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アメリカのおごり

 伊藤と工藤の目の前には、陰鬱なほど長い道なりがつづいていた。

 伊藤と工藤は落ちモノパズルを揃えるために小学校を出たはずだった。

 あれからどれだけの時が経ったのだろうか?

 いたずらに過ぎゆくムダな時間は高校生である二人にとって本来貴重な時間経過のはずであるが、残された時間をさらに自ら削る取る二人にとってムダな時間は、ムダなままに過ぎて有益なる生産性はもたらさないかもしれないに。 

「ねえ伊藤」

 工藤は自ら足を止めてまた無生産な話の輪を広げようとする。

 二人は、いつ目的地であるゲームショップにたどり着くのだろうか?

「なんだい工藤」

「なんの目的があって出したのかこちら側に伝わってこない作品ってあるでしょ?」

「目的のないものなんてこの世にあるものか。どんな行動にも僕は意味を見出すことができる。例えば、トムソーヤの冒険を題材にしたゲームが2本発売された事実がある。トムソーヤの冒険とスクウェアのトムソーヤだ。一見なんの関連性も見られないトムソーヤの知名度に寄りかかっただけに思われるかもしれないが、この二本はともに1989年に発売されている。トムソーヤをモチーフにしたゲームが出るのは稀。それが同年に二本も発売されるなんて、切磋琢磨とか便乗とか極めて結びづきの強い関連性あるキーワードが飛び出す。後出しのスクウェアは便乗したかもしれないし、同時期に開発中で発売が出遅れたのかもしれない。かぶった理由はどうでもいいし、どっちが優れているなんて僕は興味がない。ただ興味深いんだ。年に二本もトムソーヤを題材にしたゲームが世に出たって事実がね。ほら物事には意味があるだろう? 意味がなければ僕はあれこれと推測しない」

「何か強引ね」

「強引で何が悪い?」

「それじゃあ伊藤。アメフトゲームをこれでもかと出し続ける意味はどこにあるの?」

「あるじゃないか。アメフト絶対の北米市場を意識できるし、複雑でバラエティに飛んだ競技性はいかにもテレビゲームにマッチしている。それにアメフトの面白さを日本人に知らしめるという伝道師的な役割もあるだろうな。スポーツ大国アメリカにおいてもアメフトはキングオブスポーツだ」

「それでアメフトはいつ日本に定着するの? アイスホッケーのゲームならまだ分かるわ。USA アイスホッケーIN FCってタイトルはどうかと思うけど。アイスホッケーってどっちかっていうとカナダじゃない? それにファミコンってつけるあたりがなんだかせせこましい印象を与えかねないわ」

「10ヤードファイトで、アメフトなる競技はアメリカ発症らしくヤードを好んで使うと日本人は知った。テクモスーパーボウルでアメフト最大の祭典なるものがスーパーボウルであることを知った」

「それだけ? ってテクモスーパーボウルは本家スーパーボウルにあやかったわけでなくテクモボウルの続編でしょ、たんに」

「タッチダウンフィーバー アメリカンフットボールで日本人はアメフトとはアメリカンフットボールの略称であることを知った」

「なにか退化してない? 日本人のアメフトに対する認識が」

「ならタッチダウンでフィーバーする国民性であることを知ったでいいや」

「なにその投げやりな姿勢は。もどかしいわよ、なんだかもう。それでアメフトフィーバーは巻き起こったの? ゲームソフトとしてそこそこ売れるだけじゃ意味はないわ。スポーツを題材にしたソフトだけに、子どもたちがこぞって実際の競技にも熱を出すくらいの波及効果がなきゃね」

「それはおかしい。僕らのことをいっているわけじゃないが、なんの目的もなくただダラダラと時間を過ごすものは、時の過ぎゆくままに・・・に影響されたとでもいうのか?」

「そこで神宮寺三郎ものを例に出す? 新宿中央公園殺人事件から横浜港連続殺人事件に危険な二人前後編と順序立ててタイトルをあげるべきだわ。あなたはハードボイルドものを甘く見る傾向にあるでしょ?」 

「別に軽くみたわけじゃないさ。ただ人の生き死を題材にするのは好かないものでね」

「それじゃあオホーツクに消ゆなんてもってのほかね。なにか堀井雄二の下心が見えるわ。北海道を舞台にすれば取材と称して経費で北海道旅行ができるって魂胆が見え隠れするのよ」

「堀井雄二の友人さくまあきらもそうさ。何故かゲームは北海道でしか作らないこだわりがあるんだよ」

「え? さくまあきらも? SUPER桃太郎電鉄も、いかにもおざなりな桃太郎伝説外伝も、昔話シリーズ第二弾は忍者でいいだろの安易さの忍者らホイも?! 北海道で作ったのというの?」

「ああ、おかげ制作費は意味なくかさんだらしいよ。まあバブルのあだ花だろうね」   

「意味がないわ。意味がない。北海道を題材にするわけでもないのに北海道でゲームを作るって意味がない」

「どうしたの、工藤。さっきまでの勢いが消え失せたようだけどさ。今の君はパラソルヘンべえをゲーム化しといておとぎの国は大騒ぎとサブタイトル打って逃げるようなものだよ。パラソルヘンべえの舞台はけしておとぎの国がイメージする幼児性や無邪気さとはまるで逆の気の触れた人たちの国なんだから。第一へんべえからしてどこかおかしな顔をしている。それをゲームかしてどうしておとぎの国と銘打つ?」

 伊藤に丸め込まれても工藤は悔しそうな顔をするどころか、奇妙なことに爽やかそうな笑顔を浮かべた。

「意味のないものもあるのね」

「にっこりと微笑む君の顔を見て僕にはある思いが去来した」

「なに? わたしのはちきれんばかりの笑顔に伊藤はどういった印象を抱いたって? ゴリラーマンとか言い出したら、ただじゃおかないわよ」

「けろっぴとけろりーぬのスプラッシュボムって感じかな」

「それってどういうこと? カエル顔ってこと?」

「う~んどうかな。もしかしてスプラッシュな顔つきと言いたいかもしれないし、ボム顔って言いたいかもしれない。ご想像にお任せするよ」

「怒Ⅱといくべきなのか、それともさらに怒Ⅲまでいくべきなのか。ギアチェンジの判断がつかないわね」

「怒りの顔は見たくない。君は笑うべきさ」

「そうか、笑顔でいればいいことあるわね。将来私に子どもができても笑いのないお母さんじゃ子どもがかわいそうだもの」

「君に子どもができたならば、その時こそぴょこたんの大迷路でもやらせてみればいい」

「いいかもしれないわね。私たち世代が幼児向けと敬遠してたゲームを与えるのも」

「けろけろけろっぴの大冒険でもキョロちゃんランドでもハローキティのおはなばたけにもちいさなおばけアッチコッチソッチにもちゃんと意味があるんだよ。ファミコン末期に雨後のタケノコのように出た幼児性ゲームが意味を見出す時が」

「私は見くびってたわ。ファミコン末期にファミコン普及台数に狙いを定めて幼児向けゲームでも出しときゃファミコン持ちの親が買うって戦略性を。なんだ私のためじゃないの」

「君のためか、僕のためか。なかよしといっしょは幼児向けか否か」

「すべては謎のままね……。だって終るんだもん。世の中は」

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