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出会いは空から落ちてきた


 伊藤の見上げた空から落ちてきたモノは、希望であろうか絶望であろうか。運命の歯車は、伊藤と工藤ではない第三者から動き出す。

「覚悟はできている。ぽかんと上空ながめている隙にテトラスターやクライシスフォースの戦闘機に撃ち殺されても後悔しない。ただプーヤンの豚の矢に射抜かれるのは人として屈辱」

 伊藤は、ドアノブを握りつつ、上空からの攻撃に気を配る。注意を扉の向こう側より上空に向けた伊藤の目に飛び込んできたものとはーーー。

「落ちてきたのは、シャンカラ? シャンカラ! の箱!!」

 壁の向こう側から降ってきたモノは、伊藤の大方の予想どおりボールの形状したモノではなかった。夕日を浴びながら降り注ぐのは、長方形の箱であった。

 伊藤はどう対応すべきだろうか、そもそも伊藤は壁越しに落ちてきたモノを弾き返す道具はない。

「縦長の箱の形状からスーパーファミコンのソフトと勘違いされがちだが、シャンカラは確かにファミコンソフト!」

 箱、シャンカラの箱、たとえ、箱の中身が入っていたとしても、伊藤はよける必要はないはずだ。落下スピードが加わり、多少のダメージはあるかもしれないが、しょせんファミコンのロムカセット入りの箱。たとえ、頭に当たったとしても、伊藤に致命的なダメージはないだろう。ただ、伊藤は、工藤とごっこ遊びの約束をしたのだ。約束を果たしたなら、伊藤は、どうにかして落ちてきた箱を地面に着く前に、壁の向こう側に弾き返さなければならないのだ。

 さあどうする、伊藤よ?

「弾き返すしてみせる。それも素手で。僕は時に不可能を可能にするんだ。イー・アル・カンフーで培った三角飛びの要領で弾き返す」

 伊藤は、ついにドアノブから手を離した。そして、勢いよく壁を蹴り上げて、その反動で高く飛んだ。腕を長く伸ばした。

「いけえ! WWFレッスルマニアチャレンジで培ったラリアットで、弾き返してやる」

 勢いよく飛んだ伊藤の伸ばした腕の二の腕の辺りに、シャンカラの箱が当たる。これで壁の向こう側にシャンカラの箱ごと弾き返せれば、伊藤の執念は実るのであるが、人生とは、そうそう上手くいくものでなく、伊藤の二の腕に当たったシャンカラの箱は、わずか20センチのホバリングを見せたあと、虚しく地面に落ちる。

「ああ……失敗!! 僕の暗黒神話にまた新たな1ページが加わる! って暗黒神話って諸星大二郎作品のゲーム化なんだね……諸星大二郎作品のひとつにダラダラと高校生が語り合う作品があるけれど、まるで僕と工藤みたいだ」

 失敗をしたから伊藤に何ら不利益なことはないのであるが、伊藤はこの世の終わりかのごとく深く落ち込む。正しくは、この世の終わりなのだから、落ち込んでもおかしくないが、この世の終わりに落としめているのが、伊藤張本人である。伊藤は、終わりゆく世界に罪悪感を感じるよりも、ごっこ遊びを不完全なものにしたことを悔いているのだから、面白いものだ。

「……クソ! クソ! 参考にしたプロレスゲームがまずかったか。洋ものでなく、闘魂倶楽部や激闘プロレス!!闘魂伝説あたろの日本プロレスを参考にすればよかった。日本人と欧米の人じゃ体の作りが違う。ラリアットなんて参考にならないだ……どうしてそんな単純なことがわからない? 明治維新なんてで歴史を学んだ僕が盲点なんだ……。あんな、アホっぽい龍馬で歴史の何がわかる? 歴史を学ぶなら甲竜伝説ヴィルガスト外伝で学ぶべきだった! ってアリア国の歴史を学んでどうするんだ……。僕の学ぶべき欧州人と日本人の根本的な差はなんのファミコンゲームで学べばいいんだよ……」

 地面を叩いてくやしがる伊藤。ただ明らかな失敗で失策であるが、伊藤の被った物理的ダメージは驚くべきほど少ない。

「……悔しさで身をくねらせてる場合じゃないな、さあ立ち直ろう」

 伊藤は、落ち込んでることわずかで、シャンカラの箱処理にかかった。

「これが噂のシャンカラの箱……たしかに一見スーパーファミコンのソフトだ。どれどれ中身を拝見……」

 伊藤は、何気なく、箱からソフトを取り出してみた。

「……説明書付きか。気が効いてるね。買い取り価格100円割増だよ。特にシャンカラとか独自性の強いゲームは説明書ないとね~……うん? 様子がおかしいぞ」

 伊藤が、箱から説明書を取り出してびっくり、なんとシャンカラの説明書ではなく、別のゲームの説明書が入っていたからだ。

「……これは! おたくの星座の説明書ではなかろうか。おたくの星座といえば、アシスタントにほとんど漫画を書かせることで知られる本宮ひろ志がシナリオ。そしてキャラクターデザインが、めったに漫画自体書かないことで知られる江口寿史という、割と豪華な組み合わせの作品として知られる。箱がシャンカラで、説明書がおたくの星座とは驚き桃の木であるが、僕はうろたえない。ロムカセットはシャンカラであることを強く信じているからだ」

 おそるおそる伊藤は、ロムカセットを抜き出してみた。すると、どうだ二度あることは三度あるではないか。

「! 箱がシャンカラで説明書がおたくの星座で、出てきたロムカセットが、ジキル博士の彷魔が刻だと!! どういうことだ、箱がシャンカラで説明書がおたくの星座で出てきたロムカセットがジキル博士の彷魔が刻! 3つのソフトの関係性はどこに……うん? 説明書にロムカセットにロムカセットを収入するプラスチックケース

を取り出しても、いまだごもごとした違和感があるのはなぜだ! ま、まさか!」

 伊藤は、空いている方を、地面に向けて、シャンカラの箱をゆさゆさと振ってみた。するとどうだ、ディスクカードが二枚、三枚と落ちてくるではないか。なんと恐ろしいことに、シャンカラの箱には、ロムカセットだけでなく、ディスクカードも収納されていたのである。

「まさか! なんと!! これは、ファイヤー・バムじゃないか。そしてこっちのは、トップルジップ! 極めつけに」3Dホットラリー ファミコングランプリII! 他二枚の黄色のディスクカードと明らかに印象を別にする青のディスクカードが光り輝いている! シャンカラの箱におたくの星座の説明書に飛び出るジキル博士の彷魔が刻。そして箱に挟まる二枚の黄色のディスクカードと一枚の青のディスカード……。僕を悩ませる、6つのソフトが導けし答えは?」


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