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ファミリーベーシックは、プログラマーを育てたか

「試すわけでもないけど、アテナのファミコンソフト、後、何が残ってる?」

「DE-BLOCKとLUTTERとドラゴンユニット。そして絵描衛門と書いてデザエモン。前の二本は言及する価値もないパズルゲームであるし、ドラゴンユニットは在り来りな竜を倒してお姫を助けるゲームだけど、デザエモンでアテナの価値を高めることになったね。自分で作れるシューティング。新しいと思うよ。正しくは、シューティングをデザインするだけど」

「ダンジョンキッドは自分でRPGを作れるのよね。どう考えてもファミコンで自作RPGってのもムリあるけれどさ、ファミリーベーシックV3みたく、延々と一日中、テレビ画面とにらめっこして、ハエたたきゲームしかプログラミングできない虚しさに比べたらましと言えるけどさ」

「ところでアテナのゲームに相違はない?」

「うん、ないわよ。お見事なものよ」

「こんな荒業ができる僕らがバカと自認する奇妙さはありゃしないよね」

「ええそうね、ファミコンバカだもの。天才なのにバカ」

「バカか……」

 伊藤は、急に背筋を伸ばし伸びをしてみた。

「残り何本かも分かるの?」

「それは不確かよ。チェックされてない脳内チェックリストを数えれば、数は出せるだろうけど、数を数えるのって難しいわよね。Quarter Back Scrambleの洗礼受けても、我々日本人がアメフトに馴染むのが難しいくらいに難しい。ジャストブリードのシナリオは、おなじみのカーツ佐藤!といわれても、あああのカーツ佐藤さんねと合点するようで、カーツ佐藤って何者だったかしら、えのきどいちろうとかその辺りと同類と思い出すのがやっとなくらいに難しいわ」

「今ので残り何本か。ランプの灯ってない数を数えれば、それは理解できるだろうけど、いちいち残り何本か知りたい時に壁を見に舞い戻るのはおっくうだね。宇宙船コスモキャリアみたいに片道100ポイントのエネルギー消費でワープできるのなら話は別だけどさ」

「384」

「? なんだいいきなり」

「メッセージボードよ」

 工藤が指さすのは、例の電光のメッセージボードだ。384と電光掲示板特有の字体で繰り返し流れている。

「え? あ、本当だ、384ってもしかして……」

「おそらく残りのファミコンソフトの数よ。親切にも、私たちに途中経過を教えてくれてるのよ」

「本当にファミコンソフトの残りの本数か判定するのは、しごく簡単なこと。ファンタジーゾーンII オパオパの涙。これでいいんだ、これですべてがわかる」

「あ、変わった! 383に!」

「僕がファミコンソフトを世に放つとランプの点灯の供に、電光メッセージボードの数字も一つ減った。これは残りのファミコンソフトの数に違いない」

「残り383……」

「383本を言い尽くすことで」

「私と伊藤の欲求はすべて解消する。ディープダンジョンIVでスクウェアのディープダンジョンシリーズの諦めがついたように」

「君がいたずらに消費するうちに382本……と電光掲示板はせわしなく流れるメッセージを変える!」

「ただ伊藤の言うとおり、メッセージボードをいちいちチラ見することもできないわよ」

「なにか迅速に残り数を知る方法がないものか……、うん?」

「どうしたの伊藤」

「工藤、みてくれ、あの扉、そう僕と工藤が足止めを食らった扉の横あたりに、紙一枚が挿入できる切れ込みがある」

「? あるわ、それがどうしたのよ」

「そして、切れ込みの横に、これまたコイン一枚挿入できそうな穴が開いている。しかも、ご丁寧に、数字の100と刻印されている。意味がないことは、この世にないとする工藤の理論からすると100円を入れれば何かが起こるはずだ!」

 伊藤は、なんのためらいもなく100円ショップで購入した薄っぺらい布地の財布から、100円玉を取り出すと猛然と、意味ありげのコインサイズの切れ込みに投入した。

 何が起きるだろう。何がはじまるだろう。なけなしの100円を気負いなく、投入した伊藤は、何かが必ず起きることを信じて疑わない。

「起きろ、何か、起きろ! 僕と工藤の無頼戦士とかいてブライファイターと読む僕と工藤に何か起きろ!」

「あら、いつ私がブライファイターになったのかしら……」

「それはそれでいい、とのかく僕らは、100円も散財したんだ! 見返りはあって当然! ペーパーボーイの少年が、えっちらと新聞を投げ込んだら、それ相当のアルバイト料があって然るべきことと同じく、僕に100円なりの価値が舞い込むはずだ」

 すると紙一枚挿入できる大きさの切れ込みから、A4サイズの白い紙が、のそのそとながれてくるのではないか。

「やっぱり、事は起きる! マグマ プロジェクト ハッカーでマグマ社のプロジェクトが地下で順調に進行中しているように事は起きる!」

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