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清純なセクロス


 扉の向こう側には工藤がいる。そして誰かしら工藤に力添えして、伊藤の扉の開閉の邪魔をするものがいる。伊藤が見事謎解きをしたのだから、工藤ともう一人の誰かは、大人しくドアノブを離し、伊藤の推理力の素晴らしさに報いるべきであるのだが、工藤ともう一人の誰かは、一向にドアノブを離そうとしないのか、扉の均衡は保たれたままである。

「工藤、いい加減にしてくれ! 悪ふざけは終わりだ! 銀河伝承のように、ロムカセットよりも安価で書き換えができるのが売りなのに、書き換え不可で小説とカセットテープを抱き合わせて5000円なる妙なプレミア感をつけるイマジニアのような悪ふざけは辞めろ! たいして流行ってもいないのに、メガドライブとマルチプラットホーム展開したインセクターXみたいな悪ふざけは辞めろ!」

「推理は見事だけど、ドアノブは離しはしないわ。だって楽しいじゃないの、こっち側の世界にいけたくてもいけない伊藤のもどかしさってさ。ペンギンが大好きで、夢ペンギン物語なんてペンギンゲーム作ったのに、コナミのペンギンといったら、けっきょく、けっきょく南極って言われてしまう。コナミみたくさ。でも発売日がかぶってるから、ワイワイワールド2にも登場できないのよ。けっきょく南極、後の携帯版に登場して無念は晴らしたけどさ」

「いいから工藤。そして見知らぬ誰かよ、ドアノブを離せ!」

「持久戦よ、こうなりゃあね。ファミコンユーザーのニーズにあってないんじゃないかと分かりつつも、二作、三作と出していけば、そのうちパソコンみたいに定着するんじゃないかなって感じで、出し続けていたイースシリーズみたいね。同じファルコムの看板シリーズであるドラゴンスレイヤーをいきなりⅣから出して、おいおい前の三作なんだよってゲームユーザの大多数を占めていたファミコンユーザに喧嘩を売るようなマネはしない」

「って工藤。君は今、僕に喧嘩を売っているじゃないか! 早くドアノブを離せ! このままダラダラと意地の張り合いしてても意味のない」

「そうね、そうかもしれない。じゃあ、伊藤。スーパーダイナミックバドミントンをしようか?」

「? どういうことだ!」

「正しくは、スーパーダイナミックバドミントンごっこかしら。つまり、この高い壁をネットに見立てて、バドミントンするのよ。バドミントンがお嫌なら、同じく壁をネットに見立てて、サンリオカップポンポンバレーごっこでもする?」

「どういう誘いだ。引掛けか? 僕をドアノブから離す巧妙な策なのか?」

「なんの腹黒さもないわ。ダービースタリオン全国版を出して、データの入れ替えだけで、ぼろ儲けしようって、薗部さんみたいなね。心は綺麗。私の顔も綺麗。ガチャポン戦士シリーズの二作目までがバンダイが発売して、3~5はユタカなるおそらくバンダイの子会社が発売したく綺麗よ」

 工藤の企みはなんだろう。今の伊藤には知るべきではないが、壁をネットと見立てたごっこは、伊藤にも、明らかな優位点がある。それは伊藤だkでなく、工藤もドアノブを離す可能性があるからだ。工藤に力添えする誰かが、誰かは分からない。ただ工藤が壁をネットに見立てたごっこをするならば、工藤がおめおめとドアノブを離すならば、それは伊藤にとって、格好の大チャンスだ。

「よし、なんだかわからないけど、乗ってあげよう。しかしボールはどうする? 壁をネットに見立てて遊ぶなら、ボールが必要なはずだよ。男が男と上半身裸でバレーするV’BALLのボールでも使う? ごっこだし、本格的にやる必要がないなら、タイトーバスケットボールのボールでもいいし、ちょっと楕円形なけど、スーパーラグビーでも可だろうし、プラズマボールの未来型ボールも用意できるよ。ちょっと小さくて固めでもいいなら、ゴルフっ子オープンで使用していたゴルフボールはどう? なぜか、敵ゴルファーに当時充電中だった長嶋茂雄そっくりのキャラが登場するゲームだ。今なら一茂が茶々入れしそうなくらいの危うさだ」

「ボール? 伊藤がボールなんて持ってるわけないし、すぐに用意ができるわけがないでしょ」

「それは工藤、君も同じことさ。君だってボールを用意できないだろうに」

「たしかに私の所持品は、落ちゲーのつまったアタッシュケースに学校用具の入ったバックだけ。ボールを所持する余裕なんて、どこにもない。でも私には、一緒にドアノブを握る同志がいることをお忘れ?」

「忘れちゃいないよ。セクロスが、今の時代、違う意味を持っても、僕は、セクロスを奇妙な未来型バイクレースと捉えているように、忘れちゃいないんだよ」

「そう。その誰かが、男か女かもいわないけれど、もしも男なら、付き合ってもいないし、さして好意も抱いてない、レイラのレイラみたいな過激な水着姿が想像できない清純な女子高生な私にプロボーズする暴挙を犯した伊藤は、気落ちしてフォトンとするかもしれないけど、その誰かが、ボールを持ってるとしたら?」

「したらって、ならそのボールを使用して、壁を利用したネットに見立てたごっこをすればいい」

「そうわかったわ。伊藤のお許しがでたわ」

 工藤は、伊藤から話し相手を誰かに変えた。それは、伊藤と工藤が下校をし始めて、初めてのことである。

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