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灯ってないランプの残り400強


「スパイVSスパイみたく、敵の動きが察知できないけどね、伊藤の言ってることはかねがね正しいのかな」

「ついに白状したな」

「白状、なにが? 私はどうやって、シャンハラの箱をぶん投げたというの? か弱い女子高生よ。帰宅部よ。激闘!!スタジアム部や、KAGE 闇の仕事人部やら、ヒルズファー部から誘われても、体力的自信がないから断ったくらいな私よ」

「激闘! スタジアム部? なんだいそれ、うちの学校にそんなクラブあったかい?」

「あああったわよ。激闘! スタジアムのイニングまたぎに挟まる選手のフォームの止め絵を真似する部よ」

「へえ~」

「へえ~ って感心しないで、他の二つのクラブのもどかしさにも言及しなさいよ」

「え、でも気にならないし……」

「そんなわけないわ。なら私から、種明かしして差し上げる.ヒルズファー部は、お馬に乗って疾走するの、KAGE 闇の仕事人部は、ガルダ打倒にアメリカに乗り込むクラブよ」

「たしかに体力を使いそうだけど、激闘! スタジアム。人によっては、慣れ親しんで激スタと略して呼ぶ向きがあるかもしれないけど、激スタ部は、そう体力いらないんじゃないの?」

「それはどっこい、止め絵に成り切るのも体力使うらしいのよ」

「へえ~ ってそんなはぐらかされないぞ。体力ない振りしても無駄。工藤は、一見、標準的女子高生に見えるが、実は体力の塊なんだ。だから、扉の開閉も阻止できるし、ファミコン詰め合わせの箱をぶん投げることもできる!」

「ふふふふ。そうよ、そのとおりよ。私はね、小さい頃から、目指せ、ハイパーオリンピックの星と、お父さんに鍛えられてきたの。だから、これしきのことできる体力があるのよ」

「ハイパーオリンピックの星?」

「ええ。私のお父さん、私にハイパーオリンピックに出てもらいたっかったんだろうね。それこそスパルタの毎日よ。ロードマン 激走!!日本一周4000Kmに感化されたお父さんにムリヤリに日本走らされたり、ヒーローオブランスの水着の女剣士みたく、妙な立ちうさぎ跳びもした。精神力を鍛えるために魁!!男塾ですっかりおなじみの油風呂に入ったりもしたの。おかげで、立派な体力自慢の女の子になったわ」

「そんな工藤が、どうして帰宅部に落ちぶれた? 僕も帰宅部に所属する身として、帰宅部を悪くいいたかないが、帰宅部の世間的イメージはすこぶる悪い。クロックスとかパニックスペースとか、書き換え専用500円のお気軽、粗悪なパズルゲームを連発する徳間書店みたいなもんだ。そんなスポーツ少女の工藤が……」

「目指すハイパーオリンピックがないことに気づいたのよ。だって、小さい頃から、ハイパーオリンピックに出ろ、出ろと言われて、アトランタオリンピックの次こそは、ハイパーオリンピックと信じていたら、次は、シドニーオリンピック。シドニーオリンピックの次こそは、ハイパーオリンピックが開催されるはずと信じて疑わない私の前に訪れたオリンピックは、アテネオリンピックよ……。もう諦めたわ、もう理解できたわ、ハイパーオリンピックは、未来永劫開催されないと。騙されたと強く思った私は、おかげで、大のスポーツ嫌いよ。おかげでフェイバリーソフトだったハイパースポーツを窓から投げたわ。前作と違ったことやりたっかったんだろうけど、クレー射撃に、三段跳びに、アーチェリーに、走り高跳びってふざけたほど地味よね」

「そんな過去があったのか……」

「伊藤の知らない私を見せたくて、うずうずしてた。でも見せれなかったの。だから壁で2分割された世界の間隙をかいくぐって、本当の私を見せてみたの。さすが、伊藤ね。感づくなんて」

「なるほど、そういうわけか。ということは、誰かは存在しないことでいいのかな? コードネームなんだっけ? わかりやすいように名付けたコードネームが逆に、僕をがんじがらめにする。バイオ戦士DAN インクリーザとの戦いだ! ずいぶん長ったらしいけど、バイオ戦士DAN インクリーザとの戦いだ! えっと、おっと、えっと、言ってるそばから忘れちゃったけど、そうだ!! バイオ戦士DAN インクリーザとの戦い! は本当にいないのかい?」

「それは言いたくないわ。解き明かされない謎が一つくらい転がってもおかしくないわ。伊藤の私への態度を確かめるように、いないファミコン好きの誰かを仕立て上げて、伊藤の私に対する気持ちープロポーズ~はデキスギだと思うけど、を引き出せたし、それとも本当に存在して、伊藤の執念が消し去ったかもしれないし、どっちでもいいじゃないのよ、どっちでもさ。ドンキーコングJRを買ってきてと子どもに言われて、間違えて前作のドンキーコングを買ってきたお母さんだって、泣き叫ぶ子どもを見て、どっちでもいいじゃないのと心でつぶやくわよ」

「そうかな? 僕が子どもだったら、強硬手段に出るほどの間違いだよ、前作と続編を間違えて買ってくるなんて。天地を喰らうを買ってきてと母親にことづけて、天地を喰らうⅡを買ってくるならまだしも、欲しくもないのに、同じ本宮ひろ志作品である赤龍王を買ってくるお母さんとか最低だよな~」

「ずいぶん気の利いたお母さんね。赤龍王と天地を喰らうを間違えるなんて。弟子である江川達也作品のまじかる☆タルるートくん2を買ってくるひねりのきいたお母さんよりはましだけどさ。それはそうと、行きましょうよ」

「そうだね、壁に囚われてる暇はないんだ、僕と工藤は進む」

「目指せファミコンショップよ」

 こうして伊藤と工藤は、ふたたび取止めのない話で、地球の滅亡のカウントダウンを早めることになる。二人の笑い声が戻るとき、地球には悲痛の叫び声がこだまする。

 


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