終りに終りの
「そうか。終るんだっけ」
「そして世界の終りを加速化させてるのは明らかに私たち」
「終り、末期、ファミコン末期に話を戻そうか」
「やっぱり戻るのね。ファミコンに」
「避けては通れないんだよ」
「PC原人を諦めたときにハドソンはFC原人を出したのに」
「末期のどさくさに紛れてね」
「うしおととらやろくでなしブルースなどの人気漫画のゲームかもファミコンで行われたことはあまり知られていないのね」
「スーパーファミコンでもきついグラフィックだったぜ、ろくでなしは。それがファミコンなんだよ。ろくでなし好きの世代はとっくにSFCに移行しているだろう頃にだよ」
「ロックマンシリーズがこれでもかと出たのもこの頃ね。ファミコンに残り何をしようとたくらんでたんでしょうね」
「ロックマン第一弾は1987年発売。二作目は88年発売。順調に作を重ねると見せかけて、3は2年後の90年の発売。これからSFCに移行するまで、4、5、6が一年おきに発売されている。さすがに93年でファミコンはきつくなったのか6作目で有終の美を飾っている」
「ロックボード ザッツ☆パラダイスなるボードゲームを5と6の間に発売してるわ。なにか浮かれているわ。ファミコンはロックマンに任せろって感じで」
「くにおくんもだよ、勝手に末期の看板をはってたのは。熱血硬派くにおくんやダウンタウン熱血物語で不良は喧嘩に飽き足らず、熱血高校ドッジボール部じゃ高校では極めて異例のドッジボール部を創設すれば、熱血高校ドッジボール部サッカー編じゃサッカーをも配下に置く」
「ドッジボールにあるとはドッジ弾平だか2で知ったけど、高校にドッジボールがあるとは、さらにはサッカーにまで進出する余裕と才能があるとは日本人にはそしらぬ事よ」
「くにおくんの時代劇だよ全員集合!だぜ。くにおくんと時代劇を結びつけようとするには何か無理を感じる。世間はくにおんのスターシステムを認めたかというとね」
「ダウンタウン熱血行進曲 それゆけ大運動会でいいのよ。ブームにつけこんで熱血!すとりーとバスケットでいいのよ。くにおくんの熱血サッカーリーグでよろしいのよ。いけいけ熱血ホッケー部までいくとどうかと思うけどね。熱血高校はどうしてドッジボールだのホッケー部だのマイナー志向なの? 高校も経営が重要なら力を入れるスポーツが違うと思うのよ。サッカー部なんてドッジボール部の片手間よ。びっくり熱血新記録みたくバロセロナ五輪に勝手な便乗してればいいのよ。五輪近いから適当にくにおくんの新作出すかでいいのよ。熱血格闘伝説で結局喧嘩に戻るのかよでいいのよ」
「他にも囲碁指南94だの大工の源さんの二作目である赤毛のダンの逆襲だのパチスロアドベンチャーの二作目だの定番がこれでもかと出された。幼児向けにターゲット絞ったのと同じマーケティングだよ。つまりSFCに移行するほどのヘビーユーザーではないがファミコンを保有してるライトな大人向けだね」
「ちょっと待ってよ。ミスリードよ。大工の源さんを囲碁ゲームとパチンコゲームで挟みこむのは。まるでそれじゃあ大工の源さんがパチンコゲームみたいじゃないの?」
「?」
伊藤はとぼけるでなく純粋に不思議な顔をした。
「そうか、伊藤は知らないんだ。大工の源さんは今の時代のパチンコのキャラとして世の中では定着していることを」
「僕はファミコンのことしか知らないといっても過言じゃない。ましてや高校生の僕はパチンコのことなんてなんにも知らない」
「それなのにパチンコグランプリやパチンコ大作戦にその2まで知ってる。ませた高校生ならパチンコくらい知っててもおかしくないけどファミコンのパチンコソフトなんて知らわないわよ」
「なんでだろうな。平成も20年を過ぎたこの時代の高校生が昭和のゲーム媒体に詳しいんなんて」
「私も驚いたわよ。まさか私みたいにファミコンに詳しい高校生がいるとはね」
「そして21世紀も10年たったこの時代にファミコン好きの奇妙な高校生同士は出会うことになる」
「運命なのかしらね」
「運命かもよ」
「そして伊藤と僕が出会うことで世界の破滅が加速する」
「それも運命よ」
工藤はどこか悲しそうな顔をしている。
「なんだか悲しくなってきたわ。世界が終るのね。伊藤と私の世界が」
「悲しいときは僕と君が出会ったと気を思い浮かべればいい」
「二人が出会ったのは……。クラス替えの春だけど、僕らには接点がなく、接点がなければ二人の性癖が分かり合うことはなかった」