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ドアツードア

「それにさ中国がないと西遊記ワールドとか西遊記ワールドⅡとか元祖西遊記 スーパーモンキー大冒険とか珠玉の西遊記ものが存在しえないことになるし、霊幻道士やキョンシーズ2も木っ端微塵になくなる。え? お白いの妖怪なんて興味ないって、そりゃ僕もだけど。闘将!!拉麺男だって中国が舞台じゃないと、日本でラーメン巡りするグルメゲームになりさがるぞ。それじゃわんぱくコックンのグルメワールドだよ。飯野賢治作だってさ……心暗くなるよ」

「まだ中国話を膨らませるの? というかダメージ少なそうね、中国もののゲームがなくなっても。西遊記ゲームだって西遊記がなきゃ他の設定借りたありきたりのアクションゲームになってるはずだわよ」

「さあそろそろ壁登りと行きますか……」

「私の的確な指摘は無視ですか、あっそうですか」

 垂直のそびえ立つ壁を伊藤はどう登り切るつもりなのだろうか。

「ペっペっと手に滑り止めのつばをまき散らして、さあ登りましょうか」

 伊藤は壁を臨むように立ち尽くす。あまりにも微動だにしないものだから、工藤が割り込んでしまう。

「どうしたのよ伊藤。登らないの? とっておきの大戦略があるんでしょ?」

「実はね……僕の頭の中には、なんの戦略もないのだよ。将棋名鑑’92で頭を鍛えたはずなのに足りな語ったかな~。将棋名鑑’93もやり尽くすべきだったかなあ~」

 伊藤は腕組みして、思案する。

「どうしたものか~ 」

 苦悩する伊藤と尻目に、工藤は、なにやら笑いながら壁をまさぐっている。

「どうしたんだ、工藤なにかとびっきりのアイデアが思い浮かんだかい?」

「キテレツ大百科のコロ助いうところの英ちゃんが、ご先祖のアイデアをそっくりそのままいただいてこれ見よがしに発明品を作るとはワケが違うわ。あくまでも私の発想よ、私の発見よ。五目ならべやらOthello……おっとオセロはあくまでもカワダの商標ね。他の会社が出すと、リバーシとかいうのよ。で鍛えた頭脳は、伊藤とはモノが違うのよも。モノがさ。」

「発見、何がだよ」

「これよ、これ、私が伸ばす先をよく見て」

 工藤が伸ばす手の先には、ドアノブがあったのだ。

「あ! なんだ壁の向こう側にいく手段は扉! だったのか」

「そうよ、あいにく見落とすところだったわ。保護色というか壁と扉が同じ色で一体化して、よく目を凝らさないと扉があるってことは認識できなかったけど」

「なんだ、扉があったのか、ご丁寧っていうか。そりゃこんな壁がいきなり断りもなしにできたら苦情が出るよな。通行手段があってしかるべきだ。でもなんでもわざわざ目立たない同色にしたんだ? ファミコン末期に星のカービィとかジョイメカファイトみたいな好ゲームを出すような感じかな。わざと同じ色にするのはさ」

「TAO ~道~いっぱいじゃないわよ。ただの道いっぱいよ。道いっぱいに敷き詰めてしまって、これじゃあ向こう側にいけないじゃないかって現場監督に起こられて、突貫工事的にあいすいませんってなわけで、この扉をつけたのでしょうね、だから保護色っていうそれと気づかないデザインに落ち着いてしまったのでしょうね」

「初めて手にかける扉のノブはなんでもドイルド 恐怖の扉。未知なる世界に私たちを誘うの。誰だって不安と期待が入り混じるだろうけど、今の私は少し違うわ。知っている世界が広がっているの扉の向こう側わね。あえて例えると、脱獄の気持ちよ。扉の向こうは明るい世界が広がっている確信……」

 工藤はドアノブを捻ると、開いた扉の向こうの世界に行ってしまった。

「あ、工藤、待ってよ」

 一人になりたくない伊藤は、工藤の後を追う。

「あ、扉閉まった……。まったく工藤はぎゃんぶら自己中心派だなあ」

 すでに工藤の開けし扉は重々しく閉じていた。伊藤が工藤のいる扉の向こう側に行くのなら、伊藤自ら扉を開く必要性がある。

「ここにドアノブがるとはなあ……」

 工藤の握ったぬくもりがまだ残るドアノブに伊藤は手をかけた。

「ドアノブは右回りと……」

 常識どおり、伊藤はドアノブを時計回りに回す。

「そして、僕を工藤のいる世界に誘え……。ドアドアみたく扉の向こうには囚われたモンスターなんてことはない。いるのは工藤だ……あれれ……おかしいな……。扉が開かないぞ」

 工藤が何の苦もなく行けた向こう側に、伊藤は四苦八苦する。

「どうして? なんで? おいおい、僕が向こう側に行くのは僕だけのソロモンの鍵が必要なのか?」

 いくらもがこうと開かない扉。

「引いてもダメなら押してみろって……格言がある……僕は行き詰るとこの格言を元に絶体絶命のピンチをくぐり抜けてきた。いくらやっても解けないコスモジェネシスに行き詰まった時だってそうだった。解けないなら諦める。僕はゲームをクリアせずに諦めることによって、胸に抱いたモヤモヤを消し飛ばすことができたのだが……今は違う。僕は向こう側に行かなければならないんだ。諦めるわけにはいかないんだ!」

「伊藤まだ~ 早くしてくれない~? 時代が時代なら夕方5時半から高橋名人のバグってハニーの放送に間に合わないわよ~

 はやし立てる工藤の声に、伊藤の焦りはより募る。

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