を落とさないでよ。伊藤はよくやってるわ」
「じゃあ、ネタかぶりを許してくれるなら、ブロック崩しネタでいい逃したクォースとかもドサクサに紛れて語ってもいいの?」
「どうそ、どうぞ、ご勝手に」
「それじゃあさ、ハリウッド映画の傲慢さ、単純さを鋭く批評したときにいい逃したゴーストバスターズ2やらハドソンホークやらダイハードもこの際言い尽くしていいの? ダイハードもハドソンホークもムリヤリ過ぎるよ、ファミコン舞台でとかさ、なんか何度も使ったネタみたいだけど」
「って、ハリウッド映画の腐敗なんて、嘆いたっけかしら?」
「あれ嘆いてなかった? それじゃ、僕がまるで、一人でハリウッド映画たる強大な敵に喧嘩を売ったみたいじゃないか。それじゃあ、小公子セディをフジテレビが開発? ムリムリムリ、フジテレビはひっこんでなとか、グレイトバトルサイバーって、なんで、タロウ、BLACK、ニューガンダムってどういう人選だよとか、そもそも、SDヒーロー総決戦 倒せ悪の軍団のがもっと豪華に宇宙刑事とかも共演してたのに、どうして後継作じゃ、謎の厳選がおこなわれたの? そもそもSDものって鳥山明のドクタースランプのモブキャラが全てのスタート地点なんでしょ? なんだいバンダイグループは後乗りのくせして、SDキャラを看板商品として押し出しますか? とかよ~く考えれば、ネタかぶりどころか、SDネタ自体初出に近いよ」
「SD刑事ブレイダー」
工藤のつぶやきは、伊藤の耳に届くほどはっきりと口調を持って、おこなわれた。
「あ、そうだ。忘れてた、SDもの……ギャバンとかシャイダーの宇宙刑事ものをSD、つまりスーパーデフォルメして……って、あやうく、ひっかるところだったぞ。SD刑事ブレイダーは、いかにも宇宙刑事をSD化したように見せかけて、実はまったくの無関係なんだ、なんかスレスレすぎるよ、何もかもさ」
「どうでもいいけど、そこはかとない悪意を漂わせるわね、伊藤って」
「ううむ……このままじゃ、性悪なレッテルを貼られてしまう。よ~し、みとけ、外の世界じゃ、世界の終りにかこつけて、眠る悪意を呼び覚ました人間の本性が出まくった人で、街中は溢れているから」
伊藤は、ゆっくりとドアノブに手をかけた。