荒井清和
「よし、次の検証をしようか。ぽっくんモグラーのごとく穴掘って壁の向こう側に行くだっけ?」
伊藤はまた得意のわざとゲーム名を取り違えて、いたずらに消費する策を施したのであるが、もうツッコミに飽き飽きしたのか工藤は、口をはさもうとしない。
「……」
「あれ、矢のようなツッコミが飛んでこないね? ぽっくんモグラーはもぐらたたきであってプレイヤーが掘り進めるゲームじゃないとかツッコミが来ると思ったけど」
「……」
「黙して語るつもり?」
「……」
「あ、まさか今度はツッコミに飽きた?」
「そうとも言えるし、そうでもないとも言えるわね。でも私にはコナミコマンドのご加護があるから、ファミコン話自体に嫌になるってことはないから安心してよ」
「工藤の矢のようなツッコミがないとなんだかやりづらいなあ~ 逆に……。それはそうと掘り進めるか。検証をするまでもないね。さっきもいったとおり、ミシシッピー殺人事件風に言い換えると”もういいました”なんだけど、地面である道路は、レーサーミニ四駆 ジャパンカップのミニ四駆をちまちまとチューニングするごとく丹念に舗装され続けているから、それこそゲームで使うような高機能なドリルがないと歯も立たないよ」
「激突!!四駆バトル……」
「え、それツッコミ? いくらツッコミにも飽きたといっても投げやりはよくないな。激突!!四駆バトルはミニ四駆ゲームのようで普通の四駆をモチーフにしたありがちなレースゲームだからって首尾よく的確なツッコミをしてくれないと話が流れるように進んでいかないじゃないか」
「……」
「まただんまりですか。まあいいや。またファミコンから離れるとやかきだから刺激しないでおこう。まあそういいわけで、掘り進めるのはばってん。じゃ次だ……」
「それはトップライダーでしょ? 風船バイクにまたがって擬似操作する……」
「いきなりなんだよ」
「あら、伊藤がツッコミに文句をいいなさるから、先乗してツッコミを入れたまでよ」
「……まったくひねくれてるなあ~ それはそうとどういう脈絡でトップライダーなわけ?」
「説明して存じ上げましょうか。伊藤は、エキサイトバイクのように壁を飛び越えって工藤はいったっけとか、またお得意のソフト名をわざと間違えて、いたずらにゲームソフト名を消費する戦略をとってくる。そしてゲーム名を取り違えるにの、飽き足らず、風船バイクにまたがるジェスチャーをして、私のそれトップライダーでしょなるツッコミを引き出すという、一気にバイクゲームの壊滅に乗り出すと企んでいるわけで、以上、私の先乗りツッコミの説明でした。えっへん」
「……おおまかにはよくわかるけれど、細部が少し気に食わない部分がある、バイクにまたがるのはわかるけれど、風船バイクにまたがるジェスチャーってどうやるのさ? いくらなんでもジェスチャーだけじゃ風船バイクの感じは引き出せない」
「そうかしら? 可能よ」
「なら工藤が実践してくれ。いかにも風船バイクにまたがってるように見えるジェスチャーを」
伊藤の一見すると無理強いに工藤は快く引き受ける。
「いいわよ、やってみせるわ」
工藤は、がに股になり、手を前に突き出して、右ハンドルを回す仕草をする。
「どうかしら? いかにも風船バイクにまたがってる感じがでてるでしょ?」
「……いや、バイクにまたがってるのはわかるけれど、風船バイクにまたがっているのか定かじゃない」
「しょうがないわね……特別に前段階をお見せしましょうか」
工藤は手を組み、ほっぺをふくらませて息を吹きかける。
「どう、これで、完璧でしょ?」
「……そりゃ風船ふくらませてるの? なんだかずるいな」
「ずるい? どこか? それに伊藤は隠し味に気付いてないのよ」
「隠し味?」
「ああ。風船バイクは60キロ以下しか乗りこなせないの。つまり私のようなスリムな女の子しかムリなのよ」
「工藤がスリム? え?」
伊藤が驚くのもムリはない。工藤は太ってないにしろ、高校生の年代にありがちな健康な丸みの帯び方をしているのだ。
「なに、その眼、失礼ね。私は着太りするだけなのよ。制服ぬいだら凄いんだから」
「なにが凄いんだ。どうみても誇るようなスタイルはしてないじゃないか」
これも伊藤の言うとおり。工藤はヒロイン失格と言い切れるほど、くびれも胸のふくらみもない。女子高生らしく丸みを帯びているのなら、もう少し、胸があっても良さそうなものであるのだが。
「完璧なジェスチャーするとなんだか気分がいいわ~ じゃあこれ分かる?」
「終末の世界でジェスチャーゲームか……」
うんざりする伊藤をよそに、工藤は張り切る。
「これ分かる?」
工藤はせわしなく両手を動かし、やがて右手をつまむようにして前に突き出す。
「マージャン? ニチブツマージャンⅢ? 雀豪?」
「惜しい。ファミリーマージャンⅡ」
「……どこが違うんだ、同じ麻雀じゃないかというのは野暮なツッコミだろうな」
「調子が出てきたわ! 次はこれよ!」
工藤は急に苦しいそうな顔をして、天を仰いだ。すると、天に向かってもがくように、両手を交互に動かしはじめた。
「クレイジークライマー? なんか登ってるような……」
「正解!」
「クレイジークライマー? ……うん?」
「どうしたの」
「もしかしてもしかするぞ」
「それはいいからジェスチャーの続きよ」
「ジャスチャーはもういいよ」
伊藤の言い分を完全に無視。勝手にジェスチャーを始めれば、伊藤は答えざるを得ない。
工藤は両手を耳掲げて、忙しくステップを踏む。
「わかったよ。クインティでしょ」
「ご名答! どう制服のスカートがステップを踏む度に揺れるから、ドキドキしたでしょ?」
「どうかな~ 工藤の程よく太い太ももが垣間見れても、僕のサンダーバードはマハラジャも維新の嵐もしないよ」
「なにそのべーしっ君のような卑猥なとたとえは。それはそうと次のジェスチャーよ」
「やれやれ……」
なんかこkまで進めてお気に入り0だとものすごくつまらなそうなだなあ