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両面と片面のあからさまな差

「AKIRA! どうして大々的に公開する映画のゲーム化をタイトーに依頼したのか、タイトーから申し出たのかよくわからないが、とにかくAKIRA」

「AKIRAもタイトーなの。へー」

「一見不可思議だが、常道。ゲーム作りのノウハウはタイトーにありと大友克洋か講談社は見たのだろう。目算どおりゲーム作りは弾んだ。どうだ、AKIRAのグラフィックは。ファミコンにしゃあ上出来のグラフィックで、AKIRAのSFちっくな雰囲気をそのまま再現したんだぞ」

「タイトーは最先端の技術を用いていかなるご要望にもお応えできるってわけね、へー」

「なにか感動が薄い! ギミア・ぶれいく 史上最強のクイズ王決定戦の問題数くらいに薄い。何問搭載かは存じ上げませんが、おそらくその問題数たるや、金返せの薄さだろう! 2作目まであったんだぜ! 前作が好評か、それとも問題を入れ替えるだけで発売できるからかそんな事情は申し上げませんけど!」

「クイズゲームねえ……。ナゾラーランドで懲りたわ。数時間もやれば同じ問題にブチ当たる」

「雑誌購入と思えば、高くないはず。ディスクカードだ。500円で書き換えできるんだぞ」

「そうよ、安さにつられて第2号、第3号に、スペシャルのクイズ王を探せまでやりつくしてしまったけど。もう”なんきん”はけっこうな気分よ。なんきんのアドベンチアなるゲームもあるらしいけど、あたしはノータッチよ」

「500円で書き換えできて新しいゲームを手にできる。今思えば、なんて幸せなゲーム環境だったんだろう。ワンコインで最先端のゲームにアクセスできる!」

「最先端といって、発売から数カ月のラグはあったけどね」

「それに一枚のカードに二種類のゲームを収めることもできたんだぜ。片面のきね子。裏の面にきね子Ⅱなんて粋なまねができる」

「はい? なにをいってるの? きね子はどっとも両面使用よパズルゲームだからといって容量を舐めなさんな」

「なんだって、それじゃあ。僕はいままで、間違った知識を詰め込みこうして歩んできたのか! それじゃあ両面に二種類のゲームをつぎ込むって……」

「ファミコンの初期のカセットの移植のソフトね。例えば、表が麻雀、裏がベースボールなら可能よ」

「なにか違う。数合わせのタイトルでなく、ディスクならではのタイトルで両面で二種類のゲームを収めることはできないのか。例えば、アイアムティーチャー 手編みの基本とスーパーマリオのセーターを両面づつとか!」

「それどっちも両面」

「なんだって!」

「なら、プロレスとバレーボール、あるいはスマッシュピンポンはどうかしら、どっちもディスクオリジナルのソフトで片面でできる良ゲームよ」

「う~ん。どうもしっくりこない、スポーツゲームっては楽しさは伝わるけど、いかにも労を重ねずに作れます感が出てて」

 袋小路にはまる伊藤を尻目に、工藤は制服のポケットから一枚のディスクカードを取り出した。

「じゃーん。見て見て! これよ、これ、あなたが望むディスクカードならではの片面ゲーム二種類を一枚のディスクカードに収めたもの!」

「うわ!」

 プラスチックのケースに大事そうに閉まわれた工藤のカード。そのシールのメモ書きには、堂々たる書体でザナックと記されていた。

「そうか、ザナックは片面だったんだ。今でも色あせることない隠れたシューティングゲームの秀作のザナックが片面とは、今の大容量が良しとされるゲーム業界への警鐘を鳴らしているようにみえてしょうがない」

「ふふふふ」

 工藤は伊藤に見せつけるように、ザナックの面を見せ続けるが、伊藤としては当然、裏面に所有されているゲームタイトルが気になるわけだ。いつまでたっても、表から裏に変えない工藤に焦らしを切らした伊藤は、それならば、どうにかして裏面を見てやろうと首を回し努力をするのだが、ちらりと見せるディスクの裏面だけじゃ何のゲームが所有されているかどうかまでは分からない。

「なんだよ、もったいぶって。もったいぶるってことは、よほどいいゲームか。よほど見せられないようなゲームかのどちからか。工藤の性格を考えみると、後者が正解と僕は見る」

「さすが伊藤ね。読みが鋭い。そうよ、見せられないようなゲームよ」

「ははあ。今ようやく記録の回路が正常化したぞ。そのゲームはパチコンだろう。ファミコン最初のパチンコゲームだ」

「残念ね、パチコンはロムカセットがオリジナルだぞ」

「なに。それじゃあナイトムーブか。落ち物パズルアクションの最盛期に出したまがい物だ」

「残念、片面ディスクオリジナルは、みっつしか選択肢ないのに」

「それじゃあ」

 工藤は伊藤の質問に応えることなく、突然、空手の型の真似事をしだした。突きを二回繰り返すと、蹴りを一回。

「なんだい、いきなりカラテカの真似事か? カラテカを正しく再現するなら、もっと厳かな雰囲気を醸しださないと」

「ぶー違うわ」 

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