表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
26/69

伊藤のいは異型のい 工藤のくは苦闘のく


「工藤が戻ってきてくれて本当に良かった。さあ……って何をするんだっけ? 僕らは何をするんだっけ? 残り僅かなこの世界において、僕と工藤は何をして死んでいけばいいんだ? フジテレビみたくバブルにあかせて子猫物語のチケットを配りまくるか? それともトランスフォーマーのように映画公開21年前にタイアップゲームを発売するか? トランスフォーマーⅡ換算しても大々的に日本で映画が公開するまでに20年の時を要してる。当時をよく知る者には、ああいまさらトランスフォーマー感はすこぶるあったようだ」

「メタルギアもそうね、今更感の度合いは え、今流行のメタルギアってあのメタルギアなの? って感じよ。てっゆうか目的はひとつでしょ。私と伊藤は、ファミコンショップにいくのよ。落ちゲーコンプリートを目指してね」

「ああそうか、そうだった……。目的がある。それだけで救われるかもしれないな。ドレミッこだって音楽作りに意味と目的を見いだせれば、8980円なら高値も許せることができたし、TMネットワーク LIVE IN POWERBOWLで、いちいちTMネットワークが出てくる意味を見いだせたかもしれない……あ~あ……」

「音楽とファミコンの融和性はすこぶるよろしくないわね。音源に限界があるからかしらね。いきなりミュージシャンだってそうオトッキーっだってコンセプトは、今定番の音ゲーに近いものがあるの当時ははやったとは言い難かった。聖飢魔Ⅱなんてデーモン小暮のタレント人生をあやうく台無しにする出来たったわ。そんなことはどうでもいいけれど、つべこべいわずに急げましょう。私と伊藤の死に場所になるかもしれないファミコンショップに」

「本当にファミコンショップは現存しているの?」

「どうかしらね……中古ゲームを扱うゲームショップは間違いなくあるであろうけど」

「壁にぶち当たった。比喩でもなんでもなく、僕と工藤はファミコンショップを探しているウチに壁にぶち当たり引き返すことを余儀なくされている」

「壁があったら引き返す……それでいいのかしら?」

「どういうことだい」

「壁を乗り越えないと始まらないのよ」

「乗り越えろっていったって、道いっぱいにそれこそ、エアフット 野菜の国の足戦士キック・チャレンジャーくらいに長々しく目いっぱいに壁は引き詰めている。高さも高さだ。飛ingヒーローだって飛び越えれないぞ、この高さは」

「乗り越えれないし、通り過ぎる隙間もない……ならレッキングクルーよ」

「レッキングクルー? ああそうか、壊せばいいのか……。って壊していいのか? この壁はメッセージボードであり、僕と工藤が世に送り出したファミコンソフトを数え上げる役目をしている。それをレッキングクルーのマリオみたくハンマーでぶち壊せなんて、恐れ多くて出来やしない」

「ならホッターマンの地底探検よ。壊すのはばかれるなら掘って進めばいい」

「簡単にいうなよ。僕と工藤はディグダグみたく高性能のドリルを保持しちゃいないんだよ。こんな舗装の行き届いた道を掘り進めるわけがない」

「ならモトクロスチャンピオンみたく、バイクで壁を曲芸みたく登りつめるのはどう?」

「バイクの免許もないのにさ、無理いうなよ」

「ムリムリムリって最初から諦めているから、物事が何時まで経っても進まないのよ」

「工藤だって、意味のない提案を繰り返しているだけじゃないか。工藤が今上げた提案の中で再現可能なものが一つでもあったかい?」

「何度もいってるでしょ。意味のないものはこの世の中にないって」

「そうか。コナミコマンドだって意味があったのだから、工藤の上げた提案だって意味があるものかもしれないな。よし、ひとつずつ検証してみるか。まず壁をぶち壊す」

 伊藤は、おそるおそる壁に近づき、アパートの見知らぬ隣人の部屋をノックするように、慎重に拳の裏で壁をたたき始めた。

「こん、こん、こん……ドンドコドン……ドンドコドンⅡ……。もちろん意味がなく叩いているわけじゃない。壁の材質確認だ」

「それで実地検証のもと、壁は壊れそうなの?」

「う~ん。僕は材質評論家じゃないから、むやみやたらに判断出来ないが、壁を叩いた感触を率直に述べると……アバドックスの攻撃力なら破壊できそうだけど、ヘクター’87の攻撃力だと厳しいって感じだ」

「なによその例え。まるでこっちに伝わってこないわよ」

「ごめん」

「まあシューティングゲームの一機を持ち合わせないと破壊できないほどハードってことは十分わかったわ。それにしても一機っていいかたはどうかしらね。ゲームって残機数とかいうじゃないのよ? ゲームがブームになって人々に浸透した馴れ初めがシューティングゲームだからこういう言い方が定着したんだろうけどね。例えば、エレクトリシャン。停電したアメリカ中に明かりをつけましょうと世のためひとのために役立っているリチャード・ライトがどうして一機、二機とか言われ方をしないとならないの? 人でしょ? 明らかにね。なら一人、二人と人間扱いするのが筋ってものよ」

「ちょっと待ってよ、工藤……それをいうならさ……」

 伊藤が工藤に鋭いツッコミを飛ばそうとした刹那、工藤は伊藤を払いのけるかのように、足早に自らの言葉を継ぎ接ぎした。

「そうね、ならうっでいぽこはどう呼んだらいいの? ぽこは木の人形よ。元は人間としてもね。木の人形を一人、二人と呼ぶのは忍ばれるし、なんなら残機数って言い方で統一した方が楽よね。人も異形も機械もひとえに、”機”として数えるのが正しいかも」

「あ~ なんで僕が首尾よく突っ込もうとしたのに、君は先走る? まあ僕がツッコムならば、木の人形なんて生易しいものじゃなく、バブルボブルで人間になったバビーとボビーのその後を描いたレインボーアイランドの人だから異型だか怪物だか判断つきにくいものを例に出そうと手ぐすね引きながら、ツッコミの瞬間を今か今かと、レリクス 暗黒要塞のロード時間の耐え難き長さくらいに待ちわびていたのに」

「ごめん~これもファミコンの世界に戻ってこれた、嬉しさからなのよ~ 緩みがちになる頬がどうしても先走りさせてしまうのよ」

「そうか、嬉しさが先回りさせたか……。ならしょうがないな……」

 伊藤のこれほどの笑顔を見たことがあるだろうか。よほど工藤の帰還が嬉しかったようだ。工藤の先走りをなじっているようで、心の底から工藤がファミコン話に乗ってくるのが嬉しくてたまらないのだ。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ