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アメリカ 香港 ブロバニア

「ああそうだった。ひとつずつ工藤の提案を潰す作業をしてたんだっけ」

「急に素に戻らないでよ」

「それでクレイジークライマーの時、どうして伊藤ははっとした顔をしたの?」

「登るのさ」

「登る? まさか、この壁を??」

「ああ。壊せもしない、掘り進めることも乗り物で飛び越すこともできなきゃ登るしかないよな。こんな高い壁を登るなんて、まさにクレイジークライマーだけど、仕方がない、僕と工藤はこの壁を乗り越えないといけないから」

「登るってさあ、ほぼ垂直に立つ壁よ。手を付くとこもファミコンソフト計測ランプしかないのよ。それいけ!アンパンマン みんなでハイキングゲーム! ってわたしがつくとランプがひとつ付くのよ。アハハ、こうして間近でランプが点くところみると面白わね~。ハローキティワールド。ほら、また点いたわ~」

「まったくいたづらにランプを点灯させてさ。君の一声でどらだけの人々の命が吹き飛んだと思うんだ」

「そうだったわね。エジプトの人々は平気かしら。香港の人たちは無事かしら。上海Ⅱの人たち? 心配は突きないわ」

 工藤の無感情の心配をよそに、ランプの明かりはひとつふたつ、みっつと無常にも点灯していく。

「まあ今ので点灯するの? おちおち世界の人々の心配もできないじゃなくて」

「上海Ⅱが決め手だよ。なんだいⅡって。Ⅱの一言でエジプトも香港も地域名でなく、上海のそっくりゲームと認定されたわけだ。地域の人々を心配してるとは思えないよ。同じく上海路線の石道をダメ押しに付け加えておけば完璧だったけど」

「ウッソー! そんなんでランプが点灯するって、ふしぎなブロビー ブロバニアの危機よ。ブロバニアって現実の国・地域でもないから何も起こらないわよ、エヘヘ」

「エヘヘってブロバニアが存在しなくとも、君が言う度にどっかの人々に被害が及んでるのは間違いないんだ」

 ランプの明かりは、点灯の数を増し続けてる。無論、そのすべては伊藤と工藤の仕業である。

「ランプの点灯数も見たところ半数超えてるわね」

「ということは、世界の半分の人々の命が失われたってことか」

「まったくいったい誰? 誰がこんなにランプを点灯させたの?」

「間違いなく僕と工藤だろうよ」

「すべてが私と伊藤の仕業? まさかこの世の中の人々の誰もファミコン話をしないってこと? まさかねえ。今でもスーパーマリオブラザーズは売れてるのよ。Wiiのマリオをやってるプレイヤーが勢いファミコン時代のマリオに話を咲かしてもおかしくないわ。マリオブラザーズの頃のルイージは、マリオとまさしくそっくりのよく肥えた体型だったのに、どうして年々貧相になっていったの? 帰ってきた マリオブラザーズは世界初の宣伝つきのゲームだから100円安く書き換えができるんだぜってしごく当たり前の承知なことを自慢げに話しているはずよ。ゴルフとかゴルフUSコースやゴルフJAPANコースのヒゲデブのおっさんはやっぱりマリオであることを分からせたマリオオープンゴルフもね」

「工藤。今、君はマリオというとんでもないビッグタイトルをしかも5本も消費させたね。僕はランプを凝視してたからよく分かるけど、今の君のセリフでランプが5つも灯ったよ」

「ウッソー」

「つまり、ファミコン話による世界滅亡が始まってから、君が初めてマリオの3本を出したことになるよ。これから世界の残った半数の人々がマリオ話しをしても点灯はしない。マリオの分は君がすでに点灯させているんだからね」

「ウッソー またかわいらしく手を口で覆ったわ。アイドル八犬伝の西園寺エリカみたいでしょ。ウフフフ」

「笑ってる場合でもカワイコぶりっ子してる場合でもないよ。君がマリオなんていうファミコン最大のビッグタイトルに触れるから、ほらゴゴゴゴだよ」

 耳をすまさなくてもよく聞こえるくらいに、地鳴りが伊藤と工藤の耳に伝わってくる。重く激しい地響きは、伊藤と工藤の胸を打つ。

「……ただならぬことよ。たしかゲームタイトルによって破壊力が違うと検証結果が出たのだけど……」

「アメリカくらい沈んでもおかしくないほどのマリオだぞ。知名度売り上げ影響力、すべてにおいて申し分ない」

「……アメリカが! それじゃアメリカンドリームも夢見ることもできないのじゃないの……あらら、ランプが点かないわ。一押し足りないかしら。パチ夫くんよ、パチ夫くんものよ……あ、点灯した。うんうん、その調子よ。よーし……もう一度、初めから、ってアメリカが! ベガスコレクション カジノより愛をこめてもできないじゃないの! マンハッタンポリスも不可よ、舞台がマンハッタンだから様になるのよ、これがアメリカなくて、舞台が八王子とかだったらイヤでしょ? それから、えっと、アメリカ舞台のファミコンゲームって、えっと~」

「感情が赴くまままくし立ててるのに、いちいちつっかかって考え考えにならないでよ、もう……」

「マイクタイソン パンチアウト!! だってなくなっちゃうのよ? スポーツ大国のアメリカだから成立するタイソンのビッグファイト、ビッグマネーよ。だからこそ発売前にプレゼント用お特別なものが価値がでるのよ。アメリカがなきゃタイソンなんてちょっと凶暴なおっさんよ。N.Y.Nyankiesなんてニューヨークが舞台じゃないと成り立たないでしょうよ。まあ猫がどこで飛び跳ねてもかまないだろってのは抜きにしてさ」

「まあアメリカがなきゃゲームの反映もないかもね。ただでさえ初期のゲームデザインはアメリカの影響を受けているのだから。チキチキマシン猛レースなんてファミコンの指輪物語存在といえるかもよ。タイニートゥ-ンアドベンチャーズだってアメリカうさぎがないと存在価値がないし、1がなきゃ2だって存在しないことになる。ナイトライダーみたくアメリカドラマやアンタッチャブルのような洋画のゲーム化も無意味かもしれない。アメリカ大陸なきゃ、コロンブス 黄金の夜明けもないしね」

「影響力といったら、スターウォーズも大きいわよね。ファミコンのスターウォーズは陰が薄いけれどさ」

「でも中国が陥落したかもしれないじゃないか」

「中国も大変よ。中国が堕ちたなら、三国志Ⅱ 覇王の大陸とかムリになる」

「なら信長の野望とか武田信玄とか武田信玄Ⅱとか独眼竜政宗でもやっとけばいいじゃない。日本だろうと中国だろうと武将シュミレーションならいいじゃないのよ」

「三国志みたく中国大陸の取り合いのがスケールが大きくていいんだよ。まったく女の子は武将の野望というものが理解できなくて困る。正宗だって武田信玄だって東北を制覇するだけじゃ物足りず、全国制覇の野望を持ったでしょ。男と言うものはより大きな野望を持ち続けるものなんだ。中国みたく」

「男の子の野望か……。女の子だって負けちゃいないわよ。だって今私。世界滅亡というとんでもないことしでかそうとしてるんだもの」

「僕と工藤が今していることは、あくまでもファミコンショップ探し、そして壁を乗り越えること。世界滅亡は副産物にすぎないのさ」

「そうか、そうなのか、うん……」



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