野球ゲーム第三勢力とその他
「ねえ工藤? 君は分かってるの?」
「何がよ。不如帰の読み方? 極楽遊戯の読み方? ホトトギスと読むのよ。げーむてんごくと読むのよ。不如帰の方は、漢字の知識で読めるかも知れないけど、後者を読み切るのは、よほどのファミコンバカにしかありえなくてよ」
「バカ? ファミコンバカ? いままで好きだの愛好者だのDungeon&Magicみたいな日本人が毛嫌いする洋ゲーダンジョン3Dが好きなのは、ファミコン好きというかパソコンゲーム好きに針が振れると思うのだけど、僕は、その人たちに向かって、パソゲーバカとかは言わないのに、どうして、工藤、君は思い切って、僕、いや、工藤、君も含まれることだろう、の二人のことをファミコンバカなんて言い方にするのだよ?」
「いいじゃないのよ。別に卑下してるわけじゃないわ。愛着を込めてバカと自認してるのよ」
「でもバカに、僕は愛着もてないな。ダイナマイトバットマンと聞いて、眉を嬉しさにぴくつかせる桂正和みたいな、日本じゃ珍しいバットマンフリークをバットマンバカと呼ぶのは、差し支えないような気がするけどさ。桂正和は、ファミコンソフトとなんら関わり持たない漫画家なのに、どうしてか何度も僕と工藤の話に登場してなにか不憫だけど、へべれけとくればサンソフト。サンソフトとくればへべれけとくるいうに、僕にとって、バットマンとくれば、もう桂正和の他にありえないんだよ」
「あら、サンソフトといえば、バットマンの2作は、奇しくもサンソフトよ」
「え? そういえばそうだな、じゃあバットマンとくればサンソフト。サンソフトとくれば桂正和。桂正和とくれば、へべれけ。へべれけとくればバットマン。桂正和とくれば、これもサンソフトの超惑星戦記メタファイトやリップルアイランドやギミック!にもつなげていいわけ? 桂正和は、ヒーロー物が好きだから、メタファイトにつなげることは違和感少ないし、リップルアイランドみたいなかわいい少女をフューチャーしたゲームとつなげてみるのも悪くないけど、ギミック!みたいな、ちょっとカワイイ系だけどモンスターのアクションにつなげるのはどうかと思うのだけど」
「いまのでサンソフトの制覇できたわね」
「ほんと?」
「知っててあぶりだしたように思えたけど」
「気になることがあるんだ。パズルボーイズは、パチ夫くんが、いろんなパズルに挑む設定なのだけど、パチ夫くんがいろんなパズルに挑戦しなくとも、パチ夫くんなんぞをイメージキャラにしなくともいいんじゃないかな。アトラスは、女神転生Ⅱとか女神転生とかいわゆるメガテンシリーズを制作してるのだから、そのキャラ使えばいいのに。って崩壊した東京をさまよう暗そうな少年少女を登場させるのはどうかなと思う。楽しいパズルゲームは、パチンコ玉にでもやらせとけばいいな、うんって、一人でツッコムけどさ、こうして僕と工藤がいたずらに消費させたファミコンソフトの数々を、工藤は記憶してるの? さっきの口ぶりだとさ、サンソフトのゲームをすべて言い尽くしたって瞬時に分かったでしょ? どういうこと? メモでもつけてる雰囲気もないし」
「頭の出来が違うのよ。頭の中にファミコンソフトの一覧があって、私と伊藤が、上げる度にチェックリストにはねる矢印のチェックが入るの。だから言い残したファミコンソフトなんて存在しえないのよ」
「すごいな工藤は。いままで見くびってたよ……って僕がかかると思うなよ」
「わかった?」
「うん。サンソフトのファミコンソフトを言い尽くしたと君はウソをついた。4本のソフトが漏れてることを僕はわかっている」
「やっぱり、伊藤の頭の中身のできも違うのね」
「そうさ。グレムリン2だよ、まず漏れてるサンソフトの4本のうちの一本は……。そして残りの3本は、これ3本っていっていいのかな?」
「いっていいのか悪いのか」
「子亀カセットか。なんたって!!ベースボールはユーザに親切なゲームだったのに……」
「のに? なにその語尾をもごもごさせる言い方? 子亀カセットって素晴らしいわ。とかくデータを変えただけのゲームを売るっていわれるスポーツゲーム業界において、サンソフトのとった試みは斬新かつユーザフレンドリなもの。究極ハリキリスタジアムみてみなさいよ。究極ハリキリスタジアム'88 選手新データバージョンとかいけしゃあしゃあと出してるわ。データ変えただけで、5500円をまたぶんどろうとするのよ。それに比べてサンソフトが良心的なこと。だって、2280円の子亀カセットを購入するだけで、新しいデータでプレイできちゃうのよ。5000円を払って、データが変わっただけのソフトを買うなんてバカバカしい真似しなくて済むのよ」
「未来永劫、新しいデータを提供するつもりだったのかな、サンソフトは」
「……どうでしょうね? ふと気づいたのよ。親亀カセットに進歩がないことに」
「データを変えるだけっていわれても、スポーツゲームは作を重ねるにつれて、マイナーチェンジいいかえれば進化していくもの。ハリキリスタジアム、通称ハリスタだって、究極ハリキリスタジアム 平成元年版においては、選手エディットができたり、究極ハリキリスタジアムⅢでは、大奮発の130試合のペナントをしかも成績記録付きと進化させたのりさ。親亀子亀システムは、それができないってことに誰が最初に気づいたのかな」
「サンソフト? ユーザ?」
「どうだろうね。90年の選手データの入った親亀カセットに、91年開幕版のデータが詰まった子亀カセットを入れる。正しすぎる使い方。90年と91年の開幕の間にOBオールスターでも楽しんでねとOBオールスターのデータ詰まった子亀カセットを発売するのもユーザフレンドリ」
「91データ決定版を出すのが、本当のユーザフレンドリだろうけど、子亀カセットは二度と発売されることはなかったのよね」
「もし、なんたって!!ベースボールのとりこになった選ばれた人がいるのなら、次の子亀カセットの発売を待ちつつ、永遠と91開幕版の子亀カセットをさしたり、OBオールスター編の子亀カセットに付け替えたり、時に親亀の90年のデータ、つまりバンス・ローが人知れず落合以上の成績を残していたデータに、初心忘れるべからずと帰ってみたりを繰り返すわけだね」
「罪づくりね、サンソフト。でもそんなことはどうでもいいのよ。問題は、伊藤の頭の中にも正しくファミコンソフトの塗りつぶしが行われていることよ。1000を優に超えるファミコンソフトを漏らさずチェックして消してく作業なんて普通の頭でできるはずないわ。もしかして伊藤って天才?」
「天才かなあ? ただアディアンの杖よくやったな。ゲームに夢中になったら頭が良くなっちゃったってキャッチフレーズは大げさでないかもね。マイケルのイングリッシュ大冒険は苦手。英語アレルギーっていうか、マイケルといっても、子ども好きじゃなくて、ホワッツマイケルの方ね。あの生意気猫顔がさ」
「そうか。私と伊藤、どっちも天才かもね。でもその天才がなにやってるんだろうね……」
「……」